TPP(環太平洋連携協定)で日本は〝崩壊〟
農業・食の安全・医療保険・共済・労働…
主権を根こそぎ奪う
絶対阻止へ緊急行動
農業と食の安全、医療・社会保障、雇用など、あらゆる分野で国民の暮らしを破壊する環太平洋連携協定(TPP)承認案と関連法案の衆院採決強行は許さないと、TPPに反対する市民でつくる「ストップ!TPP緊急行動・関西」は10月29日、大阪市西区の靭公園で緊急集会を開き、約200人が参加。共産、自由、社民各党の代表がそろって「TPP断固阻止」を訴え、民進党はメッセージを寄せました。集会後に御堂筋をパレードしました。
立場超え野党と市民手つなぎ
農林業は崩壊し畜産酪農に大影響
遺伝子組み換えの表示義務はなし
国会審議での政府の説明は不十分
国の在り方を根底から覆す
集会のリレートークで全日農京都府総連合会の渡邊泰隆会長は、環境・国土保全、景観維持など農業が果たす多面的役割に触れ、「日本のTPP参加で農林業は崩壊し畜産・酪農にも大きな影響を及ぼし、国の在り方を根底から覆すものだ」と批判しました。
NPO自然派食育・きちんときほん代表の大川智恵子さんは、TPP参加で食料自給率が12%に下がると試算されていると指摘。遺伝子組み換え作物の食品表示問題を取り上げ、輸入大豆で製造される油製品などは“遺伝子組み換え”の表示義務がないと述べ、「食料自給率の低い日本は、世界で最も多く遺伝子組み換え食品を食べているとも言われます。立場や職種を超えて、TPP阻止へ力を合わせましょう」と呼び掛けました。
全大阪消費者団体連絡会の飯田秀男事務局長は、SBS(売買同時入札)として輸入した主食用コメが、輸入業者が卸売業者に「調整金」を払うことで国産米より大幅に安く売られていた疑惑を紹介。「SBS米が国内産米価の引き下げ圧力になっているのは明らか」だと批判するとともに、農産物の産地表示や遺伝子組み換え食品の表示義務さえアメリカのルールに合わせるよう圧力がかかる可能性に言及し、国会審議での政府の説明は不十分で、断じて認める訳にはいかないと訴えました。
国民皆保険制度も破壊する
大阪府保険医協会の田川研事務局次長は、非関税障壁として診療所・病院・介護福祉に密接に関わる国民皆保険制度と共済や薬価、知的財産分野も狙われていると指摘。「日本の経済主権を多国籍企業に明け渡し、国民生活を多国籍企業の利潤増殖に従属させるものだ」と批判し、国民皆保険制度の破壊は許されないと訴えました。
水政策研究所の塚本法章さんは、大阪市が2018年に水道事業民営化を目指す問題を取り上げ、水道料金引き上げや水質悪化、不透明経営など海外における水道民営化の弊害を紹介。民営化に伴い水道事業への再投資が脅かされる恐れがあると述べ、「水道事業は長く私たちの暮らしを支えてきた大阪市民の財産です。ライフラインの要である水道を、企業の利益の道具にさせてはならない」と訴えました。
全日建連帯労組の西山直洋書記長は、TPPによって国民が長年のたたかいで勝ち取ってきた権利が根こそぎ奪われると指摘。相次ぐ過労死事件や安倍政権が狙う残業代ゼロ法案などの問題に触れながら、「国民の安全のため、TPP批准阻止へ取り組みを進めていこう」と呼び掛けました。
利益のために法が覆される
連帯あいさつした日本共産党の辰巳孝太郎参院議員は、外国企業や投資家などが進出国政府に莫大な損害賠償を求めることができるISDS(投資家対国家紛争解決)条項の問題を取り上げ、「国民の権利を守る憲法や法律さえ、企業の利益のため覆される恐れがある。TPPは日本の主権を根こそぎ奪うものだ」と批判しました。
自由党の山本太郎共同代表と渡辺義彦元衆院議員・府連幹事長は、TPP関連の協定文は英文8千㌻のうち、翻訳されたのはわずか2400㌻に過ぎないと指摘。「交渉内容の情報を出せと迫れば、黒塗りの文書しか出てこない。もはや審議と言えない状況だ」と批判しました。
社民党の服部良一元衆院議員は、世界を支配する1%のグローバル企業が日本で経済活動しやすいよう、関税ゼロや非関税障壁の撤廃が狙われていると批判。「暮らしと基本的人権を守るため、情報公開もないままTPPを国会通過させてはならない」と訴えました。
集会は、「TPP協定を今国会で批准しないことを求める」決議を採択。トラクターを先頭に御堂筋をデモ行進しました。むしろ旗を手にデモ行進した20歳の女性店員は、「安心して暮らせるよう日本の食を守ってほしい。私たちの基本的な権利を奪うTPPは、憲法に違反していると思う」と話していました。
強引な採決するな
府保険医協会が声明
大阪府保険医協会は、衆議院TPP(環太平洋連携協定)特別委員会で、TPP批准について、強引な採決を行わないよう求める理事会声明を10月27日、発表しました。
声明は、国民皆保険制度はTPP批准後に社会保障とは言えない内容に空洞化されると指摘。共済や年金、生命保険のサービス部門に、アフラックのように外国資本が入り、アメニティ部門はじめ医療機関は、丸ごと米国式営利経営にさらされると批判しています。新薬開発など知財分野も狙われ、オプジーボ(がん治療薬)を例に、高薬価維持、特許期間延長、データ保護期間長期化で、国民負担は際限なく高止まりすると主張。「医療分野からの反対世論を急速に高めることが今ほど大切な時はない」と述べ、「あらゆる分野の方と共同して、TPP批准を国会で承認させない取り組みを進める」としています。
(大阪民主新報、2016年11月6日付より)