永野市長の性加害
「不貞行為」認めるも「性加害はなかった」
岸和田市議会 議員らが辞職要求
女性から性行為の強要を訴えられ、500万円の解決金を支払って和解が成立した岸和田市の永野耕平市長(8日に大阪維新の会を離党)は、議会や記者から説明を求められても、「裁判の中身については話せない」と拒否してきました。
維新は除名ではなく離党勧告に
ところが4日、大阪維新の会が「説明責任を果たさなければ除名」との方針を出した途端、態度を変え、6日の会見で「不貞行為があった」と認めましたが、女性との性行為について「同意があった」と述べました。
大阪維新の会は、8日の綱紀委員会で、除名処分ではなく離党勧告処分を決定。会見した杉江友介幹事長は、女性の性被害の訴えについて、「すべて真実であれば除名相当だと思うが、和解も成立し、双方の主張が違う中でわれわれが事実認定するのは難しい。永野市長はできる範囲で説明を尽くした」と強調。「不貞行為は認めているが、性加害の事実はないと説明された」と述べた上で、「一緒にやっていくのは難しい」と判断し、離党勧告処分したと説明しました。
議会軽視、性加害の真相ただす
9日の市議会本会議では午前中、市長の問題について質疑が行われました。永野市長は3日の全員協議会から一転し、「不貞行為を働いたことは心からお詫びしたい」と述べました。
ほとんどの出席議員が質問に立ち、全員協議会で説明しなかったことについて議会軽視だと厳しく批判。永野市長は「反省している」と述べ、女性側が被害を受けたと主張していることについて問われると、女性との主張の違いだとし、「性加害はない」「ハラスメントに当たるものもない」と繰り返しました。
日本共産党は海老原友子、田中市子、岸田厚、中井良介の4議員全員が質問。中井議員は、女性が2021年に永野市長による性加害で大阪地検に刑事告発し、刑事事件になったことに触れ、「対等であれば、こんなことは起こるはずがない」とし、かたくなに性加害を否定する永野市長を批判しました。
田中議員は、優越的な立場にある永野市長との性的関係が続く中で、女性が精神な失調をきたし、訴訟に至ったと指摘した和解調書を読み上げ、「パワハラ、セクハラがあったと捉えるのが一般的だ」と指摘しました。
定例会欠席求め異例の申し入れ
質問したほとんどの議員が市長に辞職を要求。市長の説明が不十分で、市長提案の議案は質疑できないとの理由から、全会派一致で、定例会の本会議、委員会質疑に永野市長が出席しないよう、異例の申し入れが行われました。
日本共産党市議団は4日、「『性加害』は許されない 永野市長の即時辞任を求める」とした声明を発表しました。
和解内容と被害女性の訴え
11月14日に成立した和解調書前文では、「男女として純粋に対等な関係だったとはいえず、むしろ優越的な立場にあって、社会的な上下関係が自ずと形成されていた」とした上で、女性が「被告との性的関係が続く中で精神的な失調を来し、訴訟の提起にまで至った」と述べ、永野市長に解決金500万円を支払い、女性に謝罪することを求めました。
女性側の弁護団が、和解成立後に開いた会見で紹介した女性のメッセージには、「裁判上の和解をしたからといって、被告を許した訳ではありません」とつづられていました。
また、性行為が同意だったとする市長の主張に対し、「泣きながら拒絶する私を、立場(地位)や権力を乱用し、恐怖でおさえつけ、人格否定などの言葉の暴力で精神的に支配し、逃げられないようにすることが同意なのでしょうか」と問い、被告の「異常な執着」から「逃れるために、自ら命を絶つしかないという極端な選択を考えるまでに追い詰められ」たとし、「このような加害行為に及んだ人物が、責任ある立場に相応しいとは思え」ないとも述べています。
1999年に原告が勝訴した、横山ノック元大阪府知事セクハラ訴訟の元弁護団団長の石田法子弁護士に、今回の岸和田市長の問題について話を聞きました。
和解内容は性加害を事実上認定
罪認めず反省ない無責任な人を市長の座につかせてもいいのか
府知事セクハラ訴訟元弁護団長 石田法子さん
和解の内容は、和解金が500万円であること、謝罪の文言が入っていることから、市長の性加害が事実上認定された判決同様のものです。謝罪の文言を付けたのは判決以上の成果です。
裁判は当事者にとっては時間がかかるし、その間とてもつらくてしんどくて、もう嫌だと諦めたいという気持ちになります。原告女性のメッセージはその切々とした思いがあふれています。早期に解決ができて本当によかったと思います。
市長は今もなお、性加害を認めていなようですが、「同意があった」という主張は非常にうそくさい。同意があれば、刑事告発や訴訟にまで発展していないでしょうし、和解に至ることもなかったでしょう。
性加害は目撃者がいないことが多いため、事実を否定したり、同意があったと弁明されることが多いですが、だからといって、その言い分をそのまま許していいわけはありません。うそを通して、これ以上、彼女を苦しめるのは許しがたいです。
このように、罪も認めず、反省もないような無責任な人を、市長の座につかせ続けてもいいのか。それを岸和田市民が良識を持って判断すべきだと思います。
(大阪民主新報、2024年12月15日号より)