国連憲章と憲法に基づく平和外交を
平和外交の主役は市民
革新懇・平和委員会・AALA主催シンポ
シンポジウム「国連憲章と憲法を生かした日本外交を―対話かミサイルか!東アジアでの平和構築のために何が必要か」が14日、大阪市中央区内(WEB併用)で開かれました。進歩と革新をめざす大阪の会(大阪革新懇)、大阪平和委員会、大阪アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会(大阪AALA)の3団体が共催しました。
革新懇・平和委員会・AALA主催
開会あいさつで大阪平和委員会会長の西晃弁護士は、この日朝、ニュースで流れた、トランプ前米大統領が演説中に銃撃を受け負傷した事件に触れ、民主主義を壊す暴挙だと批判。国家間の戦争が命や人権を脅かし、世界の分断が深まる現状を取り上げ、平和憲法の精神を発揮し平和を実現するため、共に行動を広げたいと語りました。
シンポジウムでは、立命館大国際関係学部の君島東彦教授と、日本共産党の笠井亮衆院議員がパネリストを務め、関西学院大学教授の冨田宏治氏が進行役を務めました。
冨田氏は、「軍事的抑止力を中心とした自民党の対外政策に代わる新しい平和外交の姿を、具体的なイメージを伴い提起できるよう、共に学び合いたい」と語り、君島氏が「平和外交の担い手はどこにいるのか」と題して発言。笠井氏は日本共産党が4月に発表した「東アジアの平和構築への提言~ASEANと協力して」の内容を報告しました。
両氏の発言の後、笠井氏から、共産党の「提言」への感想を尋ねられた君島氏は、「東アジアの平和を考えるとき、『提言』が太平洋を挟むアメリカを排除しないと書いたのが画期的。それこそ戦争回避の道であり、私も同じ意見」と述べました。
君島氏も笠井氏に質問。「現実に包摂の枠組みづくりの一歩をどう進めるのか」と尋ねると笠井氏は、東アジアサミットの合意やAOIP(ASEANインド太平洋構想)の到達点を踏まえ、アメリカや中国の対応が問われる段階に来ているとし、「発展と繁栄の立場でどうするのかと今後も問い掛けていく。簡単に進まないかもしれないが、市民レベルの外交対話にも学びながら、対立と分断を避け、平和の実現へ奮闘したい」と語りました。
「東アジア青少年歴史体験キャンプ」実行委員会の原幸夫さんは、歴史教科書問題を背景に2002年以降、日中韓3国の若者が学習・交流してきたことを紹介し、「異文化を持つアジア人としての自覚を高め、お互いに尊重し合い成長する場となった」と語りました。
大阪AALA代表委員で医師の安達克郎・茨木診療所所長は、医療や平和、民主主義を学び合う草の根の交流企画として、大阪民医連有志が韓国ツアーを重ねてきたことを報告しました。
会場の参加者から、「イギリスの政権交代の影響はあるか」「台湾の民意と『一つの中国』の外交上の立場についてどう考えるのか」「南シナ海での中国とフィリピンの領有権争いをどう考えるか」「ロシアの攻撃に対し、犠牲を減らすために白旗を上げろとの考えをどう見るか」などの質問が出され、君島、笠井両氏が縦横に答えました。
憲法前文が戦後日本外交の原点
君島東彦氏
君島氏は、立命館大学国際平和ミュージアム館長を務め、国際NGO非暴力平和隊の設立・運営に関わってきました。
君島氏は、「日本国民は…平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とうたった憲法前文(第2段落)を読み上げ、「これが戦後日本外交の原点であり、日本が目指すべき平和・安全保障構想」だと述べました。
また、米ソ冷戦の進行によって国連による安全保障は実現せず、日米安保重視の日本外交に変容したとし、「今こそ、地域のすべての国家を包摂する共通の安全保障の枠組みを制度化する必要がある。日米安保ではなく、憲法9条を生かしきる枠組み作りの努力が求められている」と語りました。
君島氏は、「国際関係をつくるのは外務省だけではない。われわれ市民も外交の主体」と述べ、非政府専門家やビジネス、大学や市民運動、メディアなど9つの主体が多層的に国際関係構築に関わるとの「マルチトラック外交論」を紹介。学生の留学や研究者の交流など、大学は外交主体として独自の行動を取ることができると述べ、2015年に始まった「日中平和学対話」などの取り組みは、東アジアの平和をつくる基礎になると強調しました。
また、沖縄県知事による訪米・訪中・訪台など自治体外交が、積極的な役割を果たしていると語りました。
排除ではなく包摂の論理貫いて
笠井亮氏
日本共産党国際委員会副責任者として、世界五十数カ国を訪問するなど野党外交で精力的に活動してきた笠井氏は、「外交とは国連憲章と国際法に基づき粘り強い対話で共通点を見出し、共に解決策を見出すこと」だと語り、同党の「東アジア平和提言」を紹介。
「提言」は、軍事的「抑止力」強化が進む情勢下、抜本的対案が必要との立場で発表されたもので、笠井氏は、対等・平等・相互尊重の精神で、特定国を排除するブロック的対応ではなく、すべての国を包み込む包摂の論理を貫くことが大事だとした上で、「提言」が軍事同盟への賛否や立場の違いを超えて、協力・共同を可能にしている内容になっていると指摘しました。
笠井氏は「東南アジア諸国から平和をつくるための英知を学んできた」と述べ、同党が1999年以来積み重ねてきた野党外交を紹介。「ASEANは世界で最も成功した地域機構の一つとなり、世界平和の一大源泉」と語りました。
笠井氏は、日中関係や台湾問題、朝鮮半島問題など北東アジアの諸問題を巡る外交努力の方向、ウクライナ侵略とガザ危機で、国連憲章と国際法に基づき解決を目指す方針を解説。「東アジアの平和構築という大事業は、各国政府と政党、市民社会の共同で、ジェンダー平等を中核に据えてこそ実現できる。侵略戦争反対を命懸けで貫いた平和の党として、憲法を生かした希望ある政治の実現へ全力を尽くしたい」と語りました。
(大阪民主新報、2024年7月21日号より)