紙上憲法カフェ
安倍9条改憲ストップ
憲法を守り生かす年に
安倍首相が9条に自衛隊を明記する憲法改正に執念を燃やし、これに対する国民の運動が広がる中で、2018年を迎えました。安倍9条改憲の狙いは何か。憲法を守り生かす取り組みをどう広げるか。大阪弁護士会憲法問題特別委員会委員長で大阪平和委員会会長の西晃弁護士を囲んで、日本民主青年同盟(民青同盟)府委員長の酒巻眞世さんと、常任委員の林裕也さんが語り合いました。(司会=本紙編集部)
自衛隊明記の狙いは?
「2つの流れ」がぶつかり合って
――いまの9条改憲の動きは2017年5月3日、憲法記念日に安倍晋三首相が、改憲右翼団体「日本会議」の会合に、「2020年を、新しい憲法が施行される年にしたい」と明言し、自衛隊の存在を9条に書き込むことなどを表明したビデオメッセージを寄せたことに端を発しています。同じ日、大阪では扇町公園で開かれた「憲法こわすな!5・3おおさか総がかり集会」には1万8千人が参加しましたが、皆さんは当時、安倍発言をどう受け止めましたか?
酒巻 私は、国民への“挑戦状”だと思いました。
林 そうですね。9条に手をつけるということを公然と言って、いよいよ本気で改憲をやろうとしていると思いました。
酒巻 安倍首相が国会とかではなく、改憲勢力の集まりにメッセージを送って表明したことは気持ち悪いけれど、改憲のために頑張るという“本気度”を感じて。改憲の流れと、9条を守る流れがぶつかっているのだと思いました。
西 なるほど。「勝負をかけてきた」ということですね。私たち法律家は最初、「そう来たのか。こんな切り口で改憲を持ち出してきたのか」という一種の意外感がありました。
林 というのは?
西 私たちは自民党の憲法改正草案など、改憲の動きをずっと追い掛けて批判してきました。改憲勢力の“王道”としては、9条2項を削除して自衛のための軍隊、「自衛軍」とか「国防軍」を持つこと。それをストレートに狙ってくると思っていたのが、1項と2項は残した上で、自衛隊を9条に書き込むという「加憲論」でやってきた。ある意味、「ふわっ」としたソフト路線で改憲を仕掛けてきたという印象が強かったですね。
「日本会議」系のブレーンの文書を見ると、はっきり書いてあります。衆参両院で改憲勢力が3分の2の議席を獲得して、憲法改正をいつでも発議できる状況にあるいまだからこそ、戦略を考えなければいけないと。
改憲派も認める平和主義の考え
同時に、日本国民には戦後、9条に基づく平和主義、戦争をしない、紛争を平和的に解決するという考え方や思想が深く形成されて、まさに日本人の血肉になっていることは実態として認めざるを得ないと、彼らも言っています。
メディアの世論調査でも、9条については「変えるべきではない」という答えが圧倒的ですね。9条と日本人との関係はおろそかにできず、下手に手をつけると、大変なことになるということは、改憲勢力も分かっているのです。
酒巻 「加憲論」を持ち出してきたのは、そうしないと改憲の道を突破できないということでしょうか?
西 ええ。そこで、彼らが従来言ってきた「国防軍」「自衛軍」について、どういう形で国民に受け入れてもらうかといえば、「加憲論」で自衛隊を明記するという形で問う。いわばハードルを下げて憲法改正を乗り越えてもらう。憲法改正実現という“成功体験”を積み上げていくという戦略ですね。
いまある自衛隊書き込むだけ?
