万博・カジノは止められる
日本共産党大阪府委がシンポ
建設費上振れ、夢洲地盤など多角的に討論
日本共産党大阪府委員会(柳利昭委員長)が10月28日、「ストップ万博・カジノシンポジウム」を開きました。2025年大阪・関西万博の会場建設費が当初の1・9倍、2350億円に膨れ上がることに怒りや疑問の声が広がる中、大阪市都島区内の会場には250人が参加。ユーチューブのライブ配信の視聴回数は3200回に上りました。
たつみコータロー氏が基調講演
党府カジノ万博プロジェクトチーム(PT)責任者の、たつみコータロー元参院議員(衆院近畿比例候補)が、8月末に出した「2025年大阪・関西万博の中止を求める声明」の先駆的な意義に触れながら基調講演しました(基調講演の大要はこちら)。
たつみ氏は、世論調査で万博への批判が高まっている背景に、「カジノのための万博」ということが見えてきたからだと指摘。当初、万博の候補地ではなかった大阪湾の埋め立て地、夢洲(ゆめしま)が会場になったのは、国策である万博を夢洲に誘致すればカジノのためのインフラ整備ができるという狙いがあったと述べました。
さらに万博・カジノ問題を巡って維新の会の本質が浮き彫りになっていると強調。日本政府が万博中止を決断して申請すれば、博覧会国際事務局(BIE)総会の3分の2以上の賛成で中止が決まることを示し、「世論を高め、政治を変えていけば、大阪府市と日本政府の態度を変え、万博を中止させることができる」と力を込めました。
夢洲のカジノ用地の不動産鑑定疑惑のスクープを連打してきた「しんぶん赤旗」日曜版の本田祐典記者が講演。疑惑の構図を示すとともに、スクープの原動力は党議員団や専門家、市民運動と力を合わせた取材にあると語りました。
シンポジウムは清水ただし前衆院議員(衆院近畿比例・大阪4区重複候補)が進行。カジノ誘致や夢洲の土壌問題、大阪市政の現状などについて静岡大学の鳥畑与一教授、おおさか市民ネットワークの藤永延代代表、阪南大学の桜田照雄教授、日本共産党の山中智子大阪市議団長が多角的に報告。参加者の疑問にも答えながら討論しました。
カジノ訴訟に活路
最後のあいさつで、たつみ氏は、係争中のカジノ格安賃料差し止め訴訟の意義に言及。この間の政府交渉で国交省が、賃料の不正が明らかになれば、カジノ誘致計画の認定を取り消すと明言していると強調し、「ここに活路がある。万博もカジノも止めることができる。維新政治を大阪からなくし、市民が主人公の政治を取り戻すたたかいをやっていきたい」と語りました。
来るべき総選挙で共産党勝利を
たつみ氏は「カジノと万博の問題を国会で追及してきたのが私と清水前衆院議員。来るべき総選挙で、この2人を含む比例代表で日本共産党議員を送り出していただければ、国会で取り上げ、皆さんの声を届けて頑張る」と決意を語りました。
パネリスト4氏の発言(要旨)
日本共産党大阪府委員会が10月28日に開いた「ストップ万博・カジノシンポジウム」で報告した4氏の発言(要旨)を紹介します。
ギャンブルに社会を預けるのか
静岡大学教授 鳥畑与一さん
万博をしくじれば、大阪IRも駄目になるから、大阪IRの成功のために万博は何としても無理をして頑張るという思う人がまだいるとすれば、それは違います。万博が崖っぷちにあるなら、落ちた先には大阪IRという〝泥沼〟があります。
大阪府市とIR事業者が実施協定を結ぶ時(9月)に、IR事業者は「事業前提条件が成就していない」と言い、契約の解除権を無理やり3年延ばしました。いくら国が「優れている」として大阪の誘致計画を認定したとしても、ビジネスとして見込みがないのです。
なぜ見込みがないのか。大阪IRの前提は、日本でもマカオ並みにもうかること。マカオでお金を落とす中国の金持ちが日本に来るのではないかということでした。
ところが今、マカオのVIP市場は崩壊状態。昨年末にコロナ対応の規制はなくなりましたが、カジノのもうけは3割減り、VIP客が落とすお金は7割減です。中国は21年からギャンブラー規制を強めているからです。
マカオも「脱中国」「脱VIPギャンブラー」で、カジノ以外のエンターテインメントを充実する方針を出しています。1兆円を投資してハコモノを造り、客をギャンブル漬けにするようなカジノは衰退産業。今広がっているのはオンラインのギャンブルです。
依存症になる人が1~2%だから問題ないというのは間違いです。ギャンブルは、のめり込んで大負けし、家庭崩壊に追い込まれる人を何千人もつくり出します。このビジネスに、30年も50年も地域社会を預けるのですか。そんな馬鹿なことには、万博と一緒にさようならをしましょう。
収支も明らかにできないカジノ
阪南大学教授 桜田照雄さん
