万博・カジノはきっぱり中止
市民のための大阪市に転換を
日本共産党大阪市議団
秋の市政懇談会
2022年度大阪市一般会計決算などを審議する市議会が9月15日から12月14日まで開かれています。日本共産党大阪市議会議員団が10月24日、大阪市役所内で開いた「秋の市政懇談会」で山中智子団長が、市議会の動向や維新市政の現状について報告しました。大要を紹介します。
山中智子団長の報告
議会に生まれる翼賛体制の危険
4月の統一地方選で維新が単独過半数を占めました。
直後の5月議会で、維新は「身を切る改革」だとして、議員定数を81から一挙に70に削減する条例案を提出しました。公明党も自民党も「民意だから」といって条例案に賛成するなど、議会は翼賛体制が生まれる危険性があります。
一方、維新、公明、自民の幹事長会議で、いまの任期中に議員総数の半分強、45人が海外出張に行くことを確認しました。来年1月にはIR(カジノを核とする統合型リゾート)の視察で、マニラや韓国のカンウォンランドに行く計画です(公明党は辞退)。
財政調整基金を大きく貯め込み
9月28日の本会議で一般会計補正予算を可決しました。
主な内容では、物価高騰対応で社会福祉施設や医療機関などへの支援金があります。総額32億8千万円ですが、全額国費です。
保育人材確保事業(7億2千万円)は、5~7年目など節目の年を迎える保育士に一時金を支給しますが、ことし限り。人材確保や定着には、給料の大幅な引き上げなど抜本的な対策が急務です。
0~2歳児の保育料無償化(来年9月)、塾代助成の所得制限撤廃(来年10月)の準備経費も盛り込まれています。
万博関連では、「空飛ぶクルマ」の会場外ポート整備などがあります。私たちは万博関連事業には反対ですが、支援金などが一体の補正予算案には賛成しました。
この補正を終えた時点で、財政調整基金(23年度末見込み)は2460億円。20年度決算(1664億円)から796億円も増えています。
ほとんど国からのお金だけでコロナ対策をしながら、財政調整基金を増やしている大阪市のような自治体は、他にありません。
世論などを力に前向きな変化も
世論と運動で、少し前向きな変化が生まれているものもあります。
市は自衛隊への名簿提供を、20年度に閲覧からデータ提供に変えました。翌年から提供を希望しない場合の「除外申出」制度を始めていますが、まだまだ知られていません。市民局は周知徹底が必要だと認めており、各区役所に向けて「もっと知らせるべき」と求めていきましょう。
地域活動協議会の補助金は橋下市政当時に50%に削減され、残りの50%は地域が自主財源をつくれということになりました。批判が起こる中、今は補助金が75%で、自主財源が25%。ただ、行事のたびに領収書を100%付けなければ75%の補助金が出ないなど、煩雑な実務を押し付けています。
これにも怒りが広がり、さすがの維新も昨年の予算議会で「100%補助にせよ」と主張しましたが、松井一郎前市長は踏み切りませんでした。橋下徹氏がやったことは変えられないのです。100%補助の実現へ声を上げていくことが必要です。
「府市一元化」で地方自治が破壊
11年続いている維新市政の下で、大阪市の異常さがますます際立っています。
20年の住民投票で「大阪市存続」が決まったのに、「府市一元化」の名で地方自治を壊す動きが加速しています。
府市共同設置で副首都推進局、万博推進局、IR推進局、大阪都市計画局、大阪港湾局ができました。市の財政局長や経済局長は府の職員。市役所内では「お金と成長戦略、大きな街づくりを府に握られたら、大阪市は駄目だ」との声も出ています。
大阪市立大学と府立大学を統合した「公立大学大阪」の所管は、市が経済戦略局、府は府民文化部でしたが、副首都推進局に一元化されました。
副首都推進本部会議では、いまだに「副首都ビジョン」の議論を続けています。吉村洋文知事は、「副首都を目指す上で、統治機構に問題があるなら、住民投票の結果はゼロベースで考えればいい」と公言。3度目の住民投票さえちらつかせているのは、許せません。
市職員の間には「物が言えない」「言っても仕方がない」という思いが募る一方、特別顧問らによる「友達政治」で、思い付きと暴走の市政に拍車がかかっています。
橋下市政時代に始まった「市政改革プラン」は今、「3・1」というバージョンですが、その中間評価では32件が「目標達成」。4件が「未達成」で、幼稚園民営化や職員削減が「不十分」とされており、今後の動きに警戒が必要です。
維新の「改革」を手放しで礼賛
6月の副首都本部会議では、「大阪の改革評価」なるものが議題になりました。報告した特別顧問の上山信一氏は、橋下知事以来15年間の「維新改革」を手放しで礼賛しています。
副首都推進本部による有識者ヒアリングでは、「大阪の改革が府民・市民に何をもたらしたのか。自身の暮らしは良くなったのか。自身の職場、仕事は良くなったのか。残念ながらその成果はまだ見えない」などの意見が寄せられました。
ところが上山氏は、これらを無視して「次は万博とIRだ」と叫んでいます。こんなものが大阪の将来を決める会議体であってはなりません。
副首都推進局やIR推進局など府市共同設置の局では職員が増えているのに、区役所や市民生活を支える職種は、慢性的な職員不足です。
松井前市長は「カジノに税金は使わない」と言いましたが、IR推進局の職員の給料は税金。こん な無駄遣いは今すぐやめ、その職員を区役所などに配置し、市民のための仕事をするべきです。
万博・カジノへ無理に突き進む
学校統廃合や少人数学級の否定など、子どもと教育も引き続き大きな被害を受けています。片や大阪市が今熱中しているのが、万博とカジノ。万博は会場建設費の上振れの繰り返し、工期の遅れなど、いくら難問が噴出しようが無理に無理を重ねて突き進んでいます。
高速道路・淀川左岸線2期の道路は、万博会場へのシャトルバスを走らせるために工事を急ぎましたが、工法変更で工事が遅れ、事業費も増大。万博には間に合わないので、一部区間に50億円かけて仮設道路を造りますが、半年間の万博が終われば撤去です。
万博の工事を最優先するために、住吉市民病院の跡地に造る大阪公立大学の病院の建設は後回しです。目玉の「空飛ぶクルマ」は実用化できなくなりましたが、「ライドシェア」の議論が始まるなど、命や安全・安心の軽視は異常です。
カジノについては事業者との間で「実施協定」が結ばれました。しかしカジノ事業者は「最終的な事業実施判断を行うことができる状況にない」と主張し、違約金なしで事業者が撤退できる解除権を3年延長しました。
このままでは、土壌対策の途中でカジノ事業者が撤退し、大阪市は土壌対策費用を請求されるということも起こりかねません。万博もカジノも早くやめさせて、これ以上傷が大きくならないようにしていかなければなりません。
大きく変化した世論さらに前へ
今、世論も大きく変化しています。
10月の「毎日」の世論調査で、万博の会場建設費の上振れについて「規模を縮小して費用を削減すべき」が42%、「万博をやめるべき」が35%。夢洲開発にこれ以上お金を注ぐべきではないというのが、市民の声になり、推進派を追い詰めています。
大阪の政治、大阪市の財政や市民生活の将来のためにも、万博とカジノは絶対やらせてはなりません。世論をさらに大きく変えて、夢洲開発をストップさせ、政令市である大阪市が持つ大きな力を市民のために使わせる方向に変えてきましょう。
(大阪民主新報、2023年11月12日号より)