24区を8つの「総合区」に
維新政治 都構想実現へ〝利用〟
大阪市議会大都市・税財政制度特別委
大阪市を存続しつつ現在の24行政区を8つに合区することを前提にした「総合区」素案(別項)を審議する大阪市議会大都市・税財政制度特別委員会が5日から2日間開かれ、6日には日本共産党の山中智子、江川繁両議員が質問に立ちました。
共産党〝市民・議会を愚弄する手法〟
■本命は特別区
吉村洋文大阪市長は「副首都・大阪にふさわしい大都市制度」の名で、大阪市を廃止・解体して設置する「特別区」(いわゆる「大阪都」構想)と、「総合区」を提案。「特別区」の賛否を問う住民投票の前に「総合区」設置の議決を行い、住民投票で「特別区」が否決されれば「総合区」に移行する考えを示しています。
山中氏は、「副首都」は定義も明らかでなく、具体的な姿も示せないものだとした上で、「市長は住民投票を来年秋に実施すると再三表明しているように、本命は特別区・都構想にある」と迫りました。
■次元の違う話
吉村市長が「特別区、総合区のベスト案をつくる。最後は市民の判断」と答えたのに対し、山中氏は「住民投票のために総合区を利用しているだけということは、明らかだ」と述べました。
山中氏は「特別区」は大阪市を廃止してばらばらの自治体をつくる統治機構の話なのに対し、「総合区」は区の一種だと指摘。「まったく次元の違うものを比べる土俵を自分たちの都合で無理やりつくり、特別区が否決されたら8区の総合区にするというのは、市民も議会をも愚弄(ぐろう)するものだ」と批判しました。
■デメリットが
さらに「総合区」では現在の行政区が担う事務に加えて、市民利用施設の管理や市立保育所の運営を移管するというが、「総合区」は施設の利用料や保育料を勝手に設定することはできないと指摘。
市民サービスは良くならない一方で「総合区」設置の初期費用に約63億かかり、市民には住所変更の負担が生じることを挙げ、「総合区制度そのものは否定しないが、市民的に議論・検討すべき。8区(への合区)ありきの案では市民にとってデメリットだ」と主張しました。
■政治の中身を
江川氏は、2015年5月に「特別区」設置を否決した住民投票の結果を受けて、政令市の大きな権限と予算を生かして現在の24行政区で市民の暮らし・福祉を守る施策を進めるという「政治の中身の充実」が最優先課題だと表明しました。
住民自治の拡充には、歴史的・文化的な積み重ねの上に発展してきた現在の24区のコミュニティを発展させることが住民参加を促すポイントだと指摘。「24区を解体し、合区を前提にした素案では区役所が遠くなり、住民自治の拡充どころか、明らかに後退する」と述べました。
合区ありき 維新の「総合区」素案
「総合区」は2014年の地方自治法改正で、政令市が現在の行政区に代えて新たに設置できるようになったもので、政令市の存続を前提に区の権限を拡大する一つの手段。行政区長が一般職なのに対し、総合区長は市議会の同意を得て選ばれる特別職に格上げされ、総合区内のまちづくりの権限や人事権などを持ちます。
吉村市長は、「総合区」導入を積極的に主張する公明党に配慮して、「特別区」の制度設計を行う法定協議会でも「総合区」について必要な報告・議論ができるよう条例を修正しています。
8月に副首都推進局がまとめた「総合区」素案は現在の24行政区を8区に合区するのが前提。設置の日は市議会での「総合区」設置決定後から約2年後とし、区の名称は、決定後に住民などの意見を踏まえて、条例で定めるとしています。
「総合区」は現在の区が行っている事務に加えて、市立保育所の運営、幹線道路を除く道路の維持管理、放置自転車対策、スポーツセンター、プールの運営などを行うとしています。
設置に伴う初期費用は、庁舎や住民基本台帳などのシステム改修、街区表示変更などで62億7千万円かかります。
(大阪民主新報、2017年9月17日付より)