おおさかナウ

2023年04月19日

国は認可したが…
問題山積み大阪カジノ計画

 岸田政権は14日、大阪府・市が国に申請していたカジノを核とする統合型リゾート(IR)の誘致計画(区域整備計画)の認定を強行しましたが、大阪のカジノ計画はさまざまな問題点が山積したままです。

カジノなくしてIRなし
人の不幸の上に成り立つ

 カジノは賭博です。ギャンブル依存症を生み出し、家庭崩壊や失業、自殺、犯罪など本人と周囲の人生を狂わせるなど、人の不幸の上に成り立つものです。
 IRはカジノの他、ホテルや国際会議場、劇場などが一体となった施設。吉村洋文知事ら推進派は、カジノ床面積はIR全体の3%に過ぎないと説明してきましたが、大阪の計画ではIRの年間収益の8割(4200億円)を占めるのがカジノ。IRはカジノなしに成り立ちません。

約20万人もの依存症患者が

岸田政権の大阪カジノ計画認定に抗議する宣伝行動で訴える日本共産党の清水忠史前衆院議員=14日、大阪市都島区内

 大阪市議会都市経済委員会の参考人質疑(2022年3月)で、IR事業者でMGMリゾーツのエドワード・バウワーズ社長は「責任あるゲーミング(ギャンブル)を行うお客様が全体の98%で、ギャンブル依存症を抱えているかも知れない約2%に実際に問題が起きないようにサポートする」と答弁。入場者の約2%にギャンブル依存症が発生すると認めました。
 大阪カジノの年間入場者数が見込み通り約1千万人だとすれば、20万人ものギャンブル依存症患者が生まれることになります。
 先の知事選で吉村知事や維新は「ギャンブル依存症には正面から向き合う」「リスクを恐れて何もしないのは無責任だ」などと主張しましたが、一番確かな依存症対策は、新たなギャンブル施設であるカジノを造らないことです。

標的は大阪周辺の日本人
認定の前提が崩れている

 国が誘致計画を認定する上で、満たさなければならない「要求基準」があります。その一つに「国際競争力」。2018年7月の参院本会議で当時の安倍晋三首相は、「国際競争力の高い魅力あるIR施設でなければ区域整備計画の認定を行わない」と答弁しています。
 これに照らせば、大阪カジノ計画は認定の前提そのものが崩れています。IR全体の入場者数は年間約2千万人で、そのうち国内客が1400万人と約7割。カジノの日本人客は約1千万人で、「大阪IR基本構想」(2019年)で想定した430万人の2倍以上に増えています。
 大阪IR株式会社の中核株主であるオリックスは、自社の決算説明会(2021年11月)で、「もともとインバウンド(訪日外国人観光客)等を勘案した上で、数年前からやっていたが、今は客は全員日本人、日本だけでどれだけ回るかという前提でプランニングをつくっている」と説明。カジノの標的は日本人、大阪周辺の一般市民です。

課題を指摘もそのまま認定

 大阪のカジノ計画を審査した審査委員会の報告書は「要求基準」を満たしたのかどうか、何も触れていません。審査委員会は、国内来訪者が多数訪れる計画だと指摘しつつ、「特に外国人来訪者の増加に向けたプロモーションと集客の実施」が課題だとしましたが、そのまま認定。まったく道理がありません。

夢洲はごみの最終処分場
地盤沈下などで公費負担

780億円のほか沈下対策費も

 カジノの予定地である大阪湾の埋め立て地、夢洲(ゆめしま)はごみの最終処分場。PCBやダイオキシン類などによる土壌汚染、液状化などの問題があります。市は土壌対策費として788億円もの公費投入を決めましたが、そこに地盤沈下対策は含まれていません。
 市は「地盤沈下対策事業は事業者において適切に対処する」「通常の想定を著しく上回る大規模な地盤沈下や陥没が生じた場合を除いて、大阪市が費用負担を行わない」と説明してきました。
 カジノに反対する大阪連絡会がIR推進局などとの協議(3月20日)で、「カジノ事業者と合意しているのか」とただしたのに対し、局側は、誘致計画の認定を受けてから一連の手続きの中で協議することになると説明。協議次第で市の負担がさらに膨れ上がる可能性があることを示唆しました。
 審査委員会は、「想定以上の沈下が進行した場合などの対応について十分検討しておくこと」などと注文を付けるだけで認定。液状化対策や土壌汚染についても「対応策を幅広に検討」と求めるだけで、問題を地元・大阪に丸投げしています。
 想定される最大津波や高潮への対策では、「『想定外』を始めとした幅広なリスク管理意識の高さが見受けられたかについては高評価はし難い」としつつ、ここでも対応策を検討するよう求めるだけです。

格安賃料などで重大疑惑
契約差し止め求め裁判も

 IR事業を行うためなのに、「IR事業を考慮外」として算定した不当に安い賃料で、夢洲の市有地をIR事業者に賃貸するのは違法だとして、大阪市民10人が3日、大阪市長らに賃貸契約締結の差し止めを求めて大阪地裁に提訴しました。

大阪市の指示でIRを考慮外に

 夢洲の不動産鑑定評価で大阪市は「IR事業を考慮外」とするよう鑑定業者に指示していたことが判明。日本共産党大阪市議団と辰巳孝太郎元参院議員が3月、公文書を示して明らかにしました。
 市の指示を受け、鑑定業者はショッピングモールなどの「大型複合商業施設」として鑑定。鑑定業者4社のうち3社が月額賃料1平方㍍当たり428円で一致するという、業界ではあり得ない結果ですが、市はこれに基づいて賃料を決めました。
 この賃料は物価スライドのみの固定で、IRの事業期間(35年間)にIR事業者が支払う賃料は政党に評価された場合と比べて年15億円、35年間で500億円超の値引きになるとの試算もあります。
 カジノに反対する大阪連絡会は、国土交通省との交渉で、「カジノ用地の賃貸契約が差し止められた場合」には、大阪のカジノ誘致計画の「認定はできない」とする国の立場を繰り返し確認してきました。賃貸契約締結の差し止め訴訟で、違法な賃料だと認定されれば、カジノの認定は取り消されます。

(大阪民主新報、2023年4月23日号より)

月別アーカイブ