おおさかナウ

2022年04月02日

レッド・パージ
大阪弁護士会が政府に人権救済勧告
計り知れぬ被害 名誉回復・国家賠償を
被害者・弁護団・運動団体が共同声明

 大阪のレッドパージ被害者と遺族20人が申し立てていた人権救済について、大阪弁護士会が日本政府に「名誉回復や補償を含めた適切な措置」を行うよう岸田首相に勧告(3月17日付)したことを受けて、「レッドパージ反対大阪連絡センター、レッドパージ被害者申立人と代理人弁護団が18日、大阪市内で記者会見し、3団体の共同声明を発表しました。

会見する3団体の代表ら=3月22日、大阪市内

 勧告書(全23ページ)は内閣総理大臣・岸田文雄首相宛てに送付されました。被害者19人それぞれが共産党員等であったかどうかや活動状況、解雇された経緯などを精査、判断し、「共産党員あるいは同調者であることを理由に勤務先から解雇等の措置を受けた」と認定。こうした人権侵害は国が主導した政策に基づくものだとし、国に対し、申立人らの名誉回復や補償を含めた措置を講ずるよう勧告しました。
 レッドパージ被害者の人権救済申し立てを巡っては2008年10月28日に日弁連が初めて勧告(当時の麻生太郎首相宛て)して以降、鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦、安倍晋三、菅義偉の歴代各首相や自治体、企業などに各地の弁護士会が同様の勧告を出しています。
 3団体の共同声明は、人権救済申し立て以降、長期にわたり被害者のたたかいを支え励ましてくれた支援団体、支援者に謝意を表明。「レッド・パージから70年余、パージ被害者とその家族は、計り知れない被害をこうむり苦しい生活を続けてきました。日本政府は速やかに大阪弁護士会の勧告に従い、パージ被害者への名誉回復、国家賠償を行うことを求めます」としています。

4万人追放した戦後最大の人権侵害 レッド・パージ

 レッド・パージは、日本国憲法施行下の1949年から50年にかけて、連合国軍総司令部(GHQ)の示唆と武力を背景に日本政府と企業、財界が全国で4万人の日本共産党員と支持者、労働組合活動家らを「企業破壊分子」「公務を害する」などとし、強圧的に職場から追放した戦後最大の人権侵害、弾圧事件。敗戦後の日本の民主的再建、国民生活の向上、自主的な経済復興、民主主義の確立などを要求する労働運動、民主的運動などに困難と打撃をもたらしました。

大阪弁護士会の勧告書(要旨)

 申立人らは共産党員あるいは同調者であることを理由に勤務先から解雇・退職勧告等の措置を受けた。このような人権侵害は国が主導したものであり、国に対し可及的速やかに名誉回復や補償を含めた措置を講ずるよう勧告する。
 特定の思想や主義を信奉し、特定の政党を支持する思想・良心の自由、結社の自由及び平等原則は、個人の尊厳に直結するものとして保障され、当然に有するとされる基本的人権である。
 占領下におけるGHQは、言論・宗教及び思想の自由並びに基本的人権の尊重が確立されることを求めたポツダム宣言や降伏文書等に基づき、日本統治の権限を与えられたものである以上、その範囲を逸脱した行動は許されず、前憲法的・自然権である基本的人権を脅かすような指示・命令は無効である。
 日本政府や企業がレッド・パージを積極的に推し進めてきたことも事実で、3万人もの人たちが犠牲となり職を失い名誉を棄損された広範な被害の重大性、人権侵害の深刻さに照らせば、日本政府や企業の責任は重い。
 名誉回復や補償措置を受けず無念の思いのまま亡くなった方々も少なからず存在している。レッド・パージは70年以上前に起きたことであるが、現在も職場における思想差別等が完全に克服されたわけではなく、形を変え類似の被害は繰り返されている。政府や企業等の強大な権力組織が、人権侵害を推進し助長するような行為が繰り返されないようにするためにも、過去の人権侵害事実に対する責任を認め、救済していくことは極めて重大である。

(大阪民主新報、2022年4月3日号より)

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