おおさかナウ

2018年06月10日

声を届けて
たつみコータロー参院議員の国会論戦
二重三重に機能しなかった安全網 母子心中未遂事件②

(続き)

公営住宅で発生

 「最も福祉や手当てを必要とされる公営住宅で、悲惨な事件は起こった」

 千葉県銚子市の母子心中未遂事件を取り上げた質問(2015年4月参院予算委員会)で、たつみ議員は、「健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を低廉な家賃で賃貸し、生活安定と社会福祉増進に寄与する」と定めた公営住宅法の条項を示し、「母親の収入では家賃は減額できたのでは」と政府見解をただしました。

 「県基準で家賃減額率80%の適用は可能」(国交省)との答弁を踏まえ、滞納が始まってから減免制度を知らせなかった千葉県当局の問題点を指摘。▽滞納が生じたら収入や事情を把握する▽やむを得ない状況にある者に家賃減免措置を講ずる――との国通知(89年11月)を示し、「滞納後は(母親との相談が)されていない」「徴収業務を熱心に強化する国交省は、力の入れるところが違う」と改善を求めました。

排除と切り捨て

貧困問題解決へ政府を追及するたつみ議員=2016年3月9日、参院予算委員会

貧困問題解決へ政府を追及するたつみ議員=2016年3月9日、参院予算委員会

 「住宅セーフティネット」からこぼれ落ちた母親を、「最後のセーフティネット」と言われる生活保護制度も受け止めることができませんでした。

 事件の半年前、母親は、市役所保険年金課で短期保険証が交付された際、生活保護認定を受ければ保険料の減免対象になると、隣の福祉課窓口で保護申請するよう案内されました。

 「1万円でも2万円でもいい」。そんな望みを込め生活状況を説明した母親に対し、福祉課職員は「申請してもあなたに支払われる額はない気がする」と話したといい、この時申請できなかった母親は、その後再び福祉課を訪ねることはありませんでした。

 「家賃も滞納し短期証も発行されている。それだけ困窮した母親が生活保護の申請に伺って、概要だけ聞いて帰ったというのはあり得ない話なんです」

 16年3月参院予算委員会。事件を取り上げた2度目の質問で、国保料滞納を把握していた福祉課が、生活保護認定によって保険料が免除されると知らせなかった対応を問題視。「教示義務違反であり、生活保護を必要としていた母親を追い返したに等しい」「最後のセーフティネットである福祉部局でこのような対応をされれば、救える命も救えない」と追及しました。

未然に防げたと

 たつみ議員の一連の質問で、安倍晋三首相が「住宅部局と生活保護を扱う民生部局の間で情報共有して家賃の軽減策を講じるなど、居住安定の支援策を要請した」と答弁(15年4月)。厚生労働省は、15年6月、「切迫した生活困窮者を相談につなぐ連携体制の構築――A市の事件から見える課題」と題した自治体宛て文書を作成し、「関係機関との密接な連携体制が構築されていれば、未然に防ぐことができた事案」と認めました。

 16年3月の質問で国交大臣は、「公営住宅入居者に家賃滞納がある場合、明け渡し請求に至る前、訪問等により事情の把握に努める」と答弁。厚労省援護局長は「保護申請権を侵害しないことはもとより、侵害していると疑われるような行為も厳に慎むべき」だとし、厚労大臣も「水際作戦はあってはならない」と言明しました。

 「住居を失うことの怖さを象徴している。居住確保がいかに重要か」「強制退去のとき、居住支援を必ず行ってほしい」「必要とされる人に生活保護が行き渡っていない」――公営住宅や社会保険、生活保護など何重にも張られたセーフティネットが機能しなかった事件の本質を突く国会質問は、かつて生活支援の現場で9年間実践した経験と確信に基づいていました。

意を決して叩き

 2010年6月。大阪市此花区内の住宅街を歩いては戻り、通り過ぎてはまた引き返す1人の女性がいました。
 意を決して叩いた扉は「此花区生活と健康を守る会」事務所。数年前に自宅ポストに入っていた「生活相談に応じます」と書かれたビラを手にした女性を出迎えたのが、此花生健会事務局員のたつみコータローさんでした。

(続く)


(大阪民主新報、2018年6月10日号より)

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