「総合区」「特別区」問題
〝上から目線〟の制度いじりやめて
大阪市をよくする会が学習会
大阪市をよくする会(よくする会)が9月23日夜、大阪市北区の大阪グリーン会館で「総合区・特別区問題」学習会を開き、約140人が参加しました。
行政区より権限強める
府と大阪市が共同設置する「副首都推進局」は「副首都にふわさしい大都市制度のあり方」の名で「総合区」「特別区」についての住民説明会(大阪市民対象)を8月末から開催。来年2月にかけて全24行政区で開くとしています。説明会では大阪市がまとめた「総合区」素案とともに、昨年5月の住民投票で否決された「特別区」についても解説しています。
講演した奈良女子大学の中山徹教授(大阪自治体問題研究所理事長)は、「総合区」は地方自治法改正(2014年)で新たに政令市に導入できるようになったもので、「総合区長」は特別職(選任には議会の同意が必要)に格上げし、「総合区」が担う仕事を条例で定めることで議会の関与が高まるなど、現在の行政区よりも権限を強める面があると説明しました。
合区が前提の大阪市案
大阪市が検討している「総合区」案が現在の24行政区の合区を前提にしていることについて、中山氏は「(法律上は)合区しなければならないという決まりはなく、一般論から外れている」と指摘。公明党は合区して12の「総合区」を設置し、自民党は24区を残した上で、すべてに「総合区」を導入するか、一部だけ導入するかは今後検討するとしていることも紹介しました。
中山氏は「一般論として、総合区は頭からけしからんものと言えるものではないが、今回の案のように合区を必ず伴う『総合区』は、現状の大阪市にふさわしくない。市民の中に定着している区を短期間で合区することは、慎重に考えるべきだ」と語りました。
特別区とは次元が違う
よくする会の福井朗事務局長は開会あいさつで、松井一郎知事や吉村洋文大阪市長が検討する「副首都」は定義自体があいまいだと批判。現在の行政区の合区を望む住民の声はなく、次元の違う「総合区」「特別区」を比べて説明するのはおかしいと述べ、「上から目線の制度いじりはやめてほしい。住民の声を聞くと言うなら、地方自治法に定める地域協議会などの導入などを検討すべき」と語りました。
大阪市の「総合区」素案
「副首都推進局」が7月にまとめた「総合区」素案は、大阪市の現在24行政区の合区を前提に、①5区(1区当たり人口45万人程度)、②8区(同30万人程度)、③11区(同20万人程度)の3つの区割りを設定しています。
「総合区」が担う事務に応じて、5区では「一般市並み」と「中核市並み」、8区では「ほぼ現行の行政区並み」と「一般市並み」、11区では「ほぼ現行の行政区並み」の計5案があり、住民説明会や議会での議論を経て、今年度中に1案に絞り込むとしています。
法定協議会設置議案
来年2月議会に提案
松井知事が表明
松井一郎知事(大阪維新の会代表)は9月20日、大阪市を廃止して「特別区」を設置するための協定書について審議する特別区設置協議会(法定協)の設置議案を、来年2月議会に提出する考えを示しました。府庁内で記者団に語りました。
法定協は昨年5月の住民投票で「特別区」設置が否決されたのを受けて、廃止されました。松井氏は「大阪都」構想の再挑戦に固執し、「設計図を一から作り直す」などと繰り返してきましたが、府議会で維新は過半数に達していません。
松井氏は「議会の同意もいるので、公明党に理解をいただく中で設置時期は決めたい」などと述べ、設置議案の可決では公明党の協力を取り付ける考えです。
「総合区」先行も
また大阪維新の会が9月23日に大阪市北区内で開いた政治資金パーティーで、松井氏は「大阪都」構想への再挑戦をあらためて表明。終了後の記者会見で松井氏は、「いまの公明党の合区を前提とした総合区は(維新が賛成すれば)最低限やれるのは確実」と述べ、「総合区」を先に導入した後に、大阪市の廃止・解体=「特別区」設置への賛否を問う住民投票を行う可能性もあるなどと語りました。
(大阪民主新報、2016年10月2日付より)