万博・カジノは止められる
日本共産党大阪府委がシンポ
たつみ氏の基調講演(大要)
日本共産党大阪府員会が10月28日に大阪市都島区内で開いた「ストップ万博・カジノシンポジウム」で、同党府カジノ万博プロジェクトチーム(PT)責任者の、たつみコータロー元参院議員(衆院近畿比例候補)が行った基調講演(大要)を紹介します。
万博中止の世論高め政府に決断を迫ろう
日本共産党府委員会 カジノ万博PT責任者 たつみ氏の基調講演(大要)
党の声明の正しさがはっきりと
日本共産党大阪府委員会は8月30日に、万博中止を求める声明を出しました。
万博の延期や場所の変更ではなく、きっぱり中止です。記者会見でメディアからは、「中止は言い過ぎではないのか」「なぜこの時期に出したのか」という質問もありました。
しかし、声明を出してから2カ月、万博開催に向けての動きを見れば、私たちの中止要請が正しかったことが、はっきりしたと思います。
違法な行為が必要な事業に
パビリオン建設の遅れを取り戻そうと、この間政府で議論されてきたのは、来年4月から始まる建設業界への残業規制の適用除外でした。これはつまり、現行法を守っていれば万博はできないということです。違法な行為をしなければ事業が進められない万博は、破綻しています。
残業規制は過労死をなくすためのもの。取り払えということは、過労死を出しても仕方がないという立場に立つということです。今回の万博のテーマは「命輝く」。それならば、万博を中止することが何よりも必要です。
想定が甘かったでは通用しない
2倍近い額にまで上振れし
そして会場建設費です。
当初1250億円だったのが、1・9倍の2350億円にまで膨れ上がりました。誰も合意していません。「想定が甘かった」では通用しないと思います。
私たち庶民が、「今の物価高は想定していなかった」と言えば、給料や年金を上げてくれるでしょうか。あまりにもひどい費用の膨れ上がりです。
臨時国会が始まり、岸田文雄首相は「建設の遅れなど、進捗状況が厳しくなっていることに強い危機感を持って、オールジャパンで進めていく」と述べました。私は、その危機感のなさにこそ、危機感を覚えます。
「共同通信」の10月の世論調査で費用の増大について「納得できない」が75・6%、「納得できる」が23・1%。「毎日」の調査(10月14、15日実施)では、万博の是非について「規模を縮小して、費用を削減すべきだ」が42%、「やめるべきだ」が35%で、「縮小」「中止」が8割に上ります。
万博の夢洲開催はカジノのため
万博への批判がなぜここまで高まっているのか。
今この時代にやるべきなのかという、万博そのものへの批判と同時に、「カジノのための万博」ということが見えてきたからではないでしょうか。
振り返ると、2014年に大阪府市がカジノ・IR(統合型リゾート)を夢洲に誘致する方針を決めました。
15年末に当時の安倍晋三首相と菅義偉官房長官、橋下徹元大阪市長、松井一郎知事が忘年会を行いました。松井氏は著書『政治家の喧嘩力』で、「総理にお酒を注ぎながら、一生懸命、持論を展開した」と書いています。ここで、政府として万博を誘致すると決めたという話です。
大阪では万博基本構想検討委員会が開かれていましたが、夢洲は万博の候補地に入っていませんでした。
ところが16年、松井知事のトップダウンで夢洲に決められました。時系列でみると、カジノのために万博を誘致したということです。
税金を使ってインフラ整備
なぜか。カジノは民間事業で、夢洲にはインフラは何もありません。民間事業のために税金を使ってインフラ整備はできません。国策である万博を夢洲に誘致できれば、カジノのためにインフラ整備が税金でできる。こう踏んだからこそ、夢洲を万博会場に決めたということです。
「古い政治」と何ら変わらぬ維新
この間、万博・カジノを巡って、維新の会の本質が浮き彫りになっています。大阪で維新の会が勢力を伸ばしてきた一因は、「古い政治を打破する」ということだと思います。「古い政治」とは、日本共産党を除く「オール与党」政治です。
80~90年年代にテクノポート大阪構想で、湾岸地域にATC(アジア太平洋トレードセンター)やWTC(ワールドトレードセンター)、りんくうゲートタワービルなどの大型開発に巨額の税金を投じて大失敗しました。そういう「古い政治を打破する」と言って出てきたのが橋下氏であり、維新の会です。
しかし今、維新の会がやっていることは、その古い政治と何ら変わりません。維新の会は「大阪の成長を止めるな」と言ってきましたが、これからの大阪の衰退をつくるのが、万博・カジノと言わなければなりません。
最近では「朝日」(10月23日付)が社説で「万博をめぐる混乱は、動機の不純さやあいまいさと無縁ではなかろう」と指摘するほどです。
協会副会長の知事は説明を
吉村洋文知事は10月27日、費用の膨張について万博協会から説明を受けましたが、吉村氏は万博協会の副会長です。なぜこれだけ膨れ上がったのか、府民や市民に説明する立場にあります。
いま中止の決断すれば傷は浅い
万博は止められます。経産省の万博推進室に改めて確認しました。日本政府が中止を決断して申請すれば、博覧会国際事務局(BIE)総会の3分の2以上の賛成で中止が決定されます。
決断する主体は日本政府ですが、開催地の大阪府市が「やめよ」と言えば、政府が「やろう」ということにはならないでしょう。世論を高め、政治を変えていけば、大阪府市と日本政府の態度を変え、万博を中止させることができます。
日本の補償金480億円増える
BIEの規定では、来年4月12日までに中止を決定すれば、日本政府がBIEに払う補償金は350億円です。
4月13日以降に決断すると830億円。いまやめた方が、傷は浅いのです。
会場建設費の膨張も、これで済むとは限りません。ここで中止の決断を求めることが大事です。皆さんと一緒に、市民の力で万博をストップさせるため、日本共産党も頑張る決意です。
(大阪民主新報、2023年11月5日号より)