たたかいは市民の財産、後世に
東大阪民主市政を振り返る
長尾元市長 『住民自治の音頭をとる』出版
元東大阪市長の長尾淳三さんが、冊子「住民自治の音頭をとる 共産党員市長がみた深層」をこのほど出版しました。長尾さんは、1997年12月から2011年10月までの14年間に6回の選挙をたたかい、市長として5年、市政運営をしました。この時期を、舞台裏も含め記述したものです。「長尾さんだから書ける『深層』にびっくり」「今日の課題解決へ過去を振り返るという未来志向がいい」などの声が寄せられ、好評です。長尾さんに話を聞きました。
――あのたたかいから10年以上がたちました。
長尾 あの苦しくてつらい思いで過ごした日々を思い起こすこと、自己分析的な目で整理することは、トラウマとの悪戦苦闘の作業でした。
五十万人の都市で共産党員が市長選をたたかい、市政運営をした私の経験を、社会進歩を願う人々の共通の財産にしたい。なんとか冊子という形にできました。
汚職・腐敗まみれで市民いじめの市政を転換した市民の力、市民本位の市政運営の姿、議会対策の苦労など、今だから明かせる舞台裏なども含め、リアルに記述したつもりです。
――冊子の一番の特徴は何ですか。
長尾 「今日の課題について、私の過去の経験を振り返る」という手法に挑戦し〝未来志向の回顧録〟にしたつもりです。東大阪市民が起こした市政大変動は、今の格差社会を克服するために役立つと思います。
私は民主市政の定義として、「市と市民とが信頼し、高め合う市政」とし、市政の目標を「市民みんなが社会の担い手となって、元気で活躍できること」に設定しました。
これは、維新政治による市民と公務員との対立をあおる手法とは対極です。維新政治は弱肉強食の新自由主義そのもので、住民自治とは相いれません。
――反共意識について「市長いじめ」の陰惨さも、反共意識をあおる深層部分なども、よく伝わってきます。
長尾 皇太子(現天皇)を迎えた育樹祭での出来事(他の首長と違う座席になった)など、私が感じた反共意識の根深さを書きました。
同時に、市民はそれを「幻影」と見抜いてくれました。「共産党の長尾さんでええやんか」と、市長不信任決議に反撃してくれたことが、初当選や返り咲きよりも、私が最も誇りに思う出来事です。「共産党と手をつなぐな」論は、克服できることを事実で証明したと自負しています。市民と野党の共闘の前進を願う方々に、ぜひ読んでいただければと願っています。
――ご自身の近況も語っておられます。
長尾 幸い健康でいますから、今後も社会の下支えでの役立ちをしたいと思います。
住民はコロナや、最近のウクライナの問題で、精神的に委縮する生活を強いられがちです。戦前、国民の多くが心の健康を失わされたことが、戦争突入した一因だった教訓を、今思い起こすことが必要だと痛感しています。戦争か平和かの選択が求められていますが、ほとんどすべての人が平和を願っているのです。
2年前から、地域革新懇の取り組みとして、「コロナのストレス生活に一片のやすらぎを」との思いで、自家製絵はがきを作成して配布しています。さらに畳大に拡大し、自宅の街角ギャラリーに展示しています。ほとんどの通行人からあいさつの声が掛かります。
――冊子の制作は、ほとんど一人でされたそうですね。
長尾 原稿、編集、装丁、ISDN取得と、ほとんど自分で行いました。自費出版ではなく、自制作出版ともいえるものです。カラー刷り100ページの冊子を価格500円に抑えられました。
冊子「住民自治の音頭をとる 共産党員市長がみた深層」 発行:民主市政研究会(長尾淳三代表)。問い合わせは、Eメール:z-nagao@gmail.comか、090・9702 ・8024へ。 |
(大阪民主新報、2022年5月29日より)