おおさかナウ

2022年05月14日

絵本から平和、経済、カジノまで対談
参院議員・大門みきしさん×絵本作家・長谷川義史さん
「『ようちえんいやや』は僕の話」大門
「わろてもろて平和になったら」長谷川

 大の読書家で、十数年来、数多くの絵本も収集してきた日本共産党の大門みきし参院議員(比例候補)が、絵本作家の長谷川義史さんと対談しました。話題は絵本の話から始まり、平和、経済、カジノの問題まで広がって…。

長谷川義史さん(左)の絵を真ん中に、互いの著書を手にする長谷川さんと大門みきしさん=4月30日、大阪市北区内

「『ようちえんいやや』は僕の話」大門
「わろてもろて平和になったら」長谷川

絵本ってすごいなあと

大門 僕が絵本に興味を持つようになったのは20年くらい前、京都の本屋さんをぶらぶらしていて、絵本のコーナーでぱっと目についたのが「エリカ 奇跡のいのち」でした。きれいな絵だなあと思って見ていたらくぎ付けになって。第2次大戦中のドイツで奇跡的に生き延びた女性のお話なんですが、まるで2時間の映画を観たような思いになり、絵本ってすごいなあと思いました。
 それからは、大人が読んでも面白い絵本を集めるようになり、東日本大震災の時に被災地の避難所に320冊ぐらい送らせてもらって、今現在、500冊か600冊くらいあると思います。
長谷川 大門さんは絵本研究家で絵本のことに詳しいですけど、僕なんか自分の描いた絵本しか知りませんねん(笑い)。
 6年前に初めて大門さんにお会いした時に勧めてもらった本を取り寄せて読みました。その1冊が「エリカ 奇跡のいのち」でした。悲しい話なんですが、本当に映画みたいで、言葉がなくても絵がしっかり語っている、そんな本でした。

なんで子どもたちだけ

大門 長谷川さんの絵本の中で僕が一番好きなのは「ようちえんいやや」。今日も持って来たんですが、これ、僕そのものなんです。幼稚園に1日行っただけで、その後行かなくなり、小学校もほとんど行ってない。今でいう登校拒否です。とにかく集団行動が嫌で、幼稚園や学校に行くより、お母ちゃんと一緒にいたいという子だったんです。
長谷川 この絵本は、自分の子を幼稚園に通わせている時に描きました。うちの子は、園長先生に「おはよう」と言われても、はにかんでうまいことよう言わん子でした。大人やったら内気な人間とか、人とよう接しない人がいるのに、なんで子どもだけ明るく元気にはきはきすることを求めるのかな、けったいやなあという思いから生まれたんです。
大門 俳優の室井滋さんと一緒に作られた「会いたくて会いたくて」も、おばあちゃん子だった僕の世界。長谷川さんの絵本は、自分の子ども時代を描いた本でもあり、とても身近に思うんです。

平和やないとあかんと

長谷川 どの本も僕自身が描きたいことを描いてますけど、子どもにも大人にも喜んでもらいたいんですね。子どもに絵本を読んであげてるお父さんが、つぼにはまってぷっと笑うみたいな。
大門 おもしろおかしいし、子どもも喜ぶ。でもただ楽しいのではなく、その中でほろりと来たり、物事の本質がある。
長谷川 あほみたいに笑(わろ)てもろて世界平和になったらいいなと思います。
 僕はただ好きなことをしたいし、自由でいたいんです。よその国の人もみんなそうだ思います。したいことや自由なことが、一瞬にして奪われるのが戦争です。だから絶対に平和やないとあかんと思うんです。

