おおさかナウ

2024年06月01日

大阪市と鑑定業者が談合
夢洲・カジノ用地の格安賃料
市の不当な示唆・誘導 明らか

 カジノを核とする統合型リゾート(IR)の大阪誘致を巡り、「夢洲IR差し止め訴訟」(2022年7月提訴=先行訴訟)と、「カジノ格安賃料差止訴訟」(昨年4月提訴=後行訴訟)の合同住民訴訟の口頭弁論が5月28日、大阪地裁(横田典子裁判長)でありました。後行訴訟の原告側は、大阪市が鑑定業者を誘導して格安賃料に導いた事実を示し、カジノ用地の不動産鑑定の不当性を主張しました。

住民訴訟口頭弁論 原告側が主張

不動産鑑定業者の4社中3社が一致

口頭弁論後の記者会見で、不当鑑定で鑑定業者と鑑定士に懲戒処分を請求したと発表する原告団と弁護団=5月28日、大阪市北区内

 カジノ用地の不動産鑑定では、IRを誘致するにもかかわらず、市が「IR事業を考慮外」という条件を設定し、市の依頼を受けた鑑定業者4社のうち3社の額が一致するなど、不当鑑定の疑惑が指摘されてきました。
 これまで市は、鑑定業者に不当な指示は行っていないと主張。ところが昨年7月、大阪港湾局は、情報公開請求や市議会に対して「不存在」と説明してきた198通のメールを公開しました。
 意見陳述で原告側の弁護団は、隠蔽されていたメールを分析した結果を説明。例えば、夢洲新駅の開業を前提としない不当な鑑定条件で4社が一致するよう、市が、特定の鑑定業者の鑑定方針・内容を他の鑑定業者に送っていることが明らかになっています(別項)。
 弁護団は、国土交通省が定める「不動産鑑定評価基準」に違反する鑑定が数多くあり、その結果、カジノ用地の賃料は「適正な対価」よりも著しく安くなったと指摘。「これ以上、大阪市に損害が発生しないよう、定期借地権設定契約に基づく土地の引き渡しや登記手続きは差し止めを」と主張しました。

不正鑑定は義務違反 鑑定業者らを懲戒請求

 原告側は口頭弁論後、大阪市北区内で開いた記者会見と報告集会で、大阪市の誘導で鑑定業者4社が不正な鑑定を行ったとして、日本不動産研究所(不動研)、arec、大和不動産鑑定、谷澤総合鑑定所の4社と鑑定士10人の懲戒処分を、大阪府不動産鑑定士協会に請求したと発表しました。
 後行訴訟弁護団の長野真一郎団長は、鑑定依頼を受けた業者と鑑定士には、依頼者や他の業者から独立して、公正に鑑定評価をする義務があると指摘。隠蔽されたメールの分析によって、鑑定業者と市ぐるみの不正な手法が判明し、「『複数の公正な鑑定』による適正な賃料だという市の説明は瓦解した」と述べました。

横山市長や松井前市長の責任は重大

 長野氏は、不正な鑑定を行った鑑定業者と鑑定士個人の責任は重く、「大阪市民の貴重な財産を格安賃料で、カジノ業者に賃貸することは決して許されない」と強調。不当鑑定が行われた当時の大阪市の松井一郎前市長や、昨年9月にカジノ事業者と賃貸契約を結んだ横山英幸現市長の責任も問われると述べました。
 原告の一人、藤永延代さん(おおさか市民ネットワーク代表)は、「安い賃料(に基づく賃貸契約は)35年続く。孫子の代まで続くことを見過ごすことはできない。『IR考慮外』などとすることは市のやることではない」と語りました。

夢洲新駅開業を前提としない鑑定条件
不当な鑑定を示すメールのやり取り例

 カジノ用地は、大阪メトロ中央線をコスモスクエア駅から延伸して、夢洲新駅が開業すれば、駅前一等地となることは明らかでしたが、夢洲新駅の開業を「想定上の条件」と設定して評価したため、適正な賃料とはほど遠い格安賃料となっています。

■2019年9月12日 大阪市担当者→鑑定業者4社
 各社が考える鑑定条件などについて、市作成の回答シートに記載して回答を求めるメールを送信。メトロ延伸前の条件(夢洲新駅開業を前提としない鑑定)に〇×で回答する項目があった。
■9月13日15時15分 日本不動産研究所(不動研)→大阪市担当者(A1)
 メトロ延伸前の条件で鑑定評価するに〇を付けて回答
■9月13日19時7分 大阪市担当者→鑑定業者4社
 「IR考慮外」とする条件を指定
■9月17日17時15分 arec→大阪市担当者
 メトロ延伸前の条件で鑑定評価するに〇を付けて回答
■9月17日19時4分 大和鑑定→大阪市担当者
 メトロ延伸前の条件で鑑定評価するに×を付けて回答
■9月19日17時32分 谷澤鑑定→大阪市担当者
 メトロ延伸前の条件で鑑定評価するに×を付けて回答
■9月19日18時22分 大阪市担当者→大阪市契約管財局
 4社の鑑定条件をまとめて報告
 ・4社とも「IR考慮外」とする鑑定条件で一致
 ・メトロ延伸前の鑑定条件は、不動研とarecの2社が〇、
 大和と谷澤の2社は×と不一致
■9月25日19時41分 不動研→大阪市担当者(A2)
 鑑定条件を整理したものをメール。「IR考慮外」とした上で、インフラ整備から「メトロ延伸」を除外
■9月27日13時37分 不動研→大阪市担当者(A3)
 再度、メトロ延伸前の条件に鑑定評価するに〇を付けたものをメール
■9月27日15時34分 大阪市担当者→鑑定業者4社
 鑑定条件を整理したものをメール(不動研のA2、A3と同じ内容)
■11月13日
 4社すべてが「IR考慮外」とし、最寄り駅を夢洲新駅ではなく、海を隔てた咲洲のコスモスクエア駅などと一致させた上で、鑑定賃料額がほぼ一致(3社は土地価格、期待利回り、鑑定評価額が完全一致)の鑑定評価書を大阪市に提出

(大阪民主新報、2024年6月2日号より)

 

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