おおさかナウ

2022年03月12日

カジノ計画 府・大阪市が税金で新聞折り込み
誘致ありきで疑問・不安に答えず
カジノ誘致に反対する大阪連絡会 中山直和事務局次長に聞く

 大阪府と大阪市は、カジノを核とする統合型リゾート(IR)を大阪湾の埋め立て地、夢洲(ゆめしま)に誘致するための「区域整備計画」の同意を求める議案を府市両議会に提案する一方、同計画を府民・市民に知らせるチラシを1日付の新聞各紙に折り込み、カジノ誘致のキャンペーンを行っています。カジノに反対する大阪連絡会の中山直和事務局長に、チラシや誘致計画の問題点、連絡会の取り組みについて聞きました。

重大問題を隠し計画を一方的に

中山直和さん

――チラシの表題は「大阪IR~大阪・関西の成長に向けて~」で、吉村知事の顔写真も添えられています。
中山 全体として府市の誘致計画を「いいことづくめ」で、決定事項として一方的に知らせるもので、府民・市民の疑問や不安に答えていません。
 「成長型IR」をうたいますが、展示場面積は当初10万平方㍍以上でした。計画ではコロナ禍で需要が見通せないことなどから2万平方㍍に縮小。あとは順次拡張することを「成長型」とごまかしているのです。
 際立つのは「カジノ隠し」です。カジノ区域はIR施設の総床面積の「3%以内」と過少に見せかけますが、実は約6万5千平方㍍という規模です。大きなデパートや大阪国際会議場が丸ごとカジノになるのと同じで、24時間365日営業でギャンブル依存症を量産するのです。

依存症リスクの説明は一切なし

IR推進局が新聞各紙に折り込んだビラ

――依存症など「懸念事項への対策」に触れていますが。
中山 カジノが生み出す依存症のリスクについて一切説明がなく、万全の対策を立てているかのような、きれいごとで終わっています。カジノを誘致しないのが最大の依存症対策です。「入場回数の制限」といっても、中身は7日間で3回入場でき、最大72時間もギャンブルができるのです。「若者向けの予防啓発の実施」も挙げますが、IR推進局は高校生向けに発行したリーフで、ギャンブルは「娯楽」だと記述して批判を浴びたではありませんか。
 「治安対策」では夢洲に警察官を増員(350人)しますが、保健所の職員を減らしておいて、警察官は増員するというのです。
――「経済波及効果」は年間1兆1400億円と説明しています。
中山 私たちは、カジノ誘致推進派がマイナスの効果を無視している問題を一貫して批判してきましたが、チラシでも一切触れていません。カジノの年間売り上げは4200億円でIR全体の8割。このお金が消費に回れば経済を前向きに潤すものですが、賭博に消えてしまいます。
 住民説明会などで「経済波及効果の根拠資料を出すべき」との批判が相次ぎ、2月にカジノ事業者による試算を示しましたが、行政として検証せず、カジノ事業者言いなりです。
――IR予定地の土壌改良で790億円もの大阪市負担が大問題になっています。
中山 もともと松井一郎市長は「カジノには一切税金は使わない」と言明してきました。公約違反の公費投入であり、誘致計画の前提条件が崩れているのです。
 万博会場でもある夢洲へのアクセス道路、淀川左岸線2期工事の事業費が756億円増加したのに続き、最近1千億円上振れすると報じられました。夢洲関連のインフラ整備費用は、全体で7千億円に上ります。

負担が際限なく増える可能性も

――米カジノ資本のMGMリゾーツとオリックスなどでつくる「大阪IR株式会社」と府・大阪市が「基本協定」を締結しました。
中山 カジノ事業者との契約は35年間もの長期で、府・大阪市から契約解除を求めた場合、カジノ事業者への損害賠償が義務付けられています。事実上、後戻りできない仕組みです。
 カジノ事業者が、もうけの確保を絶対条件に結んだのが「基本協定」です。そこでは①新型コロナによる観光需要が回復すること②カジノ用地の土壌改良の責任を大阪市が持つこと③国の税法上の扱いなどがカジノ事業者の前提条件より不利にならないことなどを条件に、それがクリアできなければ契約解除が可能としています。
 土壌改良で大阪市が負担する790億円の内訳は土壌汚染対策、液状化対策、地中障害物撤去の3つとされていますが、「基本協定」には「地盤沈下」なども明記されており、際限なく負担が増える恐れがあります。
 会社側は夢洲への地下鉄延伸費用(202億5千万円)を負担するが、支払いは土地の引き渡し時に10%、残りはIR開業(29~32年)後1年以内となっており、開業までに事業から撤退すれば支払わなくても済むというのです。

事実を知らせて誘致を止めよう

カジノ誘致反対署名の提出集会で訴える市民団体の代表ら=2月10日、大阪市役所前

――「基本協定」は、府民・市民に説明されていません。
中山 府と大阪市の「実施方針」(昨年3月)では、「基本協定」の締結は昨年10月、「区域整備計画」策定・公聴会開催は同年10月からことし1月にかけてとしていました。
 ところが「区域整備計画案」の策定、住民説明会・公聴会開催の発表は昨年末。100人定員の住民説明会はわずか11回で、コロナの感染拡大を理由に4回分を中止しました。最終回の予定は2月14日で、翌15日に「基本協定」を締結しています。このまま議決を強行することは、府民・市民にとって、まさに「だまし討ち」と言わざるを得ません。
 連絡会が2月に実施した1千人ネット調査では、誘致計画を府民に知らせず2・3月の府議会・市議会で議決することに対し、56%の人が「このまま議決すべきでない」と回答しています。夢洲関連のインフラ整備費用の上振れへの驚きと怒り、カジノによるギャンブル依存症や犯罪増加などへの不安や懸念も広がり、さまざまな市民団体・個人が「カジノの大阪誘致ノー」の声を上げています。
 連絡会では4日、アピール「カジノよりコロナ対策を!の声を広げに広げ、府議会・大阪市会での議決を止めよう!」を発表しました。パンフレット「カジノはあかん!」や、明るい会・よくする会の機関紙などを活用し、宣伝・対話・署名運動を一気に広げることを呼び掛けています。一人でも多くの府民に事実を知らせ、誘致ストップにつなげましょう。

(大阪民主新報、2022年3月13日号より)

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