カジノ実施法は、カジノの認定の取り消しについて定めています。基本方針に適合しなければ認定を取り消すというもので、基本方針には「要求基準」と「評価基準」があります。
特定複合観光区域はカジノ施設と、付随する1~5号施設の2つに分かれています。「要求基準」はカジノ施設を省いているので、国が審査したのは付随施設。その適合性がどう判断されたか、検証していないことも大きな問題です。
私たちの運動は役割を果たしてきました。
大阪カジノ誘致計画を認定するなという署名が15万4千筆集まり、それを基に国との交渉を重ねてきました。その結果、国は認定に当たって7つの付帯条件を付けました。私たちが土壌問題の専門家が審査委員会にいないと指摘したことで、専門家を加えました。7つの付帯条件には専門家の意見も反映されています。
カジノ施設について「評価基準」は、肝心要の来訪者数は十分な評価はできないとしています。カジノがもうかるのかどうか、審査委員会は確信が持てないというのです。
大阪カジノ計画は740億円の税収があると想定しています。逆算すると年間の粗利益は4933億円。それが本当に確保できるのかと聞いても国は無視し、業者も言わない。5千500億円を融資する銀行団も、カジノ事業の収支見込みを一切明らかにしません。まっとうな実業家は「事業計画の合理性を判断しない計画に、なぜゴーサインを出すのか」と批判しています。
カジノ格安賃料差し止め訴訟で、さまざまな法律の抜け道を許さない力は、住民の運動にあります。
夢洲は「負の遺産」などではない
おおさか市民ネットワーク代表 藤永延代さん
松井一郎前大阪市長や吉村洋文知事が夢洲を「負の遺産」と言うことに、私は怒っています。夢洲は埋め立て途中で、税金がたくさん注ぎ込まれている市民の資産です。
自然災害が起これば、たくさんの災害ごみが出ます。自治体はどこで処分しようかと悩んでいます。大都市・大阪で自前の再処分場を持っているのは素晴らしいことで、これを延命させるのが行政のトップの仕事です。埋め立て地を無理やりやめさせて、万博やカジノのための開発をするのは、間違っています。
1800年前の大阪平野は、上町台地以外は海の中でした。大阪湾を埋め立てて造った夢洲は軟弱地盤。「液状化」どころか「液状態」で、地盤沈下するのは当たり前です。「液状化」といいますが、私が情報公開請求したところ、過去30年間で4・7㍍地盤沈下していることが分かりました。2022年には沈下の測定管がどこかへ行ってしまい、測れなくなっています。
夢洲1区はごみの焼却灰などが1800万㌧、ダイオキシンなどの有害物質を含むものだけで860万㌧入っています。立ち入り禁止でしたが、万博の会場にします。夢洲2区の万博会場と、夢洲3区のカジノ予定地は産廃を埋め立てています。
万博のためのインフラ整備費用は1129億円。万博は国の事業なのに、大阪市はその7割に近い800億円も出しています。なぜ勝手に出すのでしょう。
夢洲1区には、PCBを含む泥を入れた袋が1万袋も積んであります。その上に土をかぶせてコンクリートを貼り、万博の駐車場にします。こんな危険なことは絶対やめないといけません。
巨大開発の失敗を繰り返すのか
日本共産党大阪市議団長 山中智子さん
夢洲は、維新やメディアが言うような「負の遺産」ではなく、大阪市民にとって大切なごみの最終処分場。あそこがなくなれば、家庭のごみの行き場さえなくなり、ごみ収集が有料化されていくということを、声を大にして伝えたいと思います。
夢洲にはコンテナふ頭もあり、物流の拠点として機能しています。カジノ事業者は実施協定を結びつつ、解除権を3年間延長したことで、その間は、大阪港湾局は、用地を物流業者に売ることも貸すこともできません。
大阪市が1990年代に進めた巨大開発は全部失敗し、借金のつけが市民にのしかかり、職員の数も給料も減らされました。ただ、当時の借金返しは終わりました。これから市民のためにお金が使えるというときに、また巨大開発で失敗し、市民に大きな借金を負わせるということを繰り返すのでしょうか。
議会で私が質問すると、副市長は「財政調整基金がある」と答えました。市はコロナの中でも市民のためにやるべきことをやらず、2400億円ものお金を貯め込んでいます。そのお金を夢洲に捨てることは許せません。
松井一郎前市長は「カジノに税金は使わない」と言いましたが、IR推進局と万博推進局には府市で300人の職員がいます。人件費は税金。一方で市民のために必要な職員は減らされています。
解除権を3年延長してでもカジノ事業者を引き留めるのは、橋下徹氏や松井氏が言い出したことを勝手にやめるわけにいかないからです。万博・カジノで市民の皆さんと運動を大きく広げながら、力をつけて、市政を市民の手に取り戻すために頑張ります。
(大阪民主新報、2023年11月5日号より)