新型コロナ感染急拡大
すでに大阪は医療崩壊
政治の責任で支援を
コロナ対応の医師が訴え
コロナ対応の医師が訴え 感染力の強い変異株オミクロン株の広がりで、新型コロナウイルス感染が急拡大しています。「第6波」を迎える中、大阪では今年1月8日から2月7日までの1カ月の死者数が127人に上りました。医療が逼迫する中、コロナ対応をしている医療機関の医師に現場の状況を聞きました。
2倍の人手が必要なコロナ病床
感染者増えればその分重症者も
「病気になった人が、救急車を呼んでも病院に運んでもらえないこと自体が、すでに医療崩壊。医療そのものの需給バランスで言えば、明らかに崩れている。オミクロン株は重症化しにくいと言われるが、感染者が増えれば、その分重症者も増える」と大阪民医連会長・大島民旗医師(西淀病院副院長)は指摘します。
耳原鳳クリニック(堺市西区)では先日、肺の病気を持つ患者が風邪の症状を訴え、午前中に発熱外来を受診。検査するとコロナ陽性が判明しました。CTを取ると肺に影が見つかり、酸素投与が必要な状態のため中等症Ⅱと診断。保健所に入院が必要だと伝えましたが、受け入れ病院に転送できたのは夕方5時でした。
81件も断られて25キロの距離を
耳原鳳クリニックと同じ医療法人の耳原総合病院には2月5日朝、25㌔離れている池田市から患者が救急搬送されてきました。消防隊員が大阪、兵庫、京都の病院に電話をかけましたが81件断られ、市内からだけの救急搬送を受けている耳原総合病院もいったん断ったものの、2回目の依頼で受け入れたといいます。
耳原総合病院では、2月初旬時点で16床のコロナ病床を持っていましたが、満杯となり、25床に増やしたと言います。
同病院の元救急医で現在、耳原鳳クリニック所長の田端志郎医師は、「コロナ病床は感染防止などで、他の病床の2倍の人手が必要。心不全や呼吸不全など基礎疾患を持つ人は、冬になると悪くなって、救急搬送されて入院する人が多い。普通の病床をコロナ病床に換えれば、当然他にもしわよせが来る」と話します。
〝いつまで続くのか〟とみな疲弊
西淀病院の発熱外来では、多い時は1日60件以上診ていましたが、受診希望者が多くなる中、週末に予約しても受診できるのは翌週水曜日になることもあると言います。
検査キットが不足し、周囲の医療機関が発熱外来を閉め始める中、独自の検査室を持ち、抗原定量検査機械を導入している耳原鳳クリニックには、インターネットで調べて遠方から検査を受けに来る人もいます。
全職員が交代してやってきたが
「コロナのワクチン接種や他の検査、診療もある中でも、行き場がない発熱患者さんのために何とかしなければと全職員が交代しながらやってきました。感染防護の徹底、昼ご飯を食べる時間もない、会話は控えなければならない、こんなことがいつまで続くのかというストレスでみんな疲弊している」と田端医師は実態を話します。
検査補助金の引き下げに怒りが
さらに昨年末からコロナ検査の診療報酬が引き下げられたことに対し、「人手がない中で、手間もかかり、感染の危険にさらされながら努力してやっていることへの報酬を引き下げるなんて怒り心頭」だと言います。
医療費削減政策やめ医療充実を
厚生労働省は医療機関に丸投げ
感染急拡大を受け厚生労働省は、感染者の同居家族に発熱などの症状が出た場合、検査せずに医師が「みなし陽性者」と診断できると各都道府県に通知しました。
健康観察の責任が医療機関にあるとされていることについて、田端医師は「医療機関への丸投げだ」と批判。コロナ患者に投与できる薬を「みなし陽性者」には処方できない問題点も指摘します。
大島、田端医師が口をそろえて問題を指摘するのが、急性期病床を減らした病院に補助金が出る地域医療構想です。
病床削減に補助金拠出は撤回を
「感染爆発すると病床が一気に足りなくなるのが現実。それをしっかり受け止めて、今後の感染症対策を考えるなら、地域医療構想は白紙にして再設計する必要がある」と大島医師。田端医師も、堺市内ですでに病床を削減した病院があることを紹介し、「政府、厚労省が医療費削減政策を取り続けてきた問題を象徴するのが地域医療構想。重症者や死者を1人でも2人でも減らすという医療の役割を考えたら、そんな発想は生まれないはずだ」と厳しく指摘します。
(大阪民主新報、2022年2月13日号より)