酒巻 憲法問題で青年と対話すると、「頑張っている自衛隊を明記して何が悪いの?」という声を、結構聞きます。
西 なるほど。安倍首相は「いまある自衛隊をそのまま書き込むだけだ」と言いますね。しかしこの説明は、聞く人が持っている自衛隊のイメージをミスリードしていると思います。ここで想定されているのは、3・11(東日本大震災)の災害救助で行方不明者を捜索し、救援物資を運んでいる自衛隊の姿。関西では阪神淡路大震災(1995年)があり、最近では熊本地震でも自衛隊の救援活動がありました。目に見える自衛隊の活動はそういうものですね。
でも、ほとんど目に見えませんが、現実には南スーダンで自衛隊員はどんな状況で活動していたでしょうか。本当に戦闘行為が起きている中で、いつ戦死者が出てもおかしくなかったわけです。「この自衛隊を明記していいのか」と問われると、意見も違ってくると思いますが、安保法制の下で「駆け付け警護」などを行う自衛隊の姿は、まともに報道されていません。「米軍と一緒になって戦争をする自衛隊」ではなく、「人の命を救う自衛隊」をイメージさせる。「それを明記するだけだから、どこが悪いのか?」ということになりますね。
林 ずるいやり方です。
西 もっと情緒的に、「自衛隊員とその家族を日陰者のように扱うのは失礼だ」とか、「自衛隊にもっとリスペクトの気持ちを表すために、明記するのが礼儀だ」という声もあります。
酒巻 「明記しても何も変わらない」というなら、書かなくてもいいはずですね。
林 実際にはどんな形で自衛隊を明記するのでしょう。
西 憲法への「書きぶり」という問題ですね。考えられるのは、「我が国を防衛するため」「必要最小限度の実力組織」などの言葉を散りばめ、そのための自衛隊というふうに位置付けることでしょう。これなら一見、「そうだよね」と思ってしまいそうで。
ところが、どうやって法律としての整合性を持たせるかという問題が出てきます。9条1項は「戦争放棄」を目的に定め、2項ではその手段として陸海空軍を持たないし、戦争をする国の権利(交戦権)も認めていません。
自衛隊は英語で書くとよく分かりますが、Japan Self-Defence Forces。安保法制の下では、武力行使と一体の軍事的な組織そのものです。これを3項で明記すれば、2項で戦力を放棄していることと整合性がとれません。法律の世界では、後にできた法律は先にある法律よりも解釈として優先されるという一般論があるので、「自衛のため」であっても軍隊を持つなら、そのことが優先されるわけで、いくら2項を残してもそれは空文化、死文化して、意味がなくなります。ここからどんなことが波及してくるでしょうか。
酒巻 1項、2項があっても、日本の年間の軍事費は5兆2千億円にまで膨れ上がっています。トランプ米大統領から武器を買えと言われて、安倍首相は「分かりました」と。3項で自衛隊を明記すれば、やりたい放題になるのでは。
西 その通りです。「いままでの自衛隊を書き込むだけ」と言いながら、いままでと同じである保証がどこにあるでしょうか。この点は、説得力をもって語れると思いませんか。
林 なるほど、よく分かります。
酒巻 世界には9条をリスペクトする人が多いじゃないですか。もし9条に自衛隊を明記してしまったら、日本に対する国際的な評価も変わってくると思います。70年以上、戦争をしてこなかったのに、安倍首相のせいで「戦争する国」になってしまったら、世界中の信用を失うのでは。
西 昨年秋に大阪憲法会議・共同センターが開いた「秋の大学習会」で講演した東京大学名誉教授の広渡清吾さん(「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」呼び掛け人)は、9条は日本の国内だけの問題ではないと強調しました。「日本は第2次世界大戦の加害国として、二度と戦争はしないと誓い、その手段まで放棄した。9条を変えることは、アジアの国々に対して、『それをやめました』と宣言することになる。いままで安心してみていた国々は、『戦後70年経って日本は反省を忘れた』と思うかも知れない」とおっしゃいました。
銃弾を撃たない自衛隊員の誇り
林 僕の友人に自衛隊員がいます。安保法制が大問題になったときに、「どう思う?」と聞いてみたのです。彼は「表立っては言いにくいけれど、70年間、人に向けて銃弾を撃っていないことを、すごく誇りに思っている」と話してくれました。でも安保法制ができれば、銃弾を撃つことができるようになってしまう。「自分は任務としてやらなければいけないと思っている」と。
西 う~ん、それはとても重い言葉ですね。
林 はい。友人自身、とても葛藤していました。自衛隊が明記されると、その友人も含めて隊員が海外で戦争することになるのかと思うと…。
西 大阪弁護士会の第1回「9条連続学習会」(2017年12月9日)の講師に、柳澤協二さんをお迎えしました。柳澤さんは小泉内閣の時に内閣官房副長官補として政権の中枢にいて、イラクやアフガニスタンの特措法をつくった立場の人。当時、柳澤さんが何を一番考えたかというと、とにかく「戦死者を一人も出さない」ということ。逆に「一人でも戦死者を出す、他国に銃を撃ち、撃たれる状況をつくれば負け。それをいかに回避するか」と当時の思いを語りました。
