政務活動費活用し、政策提案、市民要求の実現に努力
日本共産党東大阪市議団 塩田清人団長に聞く
地方議員の政務活動費は、「地方議会の審議能力を強化していく」「地方議会の政策力量を上げる」という目的で、各自治体の条例に基づき支給されています。住民の世論も受けて、使途の明示や公開などが進められている中、政務活動費の活用で市民要求実現の努力を重ねている日本共産党東大阪市議団の塩田清人団長に聞きました。
取り組むテーマ毎年度に決めて
――議員団として政務活動費を活用し、市政の課題を明らかにし、政策提案の活動に力を入れておられますね。
塩田 政務活動費は目的に沿って活用し、使途は1円から公開することは当然です。その上で議員団は毎年、今年度は何の課題に取り組むかを議論し、テーマを決めて活動してきました。
――具体的な取り組みを紹介してください。
塩田 熱海市で土石流の大変な被害が出ていますが、議員団は近年の土砂災害や豪雨災害などをきっかけに、18年度のテーマに「防災対策」を選びました。
大学や防災専門機関の研究員の皆さんと毎月の研究会を8カ月続け、議員団も分担し、東大阪市の災害の歴史や防災対策について調査・研究しました。その成果を「災害から東大阪市民を守るために、東大阪市地域防災計画への提案」にまとめ、概要版も作って市民にも配布しました。
市の防災対策の改善を具体的に
「提案」では①台風の大型化や集中豪雨など災害の様相が変わる中で、市の防災対策の改善が必要②これまでの1日雨量300~350㍉の想定では不十分で、1千年に一度の規模で1日雨量650~1千㍉への引き上げが必要③生駒断層地震では、現状の避難所体制では約9千人の行き場がなくなる④恒常的な自主防災組織の育成や、民間の避難所への避難分散など、民間や住民の力との連携強化⑤「東大阪市地域防災計画」の改善に向けた視点、職員体制などを提案しています。
議会で「提案」を繰り返し取り上げたのを受けて市も研究し、ことし5月、私たちの提案を入れたハザードマップが作成され全戸配布されました。
防災・減災は政府や大阪府の責任も大きく、市の努力だけで解決するわけではありません。東大阪の場合、ハザードマップで一目瞭然ですが、指定避難所が災害警戒区域にもあるなどの問題もあります。引き続き避難所の分散化・民間協力のあり方、開発規制のあり方なども提案していきます。
学校施設改修に結び付いた活動
――学校の施設改修を巡る活動も注目されました。
塩田 東大阪市は20年度から4年間で毎年約5億円、総額約20億円をかけて集中的に学校施設の改修を進めています。
老朽校舎問題では「校舎の雨漏りで授業が中断した」「トイレが汚い、怖い」などの声が上がり、小学校の体育館でサッカーをしていた児童がスライディングした時、剥離した床板でふくらはぎに10針も縫うけがを負う事故もありました。
小中高全施設を集中的に調査し
議員団は、個別には学校施設の改善を求めてきましたが、市の教育施設改善の予算そのものが隣接市と比べても大幅に少なく、立ち後れが深刻でした。そこで、学校の改善を抜本的に進めるために、現状を全市的に明らかにしようと政務活動費活用のテーマにしました。チェック項目などを準備し、18年7月と8月の2カ月をかけて、市内の小学校51、中学校25、高校1の計77校の全施設を、全議員で集中的に調査しました。
その結果を写真付きの詳細な要望資料にまとめたところ、市教委も「学校の様子がよく分かりました」と驚くほどでした。議会の質問でも大きなインパクトを与え、18年11月の定例議会で野田義和市長は「今いろいろご指摘をいただきましたが、可能な限り財源を生み出して、教育施設の改善、また老朽化、危険箇所の改修は当然」と答弁。20年度からの学校改修計画につながりました。
子どもの貧困で条例化を提案し
――17年度には「子どもの貧困」もテーマに取り上げましたね。
塩田 はい。専門の学者を招いて開いた学習会には市民も参加していただき、議論した成果を報告集にまとめました。議会では、自治体の対策が大切なことを明らかにし、学習支援や子ども食堂への補助などを系統的に行うための条例化などを提案しました。
実はこの時点では、市には「子どもの貧困」を担当する部署も決まっていませんでした。現在は「子どもすこやか部」が窓口となり、条例化も「検討、研究していく」という答弁も得ています。
市として民間の関係団体などを含めたネットワークを強化することも提案しています。
――今後の取り組みは。
塩田 20年度は、コロナ対応が大きな課題となり、議員団も取り組みを強めています。保健師の時間外労働が第3波で月142時間、第4波で190時間となるなど深刻な実態の改善を求め、昨年10月に7人、ことし4月には10人の保健師が正規で採用されました。
ヤングケアラー 気候変動問題も
政務活動費はもともと、「地方分権で地方自治体の責任が拡大する中で、地方議会の審議能力を強化していくことが不可欠」として制度が作られたものです。今後は、家族の世話や介護などに追われる「ヤングケアラー」と呼ばれる子どもたち、気候変動などの問題で、自治体として取り組むべき政策を研究・提案していきたいと思います。
(大阪民主新報、2021年7月25日号より)