体を通した言葉こそが

長谷川 「政治家」って、け ったいな言葉やなあと思うんです。人前でマイク持って私に入れてくださいって、どう考えても変じゃないですか(笑い)
大門 たすきして手振って、よく考えたらほんまに変ですね。
長谷川 大門さんのエッセイ集、読ましてもろたんですけど、子どもの時にお母さんが働きに行ったはるところまで会いに行って、抱きしめてもろて、気ぃつけて帰りやと言ってもらって帰ったというのがあるでしょ。普通の人間のしんどい、悲しいことをよう知ったはる人やというのをすごく感じるんです。僕らがよう行かん国会の場に、こんな人が行ってくれてるのがうれしい。
大門 芸術家は自分がしっかりあるからこそ、いろんな作品を生み出すのだと思います。私たちの演説や国会の質問も、自分が本当に信じていることやその人の中から出てくる言葉でないと信用されないと思うんです。私は本当に自分が正しいと思ったことは、立場が違っても自民党議員だって分かるはずだと思いながら質問に立つんです。
長谷川 大門さんが出てきたら、国会のやりとりもなんかほんわかするんです。

「企業が独り勝ちしてもあかん」長谷川
「『人にやさしい経済』こそ強い」大門

大門 (大門さんの新刊本「やさしく強い経済学――逆転の成長戦略」を渡して)こんな本を出しました。
長谷川 ありがとうございます。
大門 (裏表紙のイラストを一瞥した長谷川さんに)イラスト、自分で描いたんです。
長谷川 ええ!?マジですか?
大門 小さい時、学校に行くのが嫌で、家で漫画ばっかり描いてたんですが、たまたま田村智子さん(党副委員長・参院議員)の似顔絵を描いたら似てると言われて、調子に乗っていろんな人の描くようになって。
長谷川 かなんなあ(笑い)。めちゃくちゃうまいですよ。やくみつるみたいな漫画家が描かはったんかと思った。
 この本、読ませてもらいますけど、経済ってお金をもうけることとは違うと思うんです。この本のタイトルのように、人に優しくするところから物のやりとりができて、それがお金に換わっていく。相手の人に優しくして周りがみんな幸せになるっていう、ものすごくシンプルなことやと思います。
 だけどいま真逆のことばっかりしてるでしょ。そういうことをちゃんと分かって経済政策まで結び付けて、しんどい人を楽にさせて、みんなで一緒に楽したいという感覚を持ってくれてはる。だから僕は大門さんを好きやねん。

逆転の発想で提案して

大門 国会に行かせてもらって21年経つんですが、最初が小泉内閣の時で、目の前にいたのが竹中平蔵さんでした。彼らは、賃金を下げて非正規雇用の人を増やすという「構造改革」をやって、それがこれまで続いてきました。正社員がどんどん減る一方で、不安定で賃金の低い人達が増え、人に冷たい、人を使い捨てにする経済を続けてきた結果、他の国は成長しているのに日本は成長しない国になってしまいました。
 それを考え直そうじゃないかということで、逆転の発想で、人を大事にして人に優しい経済、賃金を上げるし、社会保障をよくしたほうが経済はよくなるということを、世界中のいろんなデータを示して提案しています。
長谷川 一般ピープルを痛めつけて企業が独り勝ちしてもあきませんよ。
大門 そうなんですよ。結局伸びないんです。
長谷川 なんでそんなことをあの人たちはよしとするんですか?
大門 昔は、賃金を上げて会社も終身雇用にして定年まで働いて、会社は家族の面倒も見るというのが日本経済の強みだと言われてきました。90年代半ばにその方向が変えられて、正社員が当たり前じゃない、エリート以外は派遣労働をどんどん増やすという「構造改革」が財界の要請で進められてきました。賃金を下げて国内の景気が悪くなっても、海外でもうけたらいいと。
長谷川 あかんやん。
大門 それをやってきてどうなかったかというと、海外でもうけた分、内部留保が増えるけれど、国内の景気が悪くなって、日本経済としては20年以上停滞のままになった。人の使い捨てやリストラで、技術者もどんどん中国や韓国、台湾に行ってしまって、技術力も下がるという悪循環が生まれてしまいました。

