おおさかナウ

2023年07月01日

「認定取り消し」の運動広げよう
大阪カジノは止められる
カジノに反対する大阪連絡会 中山直和事務局次長の講演(大要)

 大阪のカジノ誘致計画の「認定取り消し」の運動を大きく広げようと、カジノに反対する大阪連絡会の中山直和事務局次長が各地で行っている講演の要旨を紹介します。

認定強行に3つの柱で抗議

中山直和氏

 国交省は4月14日、カジノを核とする統合型リゾート(IR)の大阪誘致計画(区域整備計画)を認定しました。私たちはすぐに岸田文雄首相、斉藤鉄夫国交相宛てに抗議声明を出しました。柱は3つです。
 第1に、国は大阪府知事選と大阪市長選の結果が出た直後に認定しましたが、選挙でカジノが民意を得たとは言えません。維新はカジノ問題で争点隠しを行い、私たちの批判で触れざるを得ない状況が生まれても、まともな説明をしていないからです。
 第2に、私たちは「大阪カジノ計画を認定するな」という国宛ての署名(累計15万5400筆)を国に提出。6回にわたり国と交渉を重ねた結果、審査委員会に地盤工学と津波防災問題の専門家を追加で委嘱させました。

交渉で成果も

 「申請の手続きに瑕疵(かし)があれば、認定を取り消すことがある」との国交省の発言も引き出しました。住民訴訟で夢洲のカジノ用地の賃貸契約が差し止められた場合、国交省は「認定できない」と明確に回答。この成果を勝ち取ったことも述べています。
 第3に、大阪カジノ計画に「高い国際競争力」がなくなっていることや、夢洲の土壌問題やギャンブル依存症対策などが、まったく解決されていないということです。

計画の問題が次々あらわに

 国交省は認定の際に「7つの条件」(別項)を付け、有識者の審査委員会(7人)が報告書を出しました。そこでは大阪誘致計画の問題点が数多く指摘されています。7つの条件は審査委員会の指摘に沿ったもので、大阪の計画に改善を求めるという位置付け。それらは私たちがこれまでのカジノ反対運動で批判してきた点を裏付けるものです。
 審査委員会は今回の認定まで約1年間、大阪府と長崎県が申請した誘致計画を審査してきました。審査基準は、「認定を受ける前提として、必ず適合しなければならない19基準」(要求基準)と、「優れた計画を認定するための25の基準」(評価基準)の2つです。
 評価基準は、もともと全国で3カ所しか認定しないという枠で設けられた基準。2カ所しか認定申請がなかったことは、評価基準の意味合いそのものが崩れていたと言えます。
 審査報告書は評価基準に対するもので、要求基準については一切触れていません。要求基準のうち、「基本方針への適合」には「(4)IR施設を確実に設置できる根拠(IR区域の土地の権限や資金調達の見込み等)についての妥当性」という重要な項目があります。住民訴訟でカジノ用地の賃貸契約が差し止められれば、土地の使用権原は消えます。

認定ありきで

 審査結果を見ると、評価基準は1千点満点で600点(60%)以上取らなければ認定できないというもの。大阪は657・9点で、「優秀」かどうかと言えば、ギリギリの点数です。
 1千点を25項目に5点から150点で配点しています。各項目の得点率で60%を下回る〝欠点〟は「カジノ施設のデザイン等」「観光への効果」。「地域との良好な関係構築のための取組」は54%(50点の配点で27・1点)で最低です。
 60%ぎりぎりは「コンセプト」「カジノ事業の収益の活用」「依存症対策等」で、私たちが重要だと思う項目で点数が悪い。点数が良いのは「施設の規模」(86%)、「MICE(会議・展示場など)施設の規模」(79%)などで、全体として657・9点というのは相当に下駄を履かせた評価で、まさに「認定ありき」です。

私たちの主張には裏付けが

住民合意なし

 私たちの批判や主張と、「7つの条件」や審査結果報告書との関係です。
 第1は大阪のカジノ計画には住民の合意がないという問題です。「7つの条件」の5はこう述べます。「地域との十分な双方向の対話の場を設け、地域との良好な関係構築に努めること」。これは、努力しなさい、改善しなさいという指示です。「双方向の対話」という言葉が大きなポイントで、これまでは一方通行の話でしかなかったということです。審査結果報告書も、こう指摘しています。
 「区域整備計画の申請後に大阪IRに反対する団体等による住民監査請求、民事訴訟、署名活動等が存在している状況であり、地域住民との良好な関係構築に関しては課題が残る」「大阪府・市による地域住民への対面での説明の場を設けるといった能動的な理解促進のための取組の計画が乏しいように見受けられる。このため、地域住民との間において、十分な地域との双方向の対話の場を設け、懸念の払拭(ふっしょく)を図る必要がある」

根拠なき推計

カジノに反対する大阪連絡会は「大阪のカジノ誘致計画を認定するな」の署名を届け、国交省などとの交渉を重ねてきました(写真は4月18日、東京・衆院第1議員会館内)

