市立幼稚園13を4に 富田林市の大削減計画突然に
維新・公明など賛成し採決へ
保護者・住民が反対の声
富田林市(吉村善美市長)が進める市立幼稚園と保育園の統廃合計画に対し、保護者たちが「拙速で強引な進め方はやめて」と反対の声を上げています。身近にあった幼稚園や保育所が遠く不便になるだけではなく、障害のある子や手厚い支援を必要とする子どもたちが安心して通える施設がなくなるとの心配の声も強くあります。7日の市議会本会議で関連条例改正案が強行されようとしている一方で、市内で「地域の宝、市立園を守れ!」の声が広がっています。
全園廃止して4園の配置を
市は今年5月、少子化による未就学児減少などを理由に、市立幼稚園と保育園の「再配置計画」と称する〝統廃合〟案を公表しました。同案は、「1クラス20人が適正」などとする独自基準を設け、現在13ある市立幼稚園(3園は休園中)を2025年度末にすべて廃止、26年度からは市全域を東西南北4ブロックに分け、各ブロック1園ずつ計4園を配置する方針です。
市立保育所も現在の6施設から4施設へと再編するという内容です。
今回の計画は、当初2021年に策定し市民に提示される予定でした。しかし大幅にずれ込んだ上、統廃合の実施時期は先送りされなかったため、「結論先にありき」「子どもの未来を本気で考えているのか」との怒りになっています。
案発表から2カ月で強行へ
まさに〝寝耳に水〟の計画発表に続き、市は〝統廃合〟案に対するパブリックコメント(意見公募)を5月11日から1カ月間実施するとともに、保護者や地域への説明会を開催しました。
しかし、パブリックコメントの締め切り翌日の6月13日に、市は条例改正案を議会上程しました。あまりの性急さに「パブコメ意見を検証、反映しないのか」「市民の声を聴く姿勢がない」など怒りの声が渦巻く中、同27日の市議会総務文教常任委員会で、維新、公明などの賛成多数で可決されました。
同委員会に所属していない日本共産党の寺尾千秋議員は、委員外議員として質疑を行い、「説明が尽くされていない。もっと市民の声を聞く必要がある」と訴えました。
大事な場所なくすな
住民説明会
幼児教育と保育が後退する
「統廃合計画が突然発表されて、子どもたちは幼稚園がなくなるの?と泣いて尋ねます」「障害のある子どもにとって、『最後のとりで』の大切な場所をなくさないで」。委員会で可決後の3日午前、市立富田林幼稚園で約2時間開かれた説明会では、市の〝統廃合計画〟への反対意見が相次ぎました。
「子どもたちが大好きな幼稚園を、大人の都合でつぶさないで」「子どもの数だけを見て統廃合をしないで」と保護者が涙ながらに訴え、地域住民も「幼稚園は地域社会にとって大事な場所」と計画見直しを求めました。
「私立園が受け入れてくれない子どもは、どこに行けばいいのか」。発達障害グレーゾーンの子どもを育てる母親は、支援の必要な子を手厚い職員体制で支えてくれる公立園の役割を話し、「公立園を一気に4園に減らせば、幼児教育と保育が大きく後退してしまう」と訴えました。
説明会で市側は、少子化が進み再配置を先延ばしはできないとの主張を繰り返すだけで、「なぜ1クラス20人以上でなければならないのか」などの疑問に、保護者側が納得できる根拠は示されませんでした。
説明会には市議会各会派代表らも参加。賛成の市議は「少子化で統廃合は避けて通れない」(維新)、「全ての施設を維持するのは難しい」(公明)などと主張しました。
7日の本会議で可決を狙う
富田林市議会は最終日の7日に本会議を開き、条例改正案を採決しようとしています。計画の根拠や道理を示さないまま、必死の思いで見直しを求める子どもや親たちの声に背を向けて進めることは許されません。
時間かけて見直すべき
日本共産党 寺尾千秋富田林市議
計画発表から住民への周知、議会審議に至る過程は、あまりに拙速で強引すぎます。保護者や市民への説明責任も十分果たされていないのは、民主主義の観点からも見過ごすことはできません。
中学校区を越えた通園の安全対策や、障害児の転園の負担も課題です。幼稚園で障害児を受け入れられるのは、実際には公立だけです。市立園を急激に減らせば、幼児教育や保育・子育て支援の質が大きく後退する懸念があります。
本当に豊かな教育と保育を実現するために、統廃合計画はいったん立ち止まって、時間をかけて見直すべきです。
(大阪民主新報、2023年7月9日号より)