全国最悪のコロナ感染地域
際立つ大阪市の無策ぶり
コロナ禍での大幅黒字と基金増
大阪市は7月16日、2020年度一般会計決算見込(速報版)として、130億円の単年度黒字、32年連続の黒字決算とともに、財政調整基金の残高が前年よりも48億円増となる1664億円と発表しました。
コロナ禍の2020年度は、全国の自治体がコロナ対策での支出増によって財政悪化が進み、財政調整基金(※)を激減させています。東京都では19年度末に9345億円もあった基金残高を約8割も減少させており、大阪市の黒字決算と基金残高の増加は異例です。
その原因は、全国最悪のコロナ感染状況にもかかわらず、大阪市独自のコロナ対策をほとんど実施しなかったことにあります。
「新型コロナウイルス感染症対策における財政規模」(決算資料・大阪市HPより)によると20年度の大阪市のコロナ対策費用を負担した国・大阪府・大阪市の割合はグラフにあるように、ほとんどが国からの支出金であり、大阪市の負担はわずか3・8%にすぎません。
また、142億円の内訳をみると、「オンライン授業」の押し付けで小中学校を混乱させる原因となった「学校教育ICT活用事業」に20億円、インテックス大阪の事業支援に15億円、市民利用施設への支援で58億円などが並び、「PCR検査体制の充実」にはわずか3億円しか使っていません。
市解体と大型開発を優先させた
8月10日現在、大阪府でのコロナ関連の死者数は2733人で全国最多です。その中でも大阪市は1164人、人口10万人当たりの死者数で全国最悪です(大阪市42・3人、大阪府30・9人、全国12・2人)。
また大阪では、第4波の感染拡大時の深刻な「医療崩壊」により、「未治療」のまま自宅で亡くなる人が出るなど異常な事態に直面しました。
ところが、松井市長はことあるごとに「コロナ対策は大阪府知事の権限であり、大阪市は下支え」だと発言し、政令市としての権限と財源を使った独自施策の実施を自ら放棄してきました。今年1月に出された2回目の緊急事態宣言を、吉村知事が「前倒し解除」した判断についても、間違っていなかったと擁護してきました。
一方、大阪市の財源を「府市一体化」で大型開発推進に全面的に投入する仕組みづくりを着々と進め、カジノ・大型開発推進に大阪市の財源を本格投入する動きを強めています。
維新市政がコロナ対策への財政支出を渋る最大の原因が、大型開発の財源づくりにあることは明らかです。
夢洲・万博・カジノに税金投入
維新による最大のプロジェクトは2025年万博の夢洲開催ですが、すでに関連事業での費用の上振れが噴出しはじめています。万博会場建設費が600億円、淀川左岸線二期工事が750億円、夢洲への地下鉄延伸工事の追加費用の40億円が明らかになっています。また7月に入り、夢洲駅周辺の整備事業への事業者「応募」がゼロだったため、松井市長は「公共事業」による整備の可能性に言及しています。
事業計画が決定されている大型事業と府・市の費用負担には、①淀川左岸線延伸部(総事業費4千億円)で府・市各300億円、②なにわ筋線(総事業費3300億円)で府・市各590億円があります。
さらに、「府市一体化条例・規約」に盛り込まれている大阪城東部地区や新大阪駅前周辺の再開発事業など今後どれだけの税金が投入されるか予想できません。
大阪市の財政調整基金の残高は、コロナ前の2019年度末で、20ある政令市の中で2ケタ違いのダントツの多さでした。市民1人当たりの基金残高では20市平均が13万9千円でしたが、大阪市は58万8千円と4倍でした。コロナ禍の中で大阪市だけがこれをさらに積み増ししているのです。
PCR検査の抜本的充実や暮らし・営業への応援を行うための財源は十分あります。大型開発への無駄を排し、命と暮らしを守る市政への転換へ力を合わせるときです。(N)
※財政調整基金 不況による大幅な税収の落ち込みで財源が不足する場合や、災害発生による予期しない経費の支出などに備えて積み立てる自治体の「貯金」。 |
(大阪民主新報、2021年8月22日号より)