「表現の不自由展かんさい」
会場の使用許可取り消し
府立労働センター 〝抗議〟を理由に
今月、大阪市内で開催予定の企画展「表現の不自由展かんさい」の会場となる施設の管理者が、使用許可の取り消しを主催者に通知。吉村洋文知事も賛意を表明しました。主催者は抗議するとともに、取り消し撤回を求めています。近く提訴する方針です。
主催者 撤回を要求・法的措置へ
不自由展の作品を展示予定
「表現の不自由展かんさい」は、有志による実行委員会が7月16日から18日まで、大阪市中央区の府立労働センター(エル・おおさか)で開催し、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」(2019年、愛知県)で、3日限りで中止に追い込まれた「表現の不自由展・その後」の作品の一部を展示する予定でした。日本軍「慰安婦」を題材にした「平和の少女像」や昭和天皇の写真を使った作品などです。
大阪労働協会が代表を務める施設の指定管理者は、広報が開始された後、施設に抗議が寄せられて、街宣車による大音量での抗議活動が行われたとした上で、動きの激化が予想され、安全確保が極めて困難であるなどを理由に、6月25日付けで施設の使用許可を取り消してきました。
知事が許可取り消しを支持
報道によると、吉村洋文知事は26日、記者団に、「(展示内容について)判断するつもりはない」とした上で、「施設の管理運営を考えると、許可を取り消すべき」と述べ、取り消し前に施設側に賛意を示しました。28日の会見では、「(展示内容を)快いものと思っていない人も事実として存在する」とし、再び取り消しを支持しました。
取り消し処分通知の後、主催者が施設側に確認したところ、抗議内容は、企画が「反日」であるとの主張や、街宣車が大音量で施設周辺を合わせて午前と午後に2周ずつ回ったというもので、職員は警察にも連絡していませんでした。
自民党府議らが「断固戦う」
自民党の西村日加留府議(堺市堺区選出)は22日、自身のフェイスブックに、「表現の自由という憲法上の権利を盾に我が国を貶めるような活動に対して、私は断固戦ってまいります」と書き、25日には、「指定管理者が使用取り消し通知を行いました。と今担当部局から連絡が入りました!!」と投稿しました。
西野弘一府議(無所属・改革保守)もツイッターに、「大阪府に強く抗議しています。#表現の不自由」と書いた後、使用許可取り消し報道を紹介し、「なんとかなりました」と投稿しました。
表現・集会の自由脅かすもの
吉村知事が会場使用取り消しに賛成したことについて実行委員会のメンバーは、次のように話しています。
「知事の役割は、利用者や周辺住民の安全を図るとともに、公共施設での集会や言論発表の場を保障することのはず。暴力的な街宣活動には目をつむり、攻撃されている側の会場使用を取り消すことは、攻撃する側に与し、憲法に保障されている表現や集会の自由を知事自らが脅かすことに加担していることになる。私たちは、発表する場を奪われた芸術を発表する場、見る場を作りたいだけ。エル・おおさかで『表現の不自由展かんさい』を実現するために努力していきたい」
吉村知事は大阪市長時代、「慰安婦像」を建てたサンフランシスコ市に抗議し、60年以上にわたる姉妹都市を解消。2019年、「表現の不自由展・その後」展については、少女像などの展示を「反日プロパガンダ」と決めつけ、公共イベントでの展示を問題視。「あいちトリエンナーレ」実行委員長を務めた大村秀章県知事は辞職に相当するとまで述べました。
多様な表現の機会の保障を
「表現の自由」や多様な表現の機会を保障し、誰もがそれに触れられるような環境を整備することは、国や自治体の責務です。今回の施設側の使用許可取り消しと、吉村知事による賛意はこれに逆行するもので、自治体の責務の放棄であり、「表現の自由」を保障した憲法に違反するものに他なりません。
(大阪民主新報、2021年7月4日号より)