海外から自衛隊員が帰還してきた時、柳澤さんは当時の小泉首相に「一人の戦死者も出さず、一発の銃声も他国の人民に発しなかったことは、誇りに思ってください」と言ったそうです。それが柳澤さんの、防衛官僚としての誇りなのです。そこまでの覚悟、重みを感じていたのです。一人一人の隊員の命、家族の思いがあるわけですから。
安保法制の下で自衛隊が南スーダンに行って帰ってきましたが、もし自衛隊が明記されれば、憲法上の位置付けをもって、それがやられることになります。
酒巻 自衛隊員は青年が多いのです。地方では、就職先がないとか、進学したいけれど無理だから、とりあえず入隊するとかいう青年が増えています。私たちにとって他人事ではありません。夢を諦めて、自衛隊への道を選ぶしかなかった青年たちが、海外で人を殺す。そういうのって、本当におかしい。
安保法制反対のデモをした時、自衛隊員が一緒に歩いてくれたことがあるんです。解散場所で、彼は隊員証のようなものを見せてくれて、「僕、これ(自衛隊員)です。頑張ってください」と声を掛けてくれたことが忘れられません。
「戦争の足音」が聞こえてくると
林 衆院選の時も、こんなことがありました。JR・京阪京橋駅で対話宣伝をしていると、自衛隊員の男性が来て「戦争の足音が聞こえてくる。本当に止めないといけない。自分は自衛隊員だから、(改憲されたら)どうなるかが分かる」と言ってくれたのです。
酒巻 自衛隊員の中にも、声を大にして言えないけれど、改憲に反対している人たちがいる。国民だけでなく、自衛隊員すら置き去りにして9条改憲の話が進められていることに、怒りを覚えます。安倍首相とか、戦争をしたい人は、自分たちが犠牲にならない立場でものを言っている。“置き去り感”がすごくあります。
西 本当にそうですね。現場を知っている人は、実弾が飛び交うとはどういうことか、人が死ぬとはどういうことなのか、「戦争のリアル」が分かる。しかし、改憲の旗を振っている人たちは、戦場に行く必要も、可能性もない。そういう構造がありますね。
思い出すのは、田中角栄さんとか後藤田正晴さんら、かつての自民党の政治家。彼らが口ぐちに言っていたのは、「自分たちのように、戦争を現役で知っている人間が政界にいるうちは、まだ大丈夫だ」と。
酒巻 そうだったのですか。
西 ええ。自民党、保守派でも、良識ある人たちはそう言っていたわけです。そして「引退して次の世代、戦争を知らない世代が政権の中枢に座るとき以降が危ないのだ」と。これがいま、言葉の上だけでなく、現実のものになってきている。
酒巻 戦争を知っている世代が政治の場から去って、安倍首相とか、戦争を知らない世代の人たちは、歴史認識もちゃんとしていないし。怖いです。
西 「自国の利益」やプライドだけで物事を考え、自分だけが正義だと思っている。それは怖いことですね。
北朝鮮の問題で青年たちの声は
――北朝鮮が核・弾道ミサイルの開発を続けていて、改憲派はそのことを9条改憲のための世論づくりにも利用しています。
西 北朝鮮の問題は、青年はどんなふうに受け止めていますか?
酒巻 衆院選の時対話では、「北朝鮮は怖いし、(武力で)やり返すべきだ」という声と、「対話で解決すべきだ」という声と、2極ありました。でも「やり返すべき」という青年も、よく話を聞いてみると、本当はその手段は選びたくないと言うのです。「相手が聞かないから、仕方がない」と。ただ、土台は「戦争はしたくない」という思いの青年が圧倒的に多いです。
西 なるほど。
林 どこか「武力でやり返す」といった、「簡単なこと」に流れがちです。「対話は時間の無駄」とか。安倍首相がそう言っている姿も流されていますし。一方で、「対話できるなら対話はいい」という点で一致できると思います。
西 そもそも北朝鮮という国は一体何をしたいのか。どうしてミサイルばかり打ち上げるのか。どうしたら話し合いになるのか。そんなことを一緒に考えることも大切ですね。
酒巻 いまは事象ばかり報道されて不安があおられ、その「なぜ」「何」が分からないようにさせられています。東南アジアでは平和共同体ということで、話し合いの関係をつくってきていますよね。対話は時間がかかるけれど、信頼を生むと思います。でも北東アジアにはそういう土台がない上に、安倍首相のような対応では、ますます解決できそうにない。外交問題って国民の命を預かることでしょ。それを逆手にとって、「(軍事的な)備えをしなければ」というふうにもっていく。安倍首相の北朝鮮対応は全然「9条的」ではありませんね。
西 土台にあるのは武力による威嚇ですから。9条とは正反対ですね。北朝鮮が最終的に諦めて核を放棄するまで圧力を掛け続けても、それまでにどこかで爆発すればどうするのか。そうならないためにどうするのか、という発想がありません。
酒巻 日本が戦火に巻き込まれたらどうなるかは抜きに、相手が一方的に攻撃されるだけと思っている人もいます。
西 年配の方で、ご自身が空襲や原爆を体験した人は、すごい危機感を持っています。戦争で人が死ぬということが、どういうことか分かっているのです。ところが安倍首相は国会答弁で、「もし北朝鮮のミサイルを撃ちもらしたら、アメリカが報復してくれる」と言いましたし、麻生副総理に至っては「最後の手段は核シェルターだ」と公言しています。
酒巻・林 え~!
