住吉市民病院廃止問題
市の責任で公的医療機関を
民間病院撤退で尾上市議が要求
大阪市が住吉市民病院(大阪市住之江区)の廃止(来年3月末)後に誘致しようとしていた民間の南港病院が17日、撤退を表明したことで、来年4月から医療空白が生まれる可能性が強まっています。19日の大阪市議会民生保健委員会で日本共産党の尾上康雄議員は、医療空白をつくらず、住吉市民病院の医療機能を継続・発展させるために、今こそ大阪市の責任で公的医療機関を設置するよう強く求めました。
「南港病院の撤退で一番大きな問題は、住吉市民病院が担う医療機能が引き継げない問題だ」と指摘した尾上氏。府市共同で新設する「住吉母子医療センター(仮称)」はあくまで高度医療を提供する病院であり、住吉市民病院が行ってきた未受診妊婦の受け入れや、重症心身障害児の短期入所事業は民間では担えないことから、「公的な医療機関を設置すべきだ」と強調しました。
吉村市長の無責任な発言に
尾上氏は、南港病院の撤退を受けて吉村市長が、病床再編計画で同病院が引き継ぐことになっていた100床について、「なしにする」と発言していることを批判。「もともとベッド過剰地域だ」(吉村氏)というが、小児周産期医療や出産分娩医療は、もともと住之江区や西成区など南部医療圏では不足していると述べました。
また、「現に受け皿がない段階で、これは厚労省も通るはずがない」と吉村市長が発言していることに対しても、尾上氏は「大阪市自らが受け皿を引き受けるという選択肢をまったく除外して、厚労省は認めないから100床は消えたというのは、まったく無責任だ」と力説。公的に担う決意を出発点に、地元医師会・地元住民の声に誠意をもって対応するよう迫りました。
記者メモ
問われる命に対する姿勢
○…住吉市民病院の廃止後に大阪市が誘致しようとしてきた南港病院が、撤退を表明しました。この知らせを聞いて思い出したのは、「二重行政だ」として廃止を進めた橋下徹氏が大阪市長時代に行った一連の発言です。
現地存続を求める7万の署名が集まる中、橋下氏は13年2月の市議会民生保健委員会で、「小児・周産期の空白に対する区民の不安意識があることは十分認識している」とし、「跡地に民間病院を誘致することで不安を解消する」と答弁しました。
○…ところが翌3月の府市統合本部会議では、民間病院誘致は「(住吉市民病院の廃止を)単純に議会通すための条件」「(住之江区などの)ミクロの声の部分で(廃止反対の)声が沸騰して、そこを収めるために副市長はじめいろいろ考えた最後の策」と言い放ちました。
民間病院誘致で、1回目の公募で事業者が辞退すると、「公募条件のハードルが高すぎた。大失敗だ」(14年7月)。2回目で事業者が不適格になると「小児・周産期のみの病院は非常に中途半端」(15年1月)と語り、個別交渉で選んだのが南港病院だったのです。
○…南港病院は病床再編計画で100床を継承することになっていました。同病院の撤退を受けて「100床はなし」「厚労省が認めない」と発言した吉村洋文大阪市長。19日の市議会民生保健委員会で日本共産党の尾上康雄議員が批判したように、100床を大阪市が引き受けるという選択肢を除外した、無責任極まりないものです。
橋下氏以来の失政を認め、大阪市の責任で住吉市民病院の医療機能を継承・拡充する公的医療機関を設置するかどうか。吉村市長に問われているのは市民の命に対する姿勢です。(す)
(大阪民主新報、2017年5月28日付より)