みんなの願いを国会へ わたなべ結物語③
韓国訪問 加害の歴史学び伝え
橋下市長の暴言
2012年9月。
橋下徹大阪市長が「日本軍が『慰安婦』を強制連行した証拠はなかった」と発言するなど、歴史の真実をゆがめる言動が強まる中、わたなべさんは韓国を3日間の日程で訪問しました。
日本政府の公式謝罪を求めて1992年以降、日本大使館前で開かれている「水曜集会」に参加したときのこと。平均年齢86歳(当時)になるハルモニたちが小さな体で、「日本政府は認めて、謝罪を」と訴える姿を間近で見たわたなべさんは、日本人として申し訳なくて、情けなくて、恥ずかしくて涙ぐみました。
そしてわたなべさんは水曜集会でスピーチしました。
「日本政府に公式の謝罪と賠償を求めます。韓国の皆さんと平和で友好的な関係を築くために、戦争を知らない若い世代に日本の加害の歴史を伝えていくことを求めます」
温かい拍手がわき起こり、ハルモニは「日本人のあなたのスピーチで、私の心の中がスッとした」と語ってくれました。
ナヌムの家で
「ここにおかけなさい」。
ソウル市郊外で旧日本軍「慰安婦」の被害女性が共同生活を送る「ナヌムの家」を訪ねた時、ハルモニの李玉善さんが日本語で手招きしました。
15歳の時、帰宅途中に拉致され、終戦を中国で迎え、75歳まで故国の土を踏むことなく、家族から「死亡」届が出されていたと語った李さん。
「日本人みんなを恨んでいるわけではない。私は青春を奪われた。そのことをちゃんと謝罪をしてほしいだけ」
李さんのこの言葉はとりわけ強くわたなべさんの胸に響きました。
「ナヌムの家」に併設された「日本軍『慰安婦』歴史館」には、旧日本軍の管理文書や「慰安所」の一室を再現した部屋、ハルモニたちが描いた絵が展示されていました。
「薄暗く重苦しい“慰安所”に閉じ込められ、たくさんの兵士の相手をさせられた女性たちのことを思うと、体がこわばりました。ハルモニたちの絵から怒りと悲しみ、そして平和の願いが伝わってきました」
日本が侵略し、植民地支配をした国だからこそ、きちんと知ることから始め、相手の立場に立って考えることが大事だと感じた韓国訪問。
わたなべさんは、「憲法9条を持つ日本だからこそ、侵略と植民地支配の歴史を真摯に反省し、どの国とも信頼関係を強め、対等平等、友好な関係が築ける日本にしたい」と強く決意しました。
ドイツの友人に
「アンドレア あなたの意見を教えてください…」――2013年6月12日。ドイツで暮らす友人に宛てわたなべさんが送った電子メールは、そんな書き出しから始まりました。
橋下徹大阪市長が5月13日の記者会見で「銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で命をかけて走っていくときに、どこかで休息させてあげようと思ったら、慰安婦制度は必要なのは誰だってわかる」などと発言し、国際的な批判が沸き起こりました。
「日本では安倍首相が“侵略の定義は定まっていない”とか、橋下市長が“慰安婦は必要だった”とか、日本が過去の侵略戦争と戦争犯罪に向き合わない発言をしています。アンドレアの国ではこんな発言は受け入れられますか?」
研究活動を続けていたドイツ人の友人は、すぐに返事を寄せました。
「まったくあなたの言う通り。ドイツでは、そのような意見は公式には受け入れられません」
わたなべさんが送ったメールは最後にこうつづられていました。
「私は日本人としてとても恥ずかしいです。日本は日本の過去を正しく理解すべきです。国と国との未来ある関係を築くために」