「充実努める」一転、廃止案
市民病院は命の砦 藤井寺 存続求め市民ら運動
藤井寺市(岡田一樹市長)が、市立藤井寺市民病院(道明寺2丁目)を来年3月で廃院しようとしている問題で市民が存続を求めて声を上げています。地元区長が呼び掛け、廃院方針撤回を求めた請願署名は1週間で2500人以上集まり、19日には地元区長有志6人が連名で、9月議会に提出された病院廃止条例案の撤回を市長らに申し入れました。
中核的な公立病院なのに
70年以上も地域医療に貢献
同病院は1950年、道明寺村の国保直営道明寺病院として誕生。町村合併や市制施行で市立藤井寺市民病院に改称し、70年以上地域医療に貢献してきました。
現在、内科、外科、小児科、消化器外科、乳腺外科、放射線科など9つの診療科があり、入院病床数は98床。病院のホームページによると、整形外科では関節疾患の手術やリウマチ疾患を得意とし、小児科も入院可能。土曜診療や検査、在宅医療、急性期医療も実施し、新型コロナ対応、発熱外来設置なども行ってきました。
非公開の密室審議で廃院へ
2019年に厚労省の地域医療構想で、同病院は統合再編の対象になりましたが、岡田市長は「市域の中核的な公立病院として必要性を訴え、地域医療の一層の充実に努める」と議会で答弁していました。
ところが市が7月に公表した基本方針案では、病院の老朽化や医師の減少とともに、今年度は8億5千万円の赤字が見込まれたことなどを挙げ、経営継続が困難とし、来年3月末で廃院することを示しました。
方針案は、市が設置した「市民病院あり方検討委員会」が、今年6月に出した答申に基づいたものですが、5回の委員会のうち2回は、「市民に無用の憶測や混乱を生じさせるおそれがある」として非公開で行われました。
湧き上がる廃院反対の声
パブコメも説明会も反対が
基本方針案へのパブリックコメントはわずか3週間、意見提出は1人1回限りと制限される中でも、「廃院ありきでなく、市民の要望に沿った市民病院の存続を」など、病院存続と充実を求める声が多数寄せられました。8月に4回実施された市民説明会にも、延べ225人が参加。方針案に反対する声が集中しました。
市民説明会が行われていたさなかの8月中旬、岡田市長がSNSに「今年度の閉院はやむを得ない」と投稿したことに対しても、市民不在だと批判が相次ぎました。
諮問委員会も公立病院でと
病院の経営悪化は20年から深刻化し、19年には20人いた医師が現在12人に。内科の外来初診が受け付けられなくなり、98病床の利用率は19%にとどまっています。
市が諮問した「市民病院改革プラン評価委員会」は昨年1月の答申で、「より一層健全な病院事業運営に努め」るよう提言。審議のまとめで星田四朗委員長(八尾市立病院総長)は、「公立病院として引き続き地域でしっかり根付いて、市民に必要な医療を提供し続ける」よう望み、「市は病院と一緒に検討を行う体制整備を。大きな方向性を病院と共有していくのは首長の大きな役割」と指摘していました。
「あの提言を受けて対策を講じていたら、拙速な廃院方針にはならなかったはず」と、「みんなでつくろう 住みよい藤井寺!」事務局の源理恵さんは言います。
市民の一言のアピール運動
同会は、第3回市民病院あり方検討委員会(3月)で民間活力導入の方向性が示されたことを受け、市直営の病院存続と充実を求めアピール運動を展開。「わたしのひとこと」には600人以上の市民から、「市民病院の経営改善に市長自身がどこまで努力をしてきたのか全くみえない」「命に直結する部分は合理化してはならない」「独居で不安なことばかり。せめて病院の不安はせずに生活したい」などの声が寄せられました。
病院周辺の道明寺地区会区長が呼び掛けた廃院方針撤回の請願署名でも、「病院経営、行政の病院管理の甘さが今日の状況を生んだ。不作為のツケを地域住民に転嫁することは許されない」と痛烈に批判しています。
市長に政治決断迫る維新
日本共産党市議団が一貫して公設公営での病院存続を求める一方、維新議員は「公設公営にこだわる必要がない」と繰り返し主張し、「最後は市長の政治決断」と迫りました。
命より観光かの声が上がる
市が今年度から病院予算への繰り出しを削減する一方、関西・大阪万博の「波及効果」を当て込んで、市立生涯学習センター「アイセルシュラホール」を観光拠点にするための改築に約2億円予算をかけることにも、「命より観光か」の声が上がっています。
岡田市長は9月議会(27日まで)に、「市民病院の廃止条例案」を提出しました。
19日、道明寺地区会区長有志が連名で市長や各会派に条例案撤回を求めた要請書では、「市民病院は、地域住民にとって命の砦ともいうべき公共施設」と指摘。市民病院の経営改善を図るため、医師確保により病床利用率の向上、患者数増加を図るなどの施策推進を求めています。
市民の財産は守り抜くべき
「みんなでつくろう 住みよい藤井寺!」代表の西條孝子さんは言います。
「藤井寺市民病院に小児科ができた時も、市民の願いに応えてのものでした。経営悪化や医師不足を深刻にしたのは、市長自らが必要な手を打ってこなかったことが大きな原因。諦めたら二度と市民病院はつくれない。市民の財産として、絶対に守り抜くべきです」
(大阪民主新報、2023年9月24日号より)