おおさかナウ

2023年04月07日

夢洲・カジノ用地
市有地 不当に安い賃料
大阪市民10人 契約差し止め求め提訴

カジノ用地の賃貸契約の差し止めを求めて提訴する市民ら=3日、大阪市北区内

 カジノを核とした統合型リゾート(IR)事業を行うためなのに、「IR事業を考慮外」として算定した格安の賃料で、大阪湾の埋め立て地、夢洲(ゆめしま)の市有地をカジノ事業者に賃貸するのは違法だとして、大阪市民10人が3日、大阪市長と大阪港湾局長を相手取り賃貸契約締結の差し止めを求めて提訴しました。差し止めを求めた住民監査請求に対して市監査委員が、意見が一致しなかったとする「合議不調」の結果を通知(3月15日)したことを受けたものです。

「官製談合の疑い」 不動産の鑑定であり得ない一致

 大阪市は、カジノ誘致計画を国が認可すれば、夢洲の市有地約49万平方㍍を、土地価格1平方㍍当たり12万円、月額賃料1平方㍍当たり428円(月額2億1千万円、年額25億円)で、カジノ事業者(大阪IR株式会社)と賃貸契約を結ぼうとしています。
 ところが、市が不動産鑑定を依頼した鑑定業者4社のうち、3社の鑑定結果が月額賃料1平方㍍当たり428円で一致しました。不動産鑑定業界の常識ではあり得ないもの。この鑑定結果は、鑑定を依頼する前に、市が定めていた価格と一致することが判明しています。

「IR考慮外」は市が業者に指示

 IRは、カジノの来訪者数を年間1610万人と見込む巨大な営利事業で、鉄道新駅の駅前一等地に3つのホテルが入る高層建築物を建設する計画です。
 ところが市は「IR事業を考慮外」とするよう鑑定業者に指示し、鑑定業者はショッピングモールのような「大規模複合商業施設」として鑑定。
 月額1平方㍍当たり428円は物価スライドのみの固定賃料で、IRの事業期間は35年もの長期にわたります。カジノ事業者が支払う賃料は、正当に評価された場合と比べ年15億円、35年で500億円超の値引きになるとの試算もあります。

原告ら会見 ずさんで違法な鑑定黙って見過ごせない

 提訴後、大阪市北区内で記者会見した長野真一郎弁護士は、今回の不動産鑑定はずさんで違法だと指摘。市が「IR事業を考慮外」と指示したことなどは、市民の貴重な財産である市有地を「適正な対価」で賃貸する法的責任に反すると強調しました。
 また住民監査請求に対する市監査委員の調査で、不動産鑑定業者が、IRの開業で土地の価値が上昇すれば「賃料の改定を行うのが通常」と回答したことも紹介。鑑定結果をそのまま賃料にすることは許されないと述べました。
 原告団を代表して、おおさか市民ネットワーク代表の藤永延代、カジノに反対する大阪連絡会事務局長の荒田功事務局長、年金生活者の伊藤一正の3氏が発言しました。
 各氏は「違法がまかり通る大阪市政を黙って見ているわけにはいかない」(藤永氏)、「不動産鑑定評価を巡り、官製談合の疑いが深まっている」(荒田氏)、「夢洲を災害廃棄物などの処分場として延命化すべき」(伊藤氏)などと語りました。

(大阪民主新報、2023年4月9日号より)

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