性暴力救援センター・大阪SACHICO
大阪府の責任で存続を
請願署名や意見書可決 世論と運動広がる
NPO法人「性暴力救援センター・大阪SACHICO」が、来年3月末までに、現在、活動している民間病院から退去を求められ、存続の危機に直面している中、大阪府の責任で来年4月からも活動できる病院への移転を関係者が求めています。11月府議会に向けても請願署名が取り組まれ、これまでに府内9市議会が意見書を可決するなど、SACHICO存続への声が広がっています。
病院拠点型の支援センター
SACHICO(サチコ)は、Sexual Assault Crisis Healing Intervention Center Osaka(性暴力危機治療的介入センター大阪)の略称で、2010年に設立しました。以来14年間、松原市の阪南中央病院で、病院拠点型のワンストップ支援センターとして、性暴力被害者を支援してきました。
24時間体制のホットラインと支援員常駐による被害者への心のサポートをはじめ、24時間対応可能な産婦人科救急医療体制と継続支援、警察・弁護士・精神科医師・カウンセラーなど必要な機関への連携など、被害直後から総合的・継続的に支援する体制を取ってきました。緊急避妊対策や性感染症の検査と予防のための投薬、外傷の診察などの初期対応とともに、妊娠した場合の対応、心のケアなど継続医療を実施。加害者対策として、膣内容物などの証拠採取と保管、警察への通報・証拠物提出、裁判になれば証人として出廷もしてきました。
阪南中央病院では、09年までの4年間で対応したレイプ・強制わいせつ被害者数は、各年5人から9人にとどまっていましたが、SACHICOが開設された10年には78人、22年には254人に増えました。
10年4月から24年3月までの14年間で、SACHICOが受けた電話件数は5万2198件、来所延べ件数は1万4610件で、3722人を初診しました。
府内10の協力医療機関との連携で、大阪府性暴力被害者支援ネットワーク事業も手掛けるなど、SACHICOは大阪の性暴力被害者支援で中心的な役割を果たしてきました。
内閣府の事業のモデルにも
内閣府はSACHICO設立から2年後の12年、SACHICOをモデルに、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター設立の手引きを作成し、15年からモデル事業を開始。17年には、刑法改正で「不同意性交等罪」が創設され、18年には全都道府県にワンストップ支援センターが設立されました。
国・府の補助金はごく一部
しかし、SACHICOに対する国と大阪府からの補助金は、運営費のごく一部の約1600万円にとどまり、維持費の多くは病院側が負担。不足分は寄付金で補う状態が続いてきました。医師・看護師は、病院での診療を行いながら、〝善意の超過勤務〟でSACHICOでの診察に当たってきましたが、働き方改革とも相まって一民間病院で全てを負担することが困難になる中、病院の診療協力は22年9月から減り、今年3月に終了。現在は診療機能が停止し、相談活動だけになっています。
さらに病院からは、来年3月末で事務所退去を求られています。
署名1万超、9つの意見書
SACHICOが11日に開いた会見では、医師の久保田康愛理事長が、SACHICOが果たしてきた役割を報告。被害後72時間以内に診療と相談を開始し、継続するためには、連携型のワンストップ支援センターではなく、24時間365日の支援員常駐と、診療機能を持つSACHICOが必要だとして、来年4月から活動を再開できる病院への移転を、府の公的責任で行うことを求めました。
会見では、3年前、性暴力被害者の家族としてSACHICOの支援を受けた佐藤晴美さんも出席し、「病院拠点型だったからこそ、支援員さんと先生が協力して常に安心させてくれ、二次加害をしないような支援も受けられた」と振り返りました。
SACHICOが存続の危機にあることを知った佐藤さんは、性暴力のない社会を目指すフラワーデモで出会った人たちと「性暴力救援センター・大阪SACHICOの存続と発展を願う会」を結成。11月府議会に向けて8月から請願署名に取り組んできましたが、これまでに紙・電子署名を合わせて1万筆以上集まり、SACHICOをなくしてはならない思いや「署名を待っていた」などの声が寄せられています。
9月地方議会では、堺、高槻、枚方、交野、松原、羽曳野、河内長野、吹田、貝塚の9市議会で、府に対してSACHICOの拠点確保を求める意見書が、条件付きのところも含めて可決されています。
日本共産党議員団は各議会でSACHICOの問題を取り上げ、府議会では、石川たえ議員が、被害相談や産婦人科による医療、被害者と家族へのケアなど、ワンストップ型支援センターを府立病院に開設するよう求めました。
「やっと話せた」という人も
24時間支援体制のSACHICOは、過去に性暴力を受けた人にとっても、かけがえのない役割を果たしてきました。
府外に住むAさん(30代)は、子どもの頃、兄から性虐待を受けました。誰にも相談できず、解離性障害にも苦しんできましたが、昨年3月、初めてSACHICOと出会って、やっと被害を話せるようになり、カウンセリングを受けはじめました。
「本では何度も読んだ『あなたは悪くない』の言葉を、目の前で言われたときは涙が止まりませんでした。24時間365日いつでも相談できるからこそ、安心できる。SACHICOをなくさないでほしい」とAさんは言います。
SACHICO請願署名にも、「身近な大人が信頼できても被害者にとっては性暴力を相談することは難しいことです。信頼できる大人がいない子供もたくさんいます。(略)そういった時、このような支援センターは必要不可欠であり、もっともっと広がることが望まれます」などの声が寄せられています。
(大阪民主新報、2024年10月20日号より)