夢洲・カジノ用地
異常に安い賃料は不当
大阪市民85人 差し止め求め監査請求
維新の大阪府・大阪市政が進める、カジノを核とする統合型リゾート(IR)誘致計画を巡り、大阪市が大阪湾の埋め立て地、夢洲(ゆめしま、大阪市此花区)の土地を、大阪市が違法・不当な不動産鑑定評価に基づき、異常に安い賃料でIR事業者に賃貸しようとしていることは地方自治法に反し、市民に損害を与えるとして、大阪市民有志が16日、賃貸契約締結の差し止めを求めて大阪市監査委員に住民監査請求書を提出しました。提出時点で85人が請求人になっています。
監査請求書などによると、市の依頼で2019年に鑑定業者4社が発行した評価書のうち、3社が1平方㍍当たり12万円、月額賃料428円で一致しています。21年に3社が発行した評価書のうち2社が1平方㍍当たり12万円、月額賃料428円と一致。市はこれらの鑑定に基づいて、賃料を決めました。
評価額が完全に一致することは業界の常識からあり得ないもので、依頼者の市が指示・誘導した可能性があります。
IRは、カジノや高層ホテルなどを備えた巨大集客施設ですが、市は鑑定評価でIRを「考慮外」とするよう指示。鑑定業者は、IR事業としての使用実態と全く異なる郊外型ショッピングモールのような「大規模複合商業施設」として鑑定。これが不当な賃料引き下げにつながりました。
市はIR用地の土壌対策で788億円の公費負担を決めています。土壌対策に巨費を投じれば土地の評価が上昇して賃料も値上がりしますが、安い賃料のままで賃貸契約を結ぶことになります。
監査請求書では、地方自治体の仕事の基本原則は「最小の経費で最大の効果を挙げる」(地方自治法2条14項)ことであり、不当に安い賃料でカジノ用地の賃貸契約を結ぶことは同法に反し、違法だとしています。
提出後、請求代表人の藤永延代さん(おおさか市民ネットワーク代表)や長野真一郎弁護士ら6人が記者会見。「土地の評価でIRを『考慮外』として評価して低い賃料にしたことは、市民に対する詐欺だ。市民の財産を食い物にするもので、許されない」(藤永氏)などと訴えました。
カジノ誘致計画の認可を受けるために、必ず満たさなければならない「要求基準4」では、IR区域の土地の使用権原、施設の設置根拠についての妥当性が求められています。違法・不当な賃料では「要求基準4」を満たすことができず、認可の前提が崩れます。
国交省は昨年9月28日、カジノに反対する大阪連絡会との意見交換で、「計画に法的な瑕疵(かし)があった場合、認定した後に瑕疵が発覚した場合でも、認可を取り消す」と回答しています。
(大阪民主新報、2023年1月22日号より)