おおさかナウ

2023年12月02日

独自施策を何もしていないのは大阪市だけ
少人数学級に背向ける維新市政
大阪市議会決算特別委

 多くの政令市が国の制度に上乗せして、少人数学級を実施しているのに対し、大阪市政は何の独自施策も行っていないことが、市議会での日本共産党の質問で浮き彫りになりました。カジノ誘致や万博開催に突き進み、夢洲開発には巨額の公金を投入する一方、最低限必要な教育環境の整備には背を向ける維新市政の異常な姿が問われています。

山中智子議員「実現へ踏み出すべき」

中学校を含め35人学級早く

少人数学級問題で質問する山中議員=11月9日、大阪市議会決算特別委員会

 2021年3月の法改正で、小学校の学級編成を25年度までに段階的に35人に引き下げることになました。23年度は4年生、24年度は5年生、25年度は6年生が対象。大阪市議会決算特別委員会(11月9日)で日本共産党の山中智子議員は、全国に20ある政令市について、今年度に国基準を超えた少人数学級の実施状況をまとめた資料(表)を示しました。
 それによると、福岡市は今年度から小中学校の全学年で35人学級を実施。小中学校の全学年を35人以下や、32人以下などとしている政令市も多く、すべての市が何らかの独自施策を実施。神戸市は21年3月の法改正以前から35人学級への段階的な引き下げを実施していたので、「まったく何もしていないのは大阪市だけ」(山中氏)です。
 山中氏は、「中学校も含めて大阪市は35人学級をもっと早く実施すべき」と求め、必要な学級数と人件費を問いました。市教委は、学級編成の引き下げや財源の確保は「国の責任」とした上で、今年度に小中学校で35人学級を実施した場合は262学級増で年27億円が必要になる答弁。山中氏は「27億円は市民の理解が得られる金額だ」と述べました。

コロナ禍の経験を生かして

 この日の質問で山中氏は、3年余りのコロナ禍で学校現場はさまざまな対応に追われ、子どもたちも大変な思いをし、教職員や保護者、地域の人々も子どもたちの命と学びを守るために苦労したと指摘。「コロナ禍を通して、また今後も起こりうる感染症に備えて、教育活動にどんなことが生かされているか」とただしました。
 市教委は、「デジタルドリルや共同学習支援ツールなどのICT(情報通信技術)を組み合わせることで、多様な学習形態を実現し、教育活動が充実している」などと答弁。山中氏は、「ICTはあくまでツール。教育活動の根幹は、一人一人の子どもと向き合い、学力だけでなく、その子の喜びやつらさを知り、手を差し伸べることにある。そのことを忘れてはならない」と力説しました。

教育環境の整備こそ必要だ

 山中氏は、コロナ感染が広がり始めたころ、密を避けるために午前と午後の分散登校が実施され、何人かの教職員から「こんなに一人一人の子どもの顔が見えるんだと驚いた」という感想を聞いたことを紹介。少人数学級の早期実現や小学校の体育館へのエアコン設置など、教育環境をきちんと整備することが必要だと訴えました。

国の標準に上乗せする「学級編成基準の弾力的運用」の実施状況(2023年度・政令市)

自治体名 校種 学年 選択制(注1) 概要
札幌市 1年   学年2学級以上で、1学級の平均生徒数が35人を超える学校で35人以下学級
仙台市 5年   35人以下学級
全学年  
さいたま市 1年   研究指定校(注2)において38人以下学級
千葉市 5・6年 38人以下学級
全学年
川崎市 5・6年 研究指定校において35人以下学級(前年度の学級数を維持する場合も対象)
全学年
横浜市 5・6年 研究指定校において35人以下学級(前年度の学級数を維持する場合も対象)
全学年
相模原市 5・6年 研究指定校において35人以下学級(前年度の学級数を維持する場合も対象)
全学年
新潟市 1・2年   32人以下学級
3・4年   32人以下学級(下限23人)
5・6年   35人以下学級(下限25人)
全学年   35人以下学級(下限25人)
静岡市 5・6年 35人以下学級
全学年
浜松市 1~3年 30人以下学級(下限25人)
5・6年 35人以下学級(下限25人)
全学年
名古屋市 1・2年   30人以下学級
5年   35人以下学級
1年  
京都市 3~6年 30人程度学級
1・2年 35人以下学級
3年   30人以下学級
大阪市 国の基準になんら上乗せせず
堺市 5・6年 1学級の平均児童数が38人を超える学年で、38人以下学級
1年 1学級の平均生徒数が38人を超える学年で、38人以下学級
神戸市 (注3)      
岡山市 5・6年 研究指定校において35人以下学級
全学年
広島市 5・6年   35人以下学級
1年  
北九州市 5・6年   35人以下学級
1年   35人以下学級
2・3年
福岡市 5・6年   35人以下学級
全学年  
熊本市 5・6年   35人以下学級
1年  

大阪市議会決算特別委員会(11月9日)での山中智子議員の提出資料(ことし10月の川崎市教育委員会資料から抜粋)を基に作成
(注1)「選択制」欄は、市町村の判断で、少人数学級または少人数指導などの選択的な実施を認めている政令市
(注2)「研究指定校」における実施は、国の加配定数を活用して少人数学級を実施するなど、一部の学校を対象として実施している場合
(注3)神戸市は法改正前から段階的な引き下げを実施

(大阪民主新報、2023年12月3日号より)

 

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