松井前市長らは1000億円賠償を
夢洲カジノ用地 格安賃料で市民に大損害
市民が大阪地裁に提訴
カジノを核とする統合型リゾート(IR)の大阪誘致を巡り、大阪市が夢洲の市有地をカジノ事業者に、違法な格安賃料で賃貸したことで大阪市(大阪市民)が受けた損害を受けたとして、大阪市民3人が16日、松井一郎前大阪市長(元日本維新の会代表)らの法的責任を追及し、損害賠償を求める住民訴訟を大阪地裁に起こしました。
カジノ事業者への土地提供の差し止めを求めた第1次住民訴訟(昨年4月提訴)に続くもの。大阪市民496人が9月、松井氏らに損害賠償を求めて第2次監査請求を行いましたが、認められなかったため、代表して3人が第2次住民訴訟に踏み切りました。
訴状などによると、第1次住民訴訟の継続中に、大阪市と不動産鑑定業者との間の「隠蔽メール」が発覚したことで、次のような点が明らかになりました。
――「IRカジノ事業のための適正賃料を算定する」という鑑定目的に反して、「IR事業を考慮外」として鑑定。そのため、高層ホテルを含むカジノ用施設の用地なのに、全く異なる低中層の商業施設用地(イオンモールなど)の用地として格安に賃料を算定
――夢洲に地下鉄の新駅が開業することが確実なのに、対岸の咲州にあるコスモスクエア駅を「最寄り駅」として鑑定し、格安に賃料を算定
――これら「違法な鑑定条件の示し合わせ」を全ての鑑定業者が行い、大阪市が積極的に関与していた
その上で「大阪市民の貴重な財産である夢洲の市有地を、カジノ事業のために極めて違法な方法で、著しく廉価な金額で貸すことは違法行為」と強調。損害賠償の金額は、IR事業を前提にして不動産鑑定士に調査を依頼した適正賃料と違法な格安賃料の差額。約33年の契約期間の累計で約1044億円に上ります。
損害賠償請求の相手方は、違法な格安賃料に基づいてカジノ事業者と「基本協定書」を締結した松井氏、賃貸契約を締結した横山英幸現大阪市長(大阪維新の会代表代行)、賃貸契約に対応した責任者の大阪港湾局長(前・現)、不当な利益を得るカジノ事業者、違法な賃料鑑定を実行した不動産鑑定業者4社と鑑定士個人です。
故意に近い重大な責任
松井前市長の態度悪質
原告・弁護団が会見
提訴後に大阪市北区内で記者会見=写真=した原告の市民は、「大阪市民の生活は切実な状況がある。大阪市は責任あるお金の使い方や土地の運用をするべき」「格安賃料で損害を受けることを市民に広く知らせてほしい」と話しました。
加苅匠(かがり・たくみ)弁護士は、「基本協定書」締結後の22年12月の記者会見で松井市長(当時)が、不動産鑑定で「IR事業を考慮外」としているのに「考慮している」などと発言した上、事実誤認を指摘されても修正しなかったと指摘。「故意に近い重大な法的責任がある」と述べました。
両訴訟原告団長の藤永延代さんは、「松井前大阪市長の態度は悪質。(維新が)議会で圧倒的多数を取っているからといって、住民は白紙委任状を渡したわけではない。関わった人たちの責任を問う大事な裁判だ」と力説しました。
(大阪民主新報、2024年12月22日号より)