おおさかナウ

2023年12月02日

「大阪万博」と「維新政治」
「潮目の大きな変化」の中で捉えて
日本共産党府副委員長・維新対策委員会責任者わたなべ結氏に聞く

 2025年大阪・関西万博を巡る様相が大きく変化する中、日本共産党としてこの動きをどう捉えているのか、今後の活動などを、党府副委員長・維新対策員会責任者の、わたなべ結さんに聞きました。

「万博中止」声明後の様相変化

わたなべ結氏

 ――8月の「大阪万博中止を求める声明」から3カ月、様相が変わってきましたね。
わたなべ 日本共産党大阪府委員会は8月30日に「2025年大阪・関西万博の中止を求める声明」を記者会見で発表しました。この間に、世論が大きく変化し、メディアの論調も変わりました。
 共同通信が11月に行った世論調査で、「万博は不必要」と答える方が68%にも上り、「維新支持」層でも65%が「不必要」と答えました。「70年万博」の時、「万博に行きたいですか」と問われ、「ぜひ行きたい」「できれば行きたい」がほぼ半数という調査結果がありましたが、設問に「必要か、不要か」を入れたことそのもの、そして3人に2人が「不要」と答えたところに、「大阪万博」を巡る様相の変化が浮き彫りになっています。
 メディアからも「万博混乱の責任 維新も政権も免れぬ」「万博をめぐる混乱は、動機の不純さやあいまいさと無縁ではなかろう」(「朝日」10月23日付)などの批判が相次ぎ、「日刊スポーツ」コラムでは、「大阪万博」を「リニア」「防衛費増強」と並んで「令和の3大バカ査定」の一つか、と述べました。
 維新は批判に追われています。昨年の国会では、「地域経済を活性化させる起爆剤」と述べていた馬場代表は、この臨時国会の代表質問では、ただの一言も「大阪万博」に触れませんでした。

「党大会決議案の目」で捉えて

 ――「潮目の変化」が。
わたなべ そうですね。今、私たちは第29回党大会決議案の全党討論を進めていますが、世界と日本、大阪の情勢もこの「決議案の目」で見ると、大きな「潮目の前向きな変化」が生まれています。
 大阪の維新政治について、決議案は「自民党政治以上の危険な姿をあらわにしている」が、同時に「大阪のたたかいは維新の最大の旗印の『大阪都』を許しておらず、府民の大多数が反対するカジノ(IR)の強行と、大阪・関西万博への巨額の税金投入への批判は維新の最大のアキレス腱となりつつある」と書き込まれました。

「大阪万博」を巡る政治的焦点

日本共産党大阪府委員会が開いた「ストップ万博・カジノシンポジウム」=10月28日、大阪市都島区内

 ――「大阪万博」を巡る焦点はどこにあるのでしょう。
わたなべ 「大阪万博」の中心問題は、府民の暮らしの苦境を尻目に、建設費が1250億円から1850億円、2350億円とどんどん上振れし、それだけでも大阪市民1人当たりにすると1万9千円の負担になること、そしてパビリオン建設(申請)の遅れや撤退で「万国」になりそうにないこと、さらに突貫工事を進めるために、夢洲で働く建設労働者の残業規制を除外しようという動きなど、「命輝く」どころではない進め方も批判の的です。
 中でも、「350億円の木造リング」が、大きな批判の矛先になっています。あの東京スカイツリーでも400億円だったのに、半年限りの建造物になぜこれほど多額を要するのか。「大阪万博」の言い出しっぺである橋下徹氏などは、「清水の舞台のようなもの」と陳腐な反論をしていますが、よほど批判が響いているのでしょう。
 さらに、「日本館」の建設費などで新たに830億円超の国の負担があることも明らかになり、国民の批判はさらに強まるのではないでしょうか。
 維新幹部は「何らかの対策を取らなければ、世論の風当たりは強まる一方だ」(「読売」)と嘆いているようですが、もともと候補地になかった「夢洲」を付け加え、押し付けたのは維新であり、「カジノ」と一体に推進してきました。その責任は重大で、小手先の解決法などありません。
 また「カジノ」「万博」推進の大本には、これを起爆剤に大もうけを考える関西財界戦略があります。
 これまで維新が唱えてきた「二重行政を解消すれば大阪は成長」「身を切る改革」などの「改革ポーズ」のまやかしも、万博問題を通じて、透けて見える局面が生まれています。「府も、大阪市」も一体で暴走し、「成長の起爆剤」どころか、「新たな負の遺産」になりかねないのが「大阪万博」です。「万博は維新が掲げる『身を切る改革』の例外なのか」(「朝日」10月1日社説)との批判も痛烈です。
 「大阪万博」は、文字通り「逆流」と「本流」がぶつかり合う一大舞台になっています。

総選挙巡る政党状況に変化が

 ――万博を巡る大阪の政党動向はどうでしょうか。
わたなべ 「大阪万博」問題は、総選挙を巡る大阪の政治情勢も変えています。
 維新は、馬場幹事長が「第2自民党」を公言しています。「大阪万博」は、もともと安倍・菅両氏に橋下・松井両氏が忘年会をやりながら頼み込んだものですが、「万博」の前途が怪しくなると、「政府頼み」で責任逃れを図っています。
 維新は「万博」で自公政権にすがるために、補正予算案に賛成までしました。
 大阪の自民党は、「刷新本部」もつくり、維新に対抗戦略を取ろうとしてましたが、「大阪万博」問題では維新と一蓮托生、「刷新」する姿は示せません。公明党は総選挙での生き残りを策し、にわかに「大阪万博への懸念」を国会で述べはじめましたが、自民、維新と一緒に「カジノ」「大阪万博」を進めてきたことを府民が忘れているとでも思っているのでしょうか。
 この中で日本共産党は、「大阪万博」問題でいち早く「中止」を打ち出したことはもとより、この十数年、維新の台頭以来、一貫して正面から対峙してきたことが、大きく光る局面を迎えているのではないでしょうか。
 「都」構想を打ち破る上では、党は広範な民主団体、府民・大阪市民の皆さんと「論戦の力」「共同の力」「草の根の力」を発揮してきました。「大阪万博」や「カジノ」問題で、いまその役割をさらに大きく発揮することが求められています。

政治的にも、組織的にも、「大運動」で反転攻勢を

 ――今、全党で「党大会めざす大運動」に奮闘されています。
わたなべ 大阪の日本共産党と民主勢力は、今年の統一地方選挙でも維新による定数削減、大量立候補によって、議席の後退を余儀なくされました。
 この十数年来の、維新の台頭と激しい日本共産党攻撃、野党共闘攻撃は、日本共産党が政治的、組織的に前進する大きな障害物となってきました。
 その中でもブレずに「都」構想を許さず、たたかいを展開してきたことが、今の「潮目の変化」をつくる一つの力になっています。
 自公政権に対しても、「維新政治」に対しても、反転攻勢に転じる時期を迎えています。
 「大阪万博」問題をはじめ、維新政治を徹底して追い詰め、今取り組んでいる「党大会めざす大運動」で党の政治的・組織的力量を伸ばすため、みんなで力を合わせたいと思います。

(大阪民主新報、2023年12月3日号より)

 

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