東大阪市の水道事業問題
拙速な企業団への統合は見送るべき
長岡嘉一・日本共産党東大阪市議
東大阪市第3回定例会(9月)で日本共産党の長岡嘉一市議は、東大阪市水道の大阪広域水道企業団(企業団)への経営統合問題についてただしました。長岡市議のレポートを紹介します。
市水道の経営統合問題で私は①議会や市民の議論抜きで水道事業の企業団統合を拙速に進める問題②広域化による重要な問題点、を示して市の見解をただしました。
そもそも東大阪市は、水道事業統合について「水道ビジョン2030」という計画書で「10年をかけて検討する」としていました。ところがこの方針を急変させ、この12月に「統合にかかる覚え書き」を結び、議会で審議する機会もない状態で2023年の3月議会で決定する、と一気に経営統合に向かっています。
市水道を企業団へ統合すれば、市水道がなくなり、市や市民の声が届きにくくなり、市独自のきめ細かい対応ができなくなります。このことはこの間の後期高齢者医療や国保の広域化などを見ても明らかです。
また、自然災害の対応などの危機管理体制が、企業団へ統合してしまうと企業団主導になります。現在、市の危機管理本部には、市の水道管理者が本部員として参加していますが、この体制はどうなっていくのか不透明なままです。
さらに、市が統合のメリットとしている43億円の財政メリットについても、実際は20億円程度しかありません。統合によって失うものと比べて、とてもメリットがあるとはいえません。
質問では、これらを示して見解をただしました。
そもそも市営水道の企業団参加の問題点の大きさは、水道事業統合を進めている組織ですら認めています。
大阪府と府内のすべての水道事業体が参加する「府域一水道に向けた水道のあり方協議会」は、2020年3月に出した「検討報告書」で①人口規模の大きい団体や経営基盤の強い団体では、早期の統合の必要性を見出しにくい。②決定権限等についての懸念がある、と私が指摘した問題点と同じ懸念を述べています。
また、企業団への経営統合が進めば、コンセッション方式の下で水道の運営そのものが民営化されかねない危険をはらんでいます。質問では、企業団がこうした民営化へ進もうとしたときに、東大阪市としてストップをかけることもできなくなる危険性を指摘しました。
市当局は私の質問、指摘に対し「経営統合によって市民に不利益が生じることはあってはならない」と言うばかりで、まともな説明はありませんでした。
議会での審議もないまま行政の意向だけでこの企業団への経営統合を進めていくということは、市としての水道事業の自治を放棄するものです。
東大阪として、安全・安心・安定の水道を供給していくという市の責任を果たすためにも、今示されているような拙速なスケジュールではなく、しっかりとした分析、検討の上に今後の水道事業の在り方を追求していくことが必要です。
我が党は市民の命である水道事業を守るためにも、あまりにも拙速な企業団への統合については、見送るべきだと考えます。
コロナ禍での値上げ困難と答弁
質問では、市が計画している22年、27年の水道料金値上げについても取り上げました。この中で、市の値上げ計画は、災害に備えた人員確保などのためでなく、「基金を貯め込む」ことを目的としたものであることを明らかにして「少なくともコロナ禍で市民生活が苦しいときの値上げはあってはならない」とただしました。
質問に対し当局は、水道料金の値上げは必要としながらも「しかしながら現在も継続するコロナ禍での実施は困難。実施時期を見直す」と答弁しました。
水道事業の広域化とは
大阪市を除く府下の自治体でつくる大阪広域水道企業団(企業団)は、淀川から取水して浄水し、大阪市を除く府下の自治体の水道に送水しています。
家庭へ水を届ける配水は、各自治体が行っています。
水道事業の統合=広域化は、水道を家庭に届ける配水事業まで企業団に統合するもので、これまでは町村など小規模水道の参加にとどまっていましたが、現在は大規模水道を含む10自治体が、企業団への統合を検討する事態となっています。
(大阪民主新報、2021年10月17日号より)