西 「撃ちもらす」ということは、どこかに落ちているわけですが、それは安倍首相の視野の外なのです。僕たちは大切にしないといけないのは、「自分や家族、友達がそこにいたらどうなるか」というところから議論するということではないでしょうか。
核シェルターを買える人がどれだけいるのか。もし買えても、それで生き延びる世の中はどんなものなのか。実は、武器や核シェルターで最後は誰がもうかるのか、という構造が見えてきませんか?そのために国民は9条を失うかも知れないのです。
林 酒巻さんも言いましたが、青年と語り合うと「戦争はしたくない」というのは、根底ではみんな一致しますね。対話による解決こそが必要だと訴えていかなければ。
改憲発議止めるには?
改憲を発議して国民投票を狙う
――自民党は1月から始まる通常国会で憲法改正の発議を行うという、改憲スケジュールを描いていますが。
西 まず改憲案をつくって、衆参両院の憲法審査会に出して議論し、衆参両院議員の3分の2以上の賛成で国会発議となります。同時に国民投票の日を決めます。発議から国民投票までの期間は最短で60日、最長で180日です。
酒巻 調節できるのですか。
西 ええ。最長で180日といっても、実際にはあっという間でしょう。
林 国民投票って、日本では誰も経験していませんね。
西 そうです。諸外国では憲法改正の国民投票の実例はありますが、日本ではそのために必要な法律も10年前にできたばかりです。海外では憲法改正を発議した後、必ず総選挙を1回はさむという制度をもつ国もあります。なぜかというと、発議自体が正しいか、国民投票の前に民意を問うことで、ワン・クッションおくわけです。
酒巻 それはいいですね。
林 日本にはありませんね。
西 ないです。で、発議されたら国民投票まで投票運動に入るわけですが、これがなかなかくせ者です。
酒巻 イメージが湧きにくいですが、「大阪都」構想の住民投票(2015年)の大規模版のような感じでしょうか。
西 そうですね。「大阪都」構想のときもそうでしたが、基本的には運動は自由にできます。賛成派も反対派も、それぞれビラをつくって配れるし、個別訪問もできます。投票広報もつくられ、テレビの政見放送のようなものもあるでしょう。
ただ、それ以外にお金を出して新聞に全面広告を出してもいいし、30秒コマーシャルを民放で流してもいい。有名人と契約して、憲法改正のプロモーションビデオをつくっても構わない。反対派もそれらをやっていいわけですが…。
酒巻 お金がない(笑い)。
林 権力やお金をもっている人、つまりは改憲派が圧倒的に有利ですね。
西 そうですね。僕たちも一生懸命、改憲反対で運動するけれど、発信力という点では、テレビのゴールデンタイムにコマーシャルを流すほうが有利じゃないですか。例えば関西なら、お笑い芸人を起用して、難しいことは言わずに、「新しい憲法で、楽しいにいきましょや」とか。
酒巻 ありそう…。
林 あるなあ。
酒巻 お金・権力と、草の根とのたたかいですね。でも、対立や分断も持ち込まれますよね。「大阪都」構想の住民投票のときも、僅差で反対派が勝ちましたが、賛成派から「お前ら、大阪市の未来をつぶしやがって」と言われたこともありました。
勝利した一番の要因は何なのか
西 住民投票でも橋下さん(徹前大阪市長)たちは、コマーシャルとかいろんなことをやりましたね。
林 やりました。
西 でも、「大阪市をつぶすな」と訴えた私たちの側が最終的に勝ちましたね。私は大阪市民ですが、薄氷を踏む思いでした。勝利した一番の要因は何かというと、維新の会の物量作戦やイメージ作戦で苦しい思いをしたけれど、私たちは街に出て、日常のつながりの中で「大阪市をなくさんといて」と頑張りましたね。「大阪市の素晴らしい文化と財産を守り抜こう」という思いの部分への共感が、最後の最後に勝利を導いたのではなかったでしょうか。