 第2に、IRの入場者数や収益の金額が過大だという問題です。
 私たちの主張の根拠は、コロナ禍で状況が大きく変化したことで、「高い国際競争力」がなく、外国人観光客は来ず、日本人がターゲットになる点。「7つの条件」の2は、次のように求めています。
 「推計に用いる各種データ等の精緻化に取り組む」。つまり精緻化されていないということです。
 審査結果報告書は酷評です。「国際競争力上相応しい日本の魅力や大阪の魅力が発現されているとの受け止めは難しく…差別化の点で十分に『高い国際競争力・独自性を有する』として評価できるとまでは言えない」。
 評価基準17「観光への評価」で審査結果報告書は、「推計値の妥当性に関し十分な評価を行う材料に欠ける面がある」「(来訪者数の推計では)算出数値の基準について一般的に納得されるには至らないものもある」「前述した細部の不明瞭さに関連し、推計値は、証左等の裏打ち以上に意欲的な数字となっている面が見受けられる」。「意欲的な数値」とは「ハッタリ」と言ってもいい指摘です。評価基準18「地域経済への効果」では、さらに踏み込んでいます。
 「前述の意欲的な来訪者数が推計根拠となっているため、実際には下振れする懸念があり」

調査もせずに

 第3は、夢洲の土壌汚染、地盤沈下問題です。「7つの条件」は4でこう求めています。
 「土壌汚染については、今後新たな事象が判明した場合に備えて対応策を幅広に検討しておくこと」。
 大阪府・市や国交省の立場は、調査もせず、「土壌汚染はない」というものです。
 しかし審査委員会は、ボーリング調査をしていないことを見抜いています。
 「大阪市により、土壌汚染対策法に基づき、試料採取等を省略する等によりIR区域を含めて夢洲地区の汚染状態の判定がなされている…今後、調査等により新たな事象が判明した場合は関係法令にのっとり適切かつ迅速に対処されるようあらかじめ対応策を幅広に検討しておくことを強く求める」
 この指摘は、私たちの主張の正しさを裏付けています。

災害想定なし

 第4は、南海トラフ地震や巨大台風などの防災面。私たちは多数の観光客を呼び込む場所として夢洲は相応しくないと訴えてきました。審査委員会の指摘は深刻です。
 「夢洲外へ避難が必要となる場合のルート(夢舞大橋・夢咲トンネル)は耐震対策がとられるものの、災害発生時にどちらも使用できなくなる想定がなされておらず、今後、想定外の事象が起きた場合の対応について幅広で厚みのある検討を求める」。
 夢洲と対岸の咲州を結ぶ夢咲トンネルは6月2日、大雨の影響で冠水して午前11時過ぎから通行止めになりました。解除されたのは午後6時半過ぎ。こうした災害が、計画では想定されていません。

業者の打撃に

 第5はギャンブル依存症対策。「7つの条件」の6にもありますが、審査結果報告書はカジノ施設のデザインとギャンブル依存症との関係について指摘しています。
 「天井から差し込む光は、自然光は想定されていない。ゲーム没入感抑止の観点からは本来は時間把握がしやすい方が望ましい」
 外国のカジノは外光が入らず、時計もないなど、24時間ぶっ通しでカジノができる設計です。この指摘は、カジノ業者にとっては打撃です。大阪のカジノ計画では6400台もの電子ゲーム機を設置しますが、これに特化した対策が必要だとも指摘しています。

署名広げて裁判闘争支援を

 私たちのたたかいは続きます。カジノ業者の米MGMの社長は大阪カジノを巡って、9月ごろに「実施協定」を締結し、開業は2029年ではなく30年1~6月を目指すと発言しました。今後、国による「実施協定」の認可、カジノ監理委員会のカジノ免許の付与という手続きがあるなど、ハードルがあります。「認定取り消し」を求める国への署名、誘致計画の中止を求める大阪府・市への署名を大きく広げましょう。
 認定の取り消しは可能です。住民訴訟で私たちが勝利し、夢洲のカジノ用地の賃貸契約が差し止められた場合、国交省の参事官は「認定はできない」と明確に回答しました。裁判闘争への支援をお願いします。

国交省が付した「7つの条件」(要旨)

1 カジノ施設やIR全体の建築物のデザインについて、認定審査における審査委員会の意見が適切に反映されたものとなるようにおいて十分留意する。
2 整備効果の推計に用いる各種データ等の精緻化に取り組むと共に、推計値の実現に向けた取組を着実に実施する。国内来訪者が多数訪れる計画であることを踏まえ、特に外国人来訪客の増加に取り組む。
3 長期的に安定した運営を確保するため、カジノ事業の収益を 十分に非カジノ事業へ投資する。特定の国籍等客層に偏ることなく、幅広い来訪者が訪れるような集客の実現に取り組む。
4 地盤沈下については、継続的に沈下量計測などのモニタリングを実施し、想定以上の沈下が進行した場合などの対応について十分検討しておく。液状化対策については、今後の対策工法等の詳細及び対策範囲の確定に当たって不十分なものとならないよう検討する。土壌汚染は今後新たな事象が判明した場合に備えて対応策を幅広に検討する。
5 地域との十分な双方向の対話の場を設け、地域との良好な関係構築に継続的に努める。
6 日本人の依存防止対策をはじめ実効性を持って取り組む。ギャンブル等依存が疑われる者の割合の調査を行い、その結果を踏まえ実効性のある依存防止対策を定期的に検証し、必要な措置を適切に講じる。
7 魅力増進施設はじめ各施設のコンテンツ等について日本らしさを求める意見など、審査委員会の意見を十分に踏まえ、必要な充実を図りつつ区域整備計画の着実な実施及び適時必要な見直しを行う。

(大阪民主新報、2023年7月2日号より)

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