トリクルダウンはない

 竹中さんとは50回以上国会で論戦しましたが、彼は企業がもうかれば必ず人を雇って賃金も上がるとずっと言い続け、僕は回るわけないと言い続けてきました。それまでの、企業がもうけて賃金が回るという回路を、非正規雇用を増やして絶ってしまったからです。トリクルダウン(したたれ落ちる)は存在しないということは、共産党だけでなくアメリカの研究所も言ってるんですね。
長谷川 なんとなく僕らが思っていることを、そうやって具体的なデータや外国の例を出して裏付けてゆうてくれたら、やっぱりそうやったんかと思います。

「カジノは大阪に一番合わへん」長谷川
「国に認めさせたら絶対に駄目」大門

長谷川 コロナになって大阪はひどい状況になってますが、それでも維新の人たちは「身を切る改革」と言って支持を集めてます。だけど結局、身を切られてえらい目に遭うのは、僕ら市民なんですよ。
大門 その維新が大阪で進めているのがカジノでよ。
長谷川 カジノってばくちじゃないですか。ばくちで潤った分、苦しむ人が出る。誰かを犠牲にするわけでしょう? そんなん、大阪人としては絶対にやってはいけない嫌なことですよ。もともと大阪は、買(こ)うてもろた人に喜んでもらうという気質の町やのに、ギャンブルですってんてんになった人の金を巻き上げて潤おわそうというのは、一番大阪に合(お)うてへんと思います。しかもそのために巨額な税金を使うなんて、絶対やめてほしいですわ。

根拠ない数字並ぶ計画

大門 ほんまですね。大阪らしくないというのは核心ですね。
 当初大阪で予定していたカジノ企業が次々手を引く中で、1つだけ残った会社に足元を見られて、整備のために税金を使えと言われているのが問題になっています。
 大阪府がカジノ誘致を国 に認めてもらうために4月末に計画を出したんですが、年間2千万人集めるというありえない数字を出して来たりして、ひどい内容なんですね。
長谷川 もともと無理があるところが出てきたわけですね。
大門 そうです。国がまともに審査するなら、あんな根拠のない数字を認めるわけがないし、認めさせてはいけない。これから審査に入るので、そういう運動を大いに広げて、国会でも頑張りたいと思います。

「名前変えんのは信念あるから」長谷川
「確固たる理論があるからこそ」大門

長谷川 共産党は国会でも常に弱いほうの人の立場で代弁して、正しいこと、まともなことを言ってくれてます。僕らの代わりに良からぬ人たちに立ち向かってくれてる。ただ真面目にやってるのはええんやけど、若い子とか弱っている人たちにも、もっと伝わるように作戦練ってほしいです。
大門 私たち自身がもっと広く訴えていく力を持たんとあきませんね。
長谷川 中国とかロシアの共産党と同じ名前やないかいという人もいるみたいですけど、日本の共産党は、党としてずっと戦争せえへん、9条守りましょう、憲法守りましょうと言ってくれてるでしょ。自分たちの確固たる信念や誇りみたいなものがあるから、日本共産党という名前は変えませんというのは、僕は正しいことやと思うんです。

科学的社会主義の理論

大門 今の資本主義のいいところは発展させて、変えなければならないところは変える。その考えの土台になっている科学的社会主義の理論に基づいて、みんなが幸せに暮らせる世の中を目指して活動しているのが日本共産党です。長谷川さんがおっしゃってくださるように、確固たるものを持っているからこそ、この名前を大事にしたいんですね。
長谷川 僕はこれからも絵を描いて、僕の絵を見てくれた人がまともな人や政党に1票入れてくれたらと思います。
大門 私も頑張ります。

絵本作家・長谷川義史さん 1961年、藤井寺市生まれ。イラストレーター、絵本作家。「ぼくがラーメンたべてるとき」(教育画劇)、「へいわってすてきだね」(ブロンズ新社)など著書多数。テレビ出演の他、自作絵本の朗読やウクレレ弾き語りで全国公演。

参院議員・大門みきしさん 1956年、京都市生まれ。日本共産党参院議員4期目。他党も認める経済論戦の第一人者。趣味は絵本収集。経済書を多数執筆。近著は「やさしく強い経済学―逆転の成長戦略」(新日本出版社)。22年夏の参院選比例候補。

(大阪民主新報、2022年5月15日より)

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