大阪港湾局が「不存在」だったメールを公開
IR考慮外 疑惑さらに
大阪湾の埋め立て地、夢洲(ゆめしま)のカジノを核とする統合型リゾート(IR)の建設用地の不動産鑑定評価や賃料算定を巡り、大阪港湾局が14日、情報公開請求や市議会に対して「不存在」と説明してきた198通のメールを公開しました。今月3日に、存在することが判明したと発表していたものです。
IRはカジノを中心に、高層ホテルや国際会議場、展示場、イベント会場などが一体となった施設です。ところが不動産鑑定業者は、それよりも価値の低いショッピングモールのような「大規模商業施設」として鑑定。このためカジノ事業者が支払う賃料は、正当に評価された場合と比べて年15億円、35年の事業期間で500億円超も低いとの試算もあります。
これまで大阪市や港湾局は、IRは国内に実績がないので鑑定は困難だという鑑定業者の意見を踏まえ、2019年10月中旬に正式に決定したと説明してきました。
依頼目的から考慮外とする
公開されたメールや添付資料によると、港湾局は2019年9月12日、鑑定業者4社に鑑定評価書の概要案への記入を求める文書を送信しています。翌日、1社(財団法人日本不動産研究所近畿支社)が鑑定評価で「IRを考慮外」とする条件を付けて回答。港湾局は「IRを考慮外」などの条件を加えて修正した文書を他の3社に送り直しました。
同月17日に回答した1社(有限会社arec)は、「IRを考慮外」の条件に対して、「想定上の条件(依頼目的との関係から考慮外とする)」と書き添えています。この「依頼目的」とは何か――。
港湾局が4社に鑑定評価を依頼したのは2019年8月22日。日本共産党大阪市議団がことし3月14日の記者会見で明らかにした公文書では、うち1社が依頼当日に港湾局に出した確認書には、IRを「考慮外」とすると明記しています。これが先のarec。
翌23日、別の1社(株式会社谷澤総合鑑定所)が出した確認書には、「依頼者指示に基づき…考慮外とした鑑定評価を行う」と明記。山中智子議員は、最初から「IRを考慮外」として安く鑑定する目的で市が動いていたことは明らかだと指摘していました。
従来の答弁を繰り返すが…
6日の大阪市議会建設港湾委員会で日本共産党の井上浩議員は、3月14日の指摘に対し、いまだ市からの見解が示されていないと追及。港湾局は「『IRを考慮外』として正式決定したのは10月中旬」と、従来の答弁を繰り返しました。
これに井上氏は、「疑惑まみれのカジノ・IRはきっぱりやめるべき」と主張。今回のメール公開で、疑惑は深まるばかりです。
(大阪民主新報、2023年7月23日号より)