おおさかナウ

2024年11月16日

平和な貿易港に軍艦いらない
大阪港に米掃海艦
平和団体が抗議行動

 米海軍の掃海艦「パトリオット」が7日から10日まで、大阪港に入港しました。ことし米軍艦が大阪港に寄港するのは、2月の強襲揚陸艦「アメリカ」以来、2回目です。安保破棄大阪実行委員会はじめ平和4団体の各事務局長は6日、「戦争するための米軍艦が、平和な国際貿易港としての大阪港に入港することは許されない」と、大阪市の横山英幸市長(大阪維新の会幹事長)に対し、「パトリオット」の入港を許可しないよう要請。7日の入港当日には、4団体が緊急抗議行動に取り組みました。

停泊する掃海艦「パトリオット」に向けた平和団体の緊急抗議行動=7日、大阪市住之江区内

停泊する掃海艦「パトリオット」に向けた平和団体の緊急抗議行動=7日、大阪市住之江区内

「非核三原則」を厳守せよ

2年続けて大阪港に入港した強襲揚陸艦「アメリカ」=2023年2月20日、大阪市住之江区内

2年続けて大阪港に入港した強襲揚陸艦「アメリカ」=2023年2月20日、大阪市住之江区内

 掃海艦は、水中に敷設された機雷を除去するための艦船。「パトリオット」(1312㌧)は1996年から米海軍佐世保基地(長崎県佐世保市)に配備されており、今回の寄港目的は給油と、乗組員の休息だとされています。
 横山市長宛てに要請書を提出したのは、安保破棄大阪実行委員会、大阪平和委員会、大阪原水協、非核の政府を求める大阪の会の各事務局長。安保法制(戦争法)や岸田前政権が閣議決定した「安保3文書」に基づいて、核兵器が日本に持ち込まれ、民間港湾・空港の軍事利用の可能性が高まっていると指摘しています。
 日本政府には「非核三原則」の厳守を求めると同時に、大阪市に対しては、核兵器搭載の有無に無回答のままでは入港を許さず、大阪市議会が1994年に行った「大阪港の平和利用に関する決議」(別項)を尊重して、入港許可を与えないよう強く求めました。

食品埠頭に軍艦は場違い

 7日午前10時から、「パトリオット」が停泊する大阪市住之江区南港南のJ岸壁で行われた抗議行動では、各団体の代表が「軍艦の寄港は、市民や議会の平和の意思を踏みにじるもの」「ここは平和な、食品の物流が専門の岸壁。軍艦が来るのは場違い。早く帰ってほしい」などと訴えました。
 安保破棄兵庫実行委員会の後藤浩事務局長も、駆け付けて訴え。神戸港に入港する際に「非核証明書」の提出を義務付ける「非核神戸方式」がとられた1975年以来、1隻も米軍艦が入っていないとし、「隣の大阪に、頻繁に米軍艦が来るのは許せない」と述べました。

決議から30年 踏みにじる入港

市民が抗議する中、入港したミサイルフリゲート艦「クロムリン」=1994年10月21日、大阪市住之江区内

市民が抗議する中、入港したミサイルフリゲート艦「クロムリン」=1994年10月21日、大阪市住之江区内

 大阪市議会が「大阪港の平和利用に関する決議」を全会一致で可決したのは、1994年11月25日。ことしで30年になります。決議のきっかけは同年10月21日、大阪南港への米海軍のミサイルフリゲート艦「クロムリン」の入港。大阪港への米軍艦入港は27年ぶりのことでした。
 決議が記すように、大阪港はアジア・太平洋戦争で壊滅的な打撃を受けました。大阪港は1868(慶応4)年の開港以来、商業港として発展してきましたが、日清・日露戦争を経て中国への侵略戦争を遂行するための一大兵たん基地に。そのため米軍の最大の攻撃目標の一つとなりました。
 大阪港湾局の『大阪港150年史―物流そして都市の交流拠点』(2021年)は、大阪港の港湾施設などへの米軍の空襲は、機雷投下も含めて9回あったと指摘。1945年6月1日の大阪大空襲では「400機ものB29の大編隊が飛来し、大阪港一帯は一面廃墟と化した」と記しています。
 日本の敗戦後、大阪市民の力と熱意で平和な商港として復興し、日本有数の国際貿易港となった大阪港。この歴史的経過から、「大阪市民は港の平和利用を強く念願している」と決議は強調しています。
 ところが決議の可決から2年後、ミサイルフリゲート艦「マクラスキー」が入港。それ以降、毎年のように米軍艦が大阪港に寄港します。2002年には米第7艦隊の旗艦(艦隊に指令を出す艦船)「ブルー・リッジ」が入港するなど、港の平和利用を求める市民の願いは、踏みにじられてきました。
 今回入港した「パトリオット」が16年7月に入港して以来、しばらく入港は途絶えていました。23年2月、米艦船として大阪港に現れたのは、強襲揚陸艦「アメリカ」(4万5570㌧)です。強襲揚陸艦は飛行甲板を備え、航空機やヘリコプター、船艇を使い、兵士や兵器、装備を海上から陸地に送り込むための艦船です。「アメリカ」は米海軍第7艦隊の所属で、2019年から佐世保基地に配備。最新鋭戦闘機F35Bなども搭載可能です。
 「アメリカ」はことし2月27日、再び大阪港に寄港。陸上自衛隊と米海兵隊が「離島防衛」を想定し、2月から3月にかけて鹿児島県・沖永良部島や沖縄で行った共同訓練「アイアン・フィスト(IF・鉄の拳)」に参加していました。
 安保破棄実行委員会など平和4団体の事務局長の要望書では、昨年から相次ぐ米軍艦の入港の背景には、安保法制や「安保3文書」に基づく大軍拡政策が進められているという情勢の変化があると指摘。日本国憲法より日米安保条約を優先し、平和な貿易港である大阪港を軍事優先の港にすることは許されないと強調しています。