憲法改正でも、9条の精神はどこから生まれて、どうして私たちの社会の中で重要なのか。その思いがどこまで広がるかによって決まると思います。いくらイメージ戦略がふりまかれても、最後の最後に、人間として「本当にこれでいいのか」「この国をどうつくっていくのか」を自分自身に問うてみたときに、私たちを信用するか。改憲派を信用するのか。その勝負になったときに、人間に対する信頼が最後の決め手になるでしょう。
酒巻 住民投票は「どういう大阪市にしたいのか」と、要求を語り合う機会にもなりました。憲法改正の国民投票でも、「平和な日本をどうつくりたいのか」ということを話し合うことになりますね。
西 そうですね。紛争を解決するために、私たちはどんな生き方をしたいでしょうか。力や脅しで相手に言うことをきかせるのか。それはやめて、相手の言い分も聞き、こちらも主張して、折り合いをつけて解決していく道か。これからの日本はどちらを選ぶのかということです。
酒巻 そこに日本国民は向き合わないといけないのですね。
西 私たちは国民投票になったときにどうたたかうかについて、いろんな側面で考えなればなりませんが、いまこの社会状況の中では、改憲発議をいかに止めるかが運動の中心課題です。
林 はい。よく分かります。
改憲発議止める最大のポイント
西 改憲発議を止める最大のポイントは、「国民投票で負けるかもしれない」と改憲派に本気で思わせることです。改憲派も国民の意思を測りかねています。9条への自衛隊の明記についての世論調査全体では、賛否はほぼ拮抗しています。
国民の間で「明記賛成」が圧倒的多数かというと、そうではありません。何か変だと思う人もいる。分からないという人もいる。これが大きく動いて、「明記反対」が賛成より10ポイント以上高くなれば、改憲派は怖くて発議できないでしょう。ですからいままさに、国民投票をやっているのと同じだという人もいます。日々、9条でいくのか、やめるのかを国民に選んでもらう、その運動の中軸が、「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が呼び掛けている「3千万署名」です。
林 なぜ「3千万」が目標なのでしょうか。
西 有権者は1億100万人くらいですが、先の衆院選の投票率は約53%。約5830万人が投票しました。国民投票で投票する人がどれくらいか分かりませんが、6千万として、半分が3千万です。
「日本会議」系の「美しい日本の憲法をつくる国民の会」という団体が、憲法改正実現へ1千万人の賛同者を集める運動をやってきました。用紙にカラーで笑顔の子どもたちの写真を載せて、「この笑顔を守るために」と自衛隊明記など7項目の改憲内容を挙げて、賛同者とその紹介者を書くというものです。紹介者は住所・氏名だけでなくメールアドレスを書く欄もあります。これは国会に提出する請願署名ではなく、名簿づくり。国民投票になれば、これに基づいて連絡するという前提です。彼らも国民投票で改憲成立が実現する過半数を取るために、そのコアな部分となる1千万人を組織しようとしているのです。
酒巻 怖いなあ。
林 向こうも本気、草の根でやっているのですね。
酒巻 私たちも頑張らないと。民青同盟は「3千万署名」とともに、「若者憲法実態アンケート」を続けています。「あなたが思う平和って何ですか」「安倍政権が9条を改憲しようとしているのを知っていますか」という問い掛けを入り口に青年と対話しています。
改憲の動きに対する危機感もありますが、青年と一緒に「日本の未来を考えよう」という取り組みにぜひしたい。私たちは日常的な要求から出発して対話をしていて、青年の間で平和への思いが強いことを実感しています。「戦争嫌だな」「平和がいい」という人たちを広げて、運動をつくる。それが野党の共闘を進めることにもつながると思います。「3千万署名、やるっきゃない」、ですね。
林 いままでにやったことのない取り組みをしたいです。
後半は2018年1月14日付に掲載
(大阪民主新報、2017年12月31日・2018年1月7日合併号より)