おおさかナウ

2023年09月16日

日本共産党大阪府委員会
大阪・関西万博の中止を求める
たつみコータロー衆院近畿比例予定候補

 

懇談会で「声明」を報告

 日本共産党大阪府委員会は8日、8月30日に発表した「2025年大阪・関西万博の中止を求める声明」について、地方議員や候補者らを対象にした懇談会をオンラインで開き、たつみコータロー元参院議員(党府カジノ万博PT責任者、衆院近畿比例候補)が声明の内容や中止を求める理由などを詳しく報告しました。

1)なぜ今、中止を求める声明か?
――命や安全が守られない

 日本共産党大阪府委員会は2021年10月にアピール「カジノはNO! 夢洲での万博開催は見直し、いのち・暮らし最優先の大阪を」を発表し、「夢洲開催」の中止をはじめ万博の抜本的な見直しを求めました。今回の声明では、きっぱりと「中止」を求めています。
 たつみ氏は声明発表の記者会見でも、「なぜ今のタイミングなのか」との質問が出たことに触れ、「単刀直入に言って、命と安全を守るためだ」と強調しました。
 海外パビリオンの建設申請などスケジュールが深刻に遅れ、本来なら開催できない状況にある中で、政府や万博協会が通常ではないやり方で万博を強行しようとしていると指摘。その結果、建設労働者などの命と安全が守られない事態になっており、「これが中止を求めている一番のポイントだ」と語りました。

残業上限規制の適用除外を迫る

 たつみ氏が第1に挙げたのは、建設労働者に対する時間外労働の上限規制の適用除外を検討するよう万博協会が政府に申し入れた問題。「働き方改革関連法」に基づいて建設労働者にも時間外労働の上限規制が適用されるのは来年4月からです。時間外労働は原則月45時間かつ年360時間で、労使間の合意があっても年720時間が上限です。
 たつみ氏は、予定通り上限規制が適用されたとしても、サービス残業や長時間労働が押し付けられるのは必至だと指摘。声明でも、21年の東京オリンピック・パラリンピックで新国立競技場建設に携わった現場監督が過労自殺し、工期を前倒しにした新名神の工事でも死亡事故が相次いでいることに触れたとし、「過大な負担を押し付けることで、労働者の命と安全が守られない」と述べました。

現行法を守れば建設ができない

 さらに万博を強行するために、万博への日本貿易保険の適用や大阪府の建設許可の特例短縮などの優遇策を取ろうとしていると指摘しました。
 日本貿易保険は従来の3分の1の保険料で、代金がもらえなかった場合は9~10割を補填。夢洲での難工事で費用の高騰が想定される中、参加国がゼネコンに工事費を払えなくなる事態に備えるものです。日本貿易保険は政府100%出資で、保険の支払いは国民の税金で負担することになります。
 たつみ氏は「現行法を守っていれば建設できない事態だ。労働者の命を犠牲にしなければならないような事業は破綻している。だからこそ万博の中止を求めるに至った」と述べました。

2)事業費の上振れはどれくらい?
――当初から4100億円も

オンライン懇談会で報告する、たつみ氏

 たつみ氏が中止を求める第2の理由に挙げたのは、夢洲のインフラ整備費用の大幅な上振れ。当初は約3400億円だったものが、今では7500億円と、4100億円も膨れ上がっています(表)。万博会場建設費用は当初の1250億円から1800億円に。
 たつみ氏は「これで止まるわけではなく、さらに膨らむだろう。いま中止することが費用負担の面からも、国民や市民、府民の負担の面からもいい。いま中止したほうが、傷が浅いということだ」と話しました。
 カジノに反対する大阪連絡会の省庁交渉(6日)で、万博の総事業費をただしたのに対し、内閣府や経産省側は「実は分からない」と答えたことを紹介。「万博関連」を口実にした道路建設などの事業が大阪だけなく、中国地方や四国でも進められていることも明らかにしました。

3)なぜ事業費が膨れ上がるのか?
――有害物質が残り軟弱地盤の夢洲

 第3の理由は夢洲の問題です。
 「これだけ工事費が膨れ上がる要因は、夢洲だということ」と、たつみ氏。大阪湾のしゅんせつ土砂や建設残土、焼却灰などを埋め立てた夢洲の土壌にはPCBやダイオキシン、ヒ素などの有毒物質が残されていると指摘。PCBを含む泥を袋に詰めて水を抜いた後、その袋を万博の駐車場用地に埋め込む計画であることも明らかにしました。
 万博用地に隣接するカジノ用地の土壌対策で、大阪市は788億円の公費投入を決定。万博終了後、万博跡地にも同額の土壌対策費用が必要になります。夢洲は軟弱地盤のため、万博の建築物には深さ55㍍のくい打ちが必要とされるなど、難工事が必至です(カジノ用地のくい打ちは深さ80㍍)。

4)開催中止なら補償はどうなる?
――いま決めれば傷は浅い

夢洲の万博会場予定地(さきしまコスモタワー展望台より8月27日撮影)

 たつみ氏は、声明では触れていない問題として、万博を中止した場合の補償について説明しました。中止を求めるのは日本政府で、博覧会国際事務局(BIE)総会の3分の2の賛成があれば、中止が議決されます。
 BIEの一般規則(37~39条)に中止の規定があり、中止となった場合は参加国に妥当性のある費用を補償する必要があるとしています(自然災害などの不可抗力による中止には、補償の必要はない)。
 補償の具体的な項目では、①各国が費やした開催までの諸経費に対する補償②BIEに対する補償(入場料収入の2%)③パビリオン建設の契約中止に関する補償があり、①と②については、中止を決定した時期によって補償上限額が示されています。
 たつみ氏は、来年4月12日までに中止を決めれば、上限額は日本円で325億円だが、同13日以降に中止を決めた場合は780億円になると指摘しました。「いま中止を決定したほうが傷は浅い。いまの段階では実際にパビリオン建設を契約している国は少ないため、当然補償する必要がない。早く中止を決定したほうが、補償費用も少なくなる」と述べました。

夢洲のインフラ整備・関連開発で大きな上振れ

  当初額   上振れ額
万博会場建設 1250億円 大屋根整備など 600億円
夢洲インフラ整備 1000億円 カジノ予定地の土壌対策 788億円
万博跡地の土壌対策 788億円
大阪メトロ延伸の地中障害物撤去など 96億円
夢洲駅増強や周辺道路の拡幅 33億円
夢洲駅の改札前広場や階段の整備 30億円
淀川左岸線2期事業 1162億円 工法見直しなど 1795億円
当初額計 約3400億円 上振れ額計 約4100億円
    当初額と上振れの合計 約7500億円

(大阪民主新報、2023年9月17日号より)

 

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