依存症問題啓発週間
カジノ造らないことが対策 市民団体のイベント
大阪カジノに触れずじまい 府主催のイベント
ギャンブル等依存症対策基本法では、毎年5月14日から20日までが「ギャンブル等依存症問題啓発週間」。大阪府でも去年制定された条例で、今年から毎年5月を「ギャンブル等依存症問題啓発月間」に定めたのを受け、13、14の両日、大阪市内で2つのイベントが開かれました。
1つは、全国ギャンブル依存症家族の会大阪などが開催した「大阪カジノ始動 #依存症対策が先だ大阪IR」。もう一つは、府主催の「みんなで話そう♪ ギャンブル等依存のこと」。いずれも200人近くの市民が参加しました。
依存症の現状と課題語って
家族の会のイベントの第1部は、ギャンブル依存症問題を考える会代表の話題提供や当事者家族が登壇しての体験紹介、医師、弁護士、府担当課職員、支援者によるシンポジウムが行われました。
借金を繰り返して闇金にも手を付け、本人が自己破産に追い込まれるだけでなく、周囲にも出口の見えない苦境を強いる実態と共に、コロナ禍で激増しているオンラインカジノ、児童手当がギャンブルに使われる問題などが出されました。第2部では、会からの問題提起も交え、5人の府議が依存症対策の現状や課題を語り合いました。
日本共産党からは石川たえ府議が出席し、依存症を減らす具体策の必要性と併せて、大阪カジノ誘致を認定した国自身が府・大阪市に具体策の検討を繰り返し求めていることを紹介。立憲民主党の野々上愛議員と共に、「カジノが来てしまえば依存症患者は増える。カジノを造らないことこそが依存症対策になる」(石川氏)、「カジノを造らないことが最強の対策」(野々上氏)ときっぱり話しました。
オンラインカジノを巡り維新議員は、「リアル(カジノ)は適法、それ以外は違法」などと述べました。
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府主催のイベントの第1部では、大阪音大生による金管アンサンブル演奏に続いて、吉本興業所属の漫才コンビ2組による「お笑いライブ」が披露されました。
第2部では、精神科医の司会で、1部に登場した漫才コンビに、2人の女子学生、元当事者で現在支援活動をしている「大阪マック」のメンバーが加わってパネルディスカッション。
終始笑いに包まれて進行し
各氏やその知人がパチンコや競馬、スマホゲームの課金を始めたきっかけなど語るのですが、「ギャンブルで負けた分はギャンブルで取り返す沼にはまった」と自身の体験を紹介した「大阪マック」のメンバー以外は、終始、笑いに包まれて話が進みました。
第1部の主催者あいさつで、大阪府健康医療部長は「50人に1人の割合でギャンブル依存症の人が存在し、誰もがなりうる可能性がある」と警鐘を鳴らしました。ところが、大阪カジノには一切触れず。イベントの内容全体が、ギャンブル依存症で苦しむ当事者や家族、支援者らの思い、大阪カジノへの不安に寄り添ったものとは到底思えず、終了後、参加者に聞いてみました。
参加者も首をかしげる内容
地域で健康づくりのボランティア活動に参加しているという70代の男性は、こう話しました。
「ギャンブル依存症がテーマだったので、もっとつっこんで話が聞けるのかと思って参加した。府知事と大阪市長がつくろうとしている大阪のカジノについても、本当にいいものなら触れるべきなのに、まったく話題にしないのはおかしいと思う」
カジノによる弊害に無頓着なのか、反対の声が広がらないようにあえて触れないのか。府主催のイベントは、カジノで間違いなく増えるギャンブル依存症への対策としては、無責任と言わざるを得ないものでした。
(大阪民主新報、2023年5月21日号より)