カジノのための大阪・関西万博
傷浅いうちに中止を
日本共産党衆院比例小選挙区候補ら視察
「大阪・関西万博は今すぐ中止を」と、日本共産党近畿ブロック事務所が昨年12月27日、万博開催地の大阪湾の埋め立て地、夢洲(ゆめしま、大阪市此花区)の現地視察と学習会を行いました。たつみコータロー、堀川あきこ、清水ただし各衆院近畿比例候補と、宮本たけし衆院議員、石川たえ大阪府議、近畿2府4県の衆院小選挙区候補や地方議員ら約50人が参加しました。
松井氏の「思い」で夢洲での開催提案
そもそも相応しくない場所
一行は、大阪府咲洲庁舎(旧WTCビル、同市住之江区)の展望台から夢洲を望みました。カジノに反対する大阪連絡会の中山直和事務局次長が、夢洲本来の目的などを解説。大阪港のしゅんせつ土砂や一般・産業廃棄物などを埋め立ててきたのが夢洲で、PCBなどの有害物質も埋め立てられており、そもそも万博開催に相応しい場所ではないと述べました。
咲州庁舎内での学習会では、府市共同設置の万博推進局の担当者が、資金計画や2350億円に上振れした会場建設費などについて説明。報告した、たつみ氏(党府カジノ万博プロジェクトチーム責任者)は、「万博はカジノのために誘致されたことが非常に大事」と強調し、カジノを核とする統合型リゾート(IR)と万博の夢洲誘致の経緯を報告しました。
安倍首相との忘年会が転機
大阪府市は2014年、夢洲を軸にIR誘致を進める方針を決定。翌15年、府が万博誘致構想の検討会を設置した当時、夢洲は万博会場の候補地ではありませんでした。
大きな転機になったのは同年末、安倍晋三首相、菅義偉官房長官、橋下徹元大阪市長、松井一郎知事(いずれも当時)が顔を合わせた忘年会でした。
松井氏は著書『政治家の喧嘩力』(23年4月)で、この忘年会の席上、「総理にお酒を注ぎながら、一生懸命、持論を展開した」「『菅ちゃん、ちょっとまとめてよ』(安倍氏の)この一言で大阪万博が動き出した」と書いています。
16年、府の万博基本構想検討委員会で松井氏は突然、「自分の思い」として夢洲を提案。17年、夢洲を会場にした万博の開催へ立候補を表明。18年の博覧会国際事務局(BIE)総会で、2025年の万博を大阪で開くことが決まりました。
大阪万博はいまからでも中止できる
カジノ業者が万博に祝辞を
たつみ氏は、大阪IRの事業者として最有力視されていた米カジノ大手が大阪万博決定への祝福メッセージも紹介。同社は「大阪・関西万博は、大阪が掲げる統合型リゾートの計画と密接な関係があります。いずれも建設地は夢洲であり、公共設備やインフラを必然的に共有することになるでしょう」としていました。
惜しみなく金を出すと公言
たつみ氏は、民間企業であるカジノのためにインフラを整備することができないが、国策である万博を利用すれば可能になると指摘。日本維新の会の馬場伸幸代表は昨年9月末の記者会見で、会場建設費の上振れ問題を巡り、「税金の無駄遣いとは言えない。万博からIRというレールが引かれている」「そこは惜しみなくお金を出していく」と公言していることを示しました。
たつみ氏は、過去に万博を中止した事例としてブエノスアイレス(23年、コロナ禍)などを挙げ、「万博は今からでも止められる」と力説。来年4月12日までに中止を決めればBIEへの補償金は349億円だが、13日以降なら835億円に増えるとし、「早く止めた方が傷は浅い。万博推進勢力が中止しないのは、万博をやめればカジノのためのインフラ整備ができないからだ」と断じました。
万博・カジノ 維新のアキレス腱に
近畿2府4県の候補・議員 学習会で交流
学習会では、参加者が各府県の取り組みや問題意識などを交流しました。
賭博国家への道から救おう
宮本衆院議員は、国土交通省がこの日、長崎のIR誘致計画を認定しないと発表したことに触れ、「これで大阪IRをやめさせれば、日本を賭博国家への道から救うことができる。私たちのたたかいは日本を救うたたかいだ」と述べました。
宮本次郎・衆院奈良2区候補は、中小業者から「近畿一円で電線が万博の工事に回されて確保できない。仕方なく愛知県や東京都のメーカーから高い送料で取り寄せている」との訴えが寄せられていると報告。「資材が万博に回り、住宅リフォーム工事も滞るという。調べて追及したい」と語りました。
和歌山県の奥村規子県議は、同県でカジノ計画を頓挫させたことにも触れながら、「関西にも、日本のどこにもカジノを造らせないために、運動を」と発言。万博賛成派は、万博の来場者を和歌山に取り込むことを考えているが、和歌山県が持つ魅力そのものを生かした経済政策こそ必要だと述べました。
海底トンネルに船着き場も
滋賀県の中山和行県議は、関西広域連合長でもある三日月大造県知事が、教育委員会にも諮らず、4歳から高校生までの子どもたちの万博のチケット代を負担することを持ち出したことを紹介。「学校現場は、これまでの校外学習をやめてまで万博に行かなければならない。押し付けはやめるべきと県議会でも質問した」と話しました。
兵庫県の川崎敏美・尼崎市議は、日本維新の会推薦で当選した斎藤元彦県知事が、夢洲への連絡船のための船着き場の整備を打ち出し、維新議員は海底トンネルを掘れと公言していると報告。「尼崎市から万博協会に2人の職員を派遣。イベント・企画を学ぶためというが、周辺自治体が(万博を)支える形をつくることを批判しないといけない」と述べました。
万博・カジノより暮らしを
井坂博文・衆院京都1区候補は、京都では環境を破壊し、財政破綻を招く北陸新幹線の延伸計画が大問題で、京都市長選(1月21日告示・2月4日投開票)でも「北陸新幹線より暮らしを」と訴えていると発言。「大阪・関西万博、カジノよりも暮らしをという位置付けも大事。きょうの学習会を力に頑張りたい」と話しました。
小川陽太・衆院大阪2区候補は、大阪市では夢洲やうめきたなど大型開発の一方で、学校統廃合や街路樹の伐採が強行され、地元平野区では20万平方㍍の市有地が放置されていると告発。「維新市政の下では市民要求は実現しない。万博・カジノの問題が暮らしと直結していることを訴えていきたい」と語りました。
内藤こういち・衆院大阪14区候補は、中小企業の街・八尾市にもダイハツ工業の下請け業者がおり、今回の不正事件による工場停止の影響を受けていると報告。「万博よりも、この状況をなんとかしてほしいという切実な声が寄せられている。万博ではなく、身近な暮らしやなりわいを支える政治へ頑張る」と決意を語りました。
経済再生プラン持つ党こそ
清水氏は、総選挙に向けて万博・カジノ問題が維新のアキレス腱になっていると強調。維新は破綻した大型開発を批判して台頭したが、万博・カジノで大型開発の失敗を繰り返すのがその正体だとし、「経済再生プランを持つ日本共産党を押し出し、維新政治を打ち破る展望を開く総選挙に。近畿の皆さんと心一つに頑張る」と語りました。
学習会で報告する、たつみ氏=2023年12月27日、大阪市住之江区内
(大阪民主新報、2024年1月14日号より)