大阪港の平和利用に関する決議

 大阪港は、さきの大戦により破滅的な打撃を受け、大阪市民の力と熱意により平和な商港として復興に力を注ぎ、今日では我が国有数の国際貿易港となっている。
 こうした歴史的経過もあり、大阪市民は港の平和利用を強く念願しているものである。
 しかるに、10月21日、米軍艦クロムリンが入港した。
 我が国の核兵器に対する基本姿勢は、「作らず」「持たず」「持込ませず」という非核三原則を国是としており、本市会においても、「大阪市世界連邦平和都市宣言」や核兵器を大阪湾、大阪港はもとより日本国土に持ち込むことを一切拒否するように政府に強く要望した「すべての国の核兵器持込みに反対する決議」等幾度となく平和に関する決議を行っており、平和への祈願が内外に表明されているところである。
 よって本市会は、平和都市宣言及びこれらの市会での決議等の趣旨を踏まえ、大阪港が核兵器持ち込みを拒否する世界に開かれた平和な貿易港として運営されるよう強く要望するものである。
 以上、決議する。
(1994年11月25日議決)

軍事利用に一貫して反対「非核神戸方式」の採用を
日本共産党

 日本共産党は、大阪港の平和利用を求める平和団体や市民と力を合わせ、米軍艦の入港など軍事利用に一貫して反対しています。同党大阪市議会議員団は繰り返し、米軍艦の入港を許可しないよう市に申し入れると共に、議会質問でも取り上げてきました。
 2009年10月の大阪市議会公営・準公営決算特別委員会で、清水忠史議員(当時)は、同年4月に入港したミサイル駆逐艦「ジョン・S・マッケイン」には、核兵器搭載機能があると指摘。非核三原則堅持のためにも、「非核神戸方式」で実効性が明らかな「非核証明書」の提出を求めるよう、平松邦夫市長(当時)に求めました。

大阪港に入港した米軍艦(1994年~)

1994年 10月21日 ミサイルフリゲート艦「クロムリン」
11月25日 大阪市議会が「大阪港の平和利用に関する決議」を全会一致で可決
1996年 8月31日 ミサイルフリゲート艦「マクラスキー」
1998年 4月17日 ミサイル駆逐艦「カーチス・ウイルバー」
2000年 10月6日 ミサイル巡洋艦「ヴィンセンス」
2002年 4月14日 第7艦隊旗艦「ブルー・リッジ」
2003年 5月31日 ミサイル巡洋艦「カウペンス」
※天候不良で入港取りやめ
2004年 3月6日 「カーチス・ウイルバー」
2006年 4月3日 「カーチス・ウイルバー」
2007年 3月1日 ミサイル駆逐艦「ステザム」
2008年 4月12日 ミサイル駆逐艦「チェイフィー」
11月21日 ミサイル駆逐艦「ラッセン」
2009年 4月23日 ミサイル駆逐艦「ジョン・S・マッケイン」
2011年 5月13日 「ブルーリッジ」
2013年 10月26日 「カーチス・ウイルバー」
2014年 4月10日 ミサイル巡洋艦「レイク・エリー」
2016年 2月24日 「ブルー・リッジ」
7月6日 掃海鑑「パトリオット」
2023年 2月20日 強襲揚陸艦「アメリカ」
2024年 2月27日 「アメリカ」
11月7日 「パトリオット」

(大阪民主新報、2024年11月17日号より)

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