おおさかナウ

2021年08月21日

「将来にわたって安心・安全の
水を守る」道筋を市民参加で
日本共産党府委員会自治体部・議員相談員 丸野賢治

 日本共産党大阪府委員会自治体部・議員相談員の丸野賢治さんから寄せられた水道事業問題での一文を紹介します。

市水道廃止、広域化へ「府域一水道」の動き加速

丸野賢治さん

 各自治体で運営している水道事業を大阪広域水道企業団に統合する動きが急速に進んでいます。同企業団は家庭まで水道水を届ける府域一水道を目指しており、これまでは町村など小規模水道の参加にとどまっていましたが、今回の統合の動きは、大規模水道を含む10自治体が企業団への統合を検討する事態となっています。
 広域水道企業団は、2010年、大阪市を除く大阪府下42の自治体が設立し、府下水道に水道水を給水しており、今後家庭の水道まで扱う府域一水道を進めています。
 今回の動きは、2020年2月の府企業団の統合を目指すアンケート(「水道事業統廃合促進基金の活用による最適配置案等の策定にかかるアンケートについて」)で、府下19団体が参加意向を示し、これまでに10団体が参画。企業団から統合による財政効果やスケジュールを明らかにした「水道統合促進基金の活用による最適配置等の策定の概要について(中間報告)」が示されました。
 「中間報告」は「統合を視野に入れ」たもので、この後10自治体(東大阪、八尾、富田林、河内長野、大東、岸和田、和泉、羽曳野、高石、柏原の各市)が、2022年1月に「覚え書き」を締結。23年3月議会で統廃合のための条例を議会決定するスケジュールです。
 水道事業は「命」に関わる重要なライフラインであり、市の水道事業の廃止、広域化には、検討すべき多くの問題があり、何より市民への説明、合意が必要です。
 しかし現状は、市民に説明されないばかりでなく、議会への報告も極めて不十分なまま、首長の権限でどんどん進められ、来年1月の「覚え書き」締結に進もうとしています。また、議会に議案として提案されるのは、参加を決める最終決定の23年の議会だけとされており、自治体当局には、市民の将来に関わる重要な問題にふさわしい対応をすることが求められます。
 水道事業の広域化では、水道料金値上げや企業団の事業内容や予算決定は、すべて企業団議会で決定され、市民の声はほとんど届かなくなります。企業団議会は、定数がわずか33人。日本共産党は、すべての市町村から最低でも1名の議員が出せるように定数改善を求めていますが、それすら実現していません。
 さらに、自治体の防災計画では水道の参加が不可欠ですが、市水道がなくなって災害時の対応が十分にできるのか、自己水源の維持・確保はどうなるのか、山間地など地域のきめ細かな水道への要望に対応できるのか、など検討すべき大切な問題があります。このほか、技術職員の保持や地元水道関係業者の問題など解明すべき課題があります。
 企業団は人口減少・水需要の減少、施設の整備・更新など「広域化のメリット」などを打ち出していますが、これらは自治体ごとに事情が異なります。設備の更新が進んでいる自治体もあれば大きく遅れている自治体も、経営状態の違いもあります。各自治体でも責任ある検討と、市民とともに進めることが必要です。

大阪市水道の「民営化」は廃案に

安心・安全の水はみんなの願いです

 大阪広域水道企業団はもともと、維新府政になって民営化の動きが強まる中で、府下の自治体首長が府営水道を受け継いだもので、同企業団は設立当時から「民営化を目指すものではない」と表明しています。
 しかし、水道事業を巡っては、政府は2018年に水道法を改悪して、コンセッション方式(自治体が所有権、運営は民間)による民営化を財政の誘導策をとりながら強力に推し進し、全国的に同方式による民営化が大きな問題になっています。
 大阪でも、橋下市長時代の大阪市で2014年に「水道民営化」が提案され、このときは翌15年の3月議会で廃案になり大阪市水道が守られました。政府は、広域化、民営化など水道事業の「適正化」について、都道府県に指導させて進めるとしており、大阪府、大阪市、企業団のトップを維新が占める下で、水道民営化についても警戒が必要です。

(大阪民主新報、2021年8月22日号より)

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