支援学級巡り文科省通知 「支援」「通常」 極端な2択迫る
通常学級での学びと交流 事実上疎外 八尾 保護者が市教委と懇談
今年4月、文部科学省が出した通知を発端に、大阪の特別支援学級(支援学級)が果たしてきた先進的な役割が大きく後退しています。八尾市内ではこの問題を巡って、保護者が市教委と懇談し、これまでの「支援学級を奪わないで」と訴えました。
保護者ら〝今のままという選択肢〟を
八尾市の小中学校の特別支援学級(支援学級)は、発達に課題のある児童・生徒を含め、特別な支援を必要とする子どもたちの学習権を保障する上で、全国的にも先進的な役割を果たしてきました。
文科省の通知で
文科省は4月27日、 特別支援学級在籍の児童・生徒は、授業時数の半分以上を特別支援学級で受けることを原則とするとした通知を出しました。この通知は、発達に課題のある児童・生徒が支援学級に在籍し、支援学級の支援を受けながら通常学級での学びと交流を柔軟に行っていたものを、事実上排除する内容になっています。市はその対象者を、200人から300人としています。(9月議会での教育委員会答弁)
2択を迫られて
この対象児童・生徒には、「支援学級で学ぶ時間を増やす」か、「支援級を抜けて通常学級に在籍し、通級指導教室(※)を利用する」かの2択が迫られています。来年度は経過措置とし、子どもや保護者の合意を前提としながら、再来年度はどちらかを選んでほしいと求めています。
日本共産党など3会派が9月議会でこの問題を取り上げ、議員有志でも丁寧な説明と条件整備を求める要望書が提出されました。
続く12月議会で、共産党が状況を質問。教育委員会は、「移行対象の子ども・保護者の大半が合意に至っていない」とし、「移行を決断した保護者にも不安を抱えている人はいる」と答弁。教育委員会がこの思いや声を直接受け止めるべきだと求めた結果、12月8日に保護者有志と教育委員会の懇談が持たれました。
保護者らが訴え
当日は、教育長・教育監・教育センター所長などが出席。保護者が、わが子が支援学級でどう支えられてきたかを具体的に紹介しながら、訴えました。
支援学級の担任のサポートで大半を通常学級で過ごせるようになった子どもの親は、「支援級で半分以上学ぶよう求められることに納得がいかない、かといって支援学級を抜けて通常学級に在籍したら、支援級の担任の援助が受けられず、子どもは不安で教室に居られないと言っている。今のままでなぜいけないのか。今が幸せなのに」と述べました。
この他にも、「支援学級でクールダウンをし、通常学級で学んでいる。支援学級を退級したら、その場が奪われる」「中学生だが、支援学級での時間を増やせと言われた。内申に影響してくる」「(来年4月からの)新1年だが、支援学級で大半を過ごすと説明を受けた。中学校になっても同じだと。涙があふれてきた」「通級指導教室は全ての学校に無い」「発達の課題のある子が、通常学級で十分な援助を受けることができるのか」など不安の声を上げました。子どもや保護者の手紙も教育委員会に提出しました。
また「文科省の通知に反対してほしい。子どものためになると思っておられますか」と問う保護者もいました。
市民団体も請願
これらの声に対し、教育委員会は「子どもの顔が浮かんでくる」「気持ちは同じだ」としながら、従来の説明を繰り返しました。
懇談後の保護者同士の交流では、文科省の通知の撤回を求めつつも、①〝今のままという選択肢〟を選べるようにすること、 ②通級指導教室などの全校設置、③子どものニーズに応じた全校での柔軟な対応、④新1年生にも経過措置を適用すること、⑤コロナが始まってから途絶えた保護者の交流の援助など、目の前の子どもに必要な支援を求める思いが出されました。
懇談には、日本共産党の田中裕子市議も同席しました。
12月の定例教育委員会議には、「八尾の教育を考える市民会議」がこの問題で、〝支援級が果たしてきた八尾の到達を後退させないでほしい〟と請願を提出しています。
※通常学級に在籍し、軽度の障害がある児童・生徒に対し、週数時間、別室で行う指導 |
(大阪民主新報、2022年12月18日号より)