膨大なコストに大きな「特別区」格差
住民投票を断念すべき
第13回法定協 山中大阪市議が主張
大阪市を廃止・解体して「特別区」に再編する、いわゆる「大阪都」構想の制度設計を議論する大都市制度(特別区設置)協議会(法定協)の第13回会合が2日、大阪市役所内で開かれ、日本共産党と公明党の質問が行われました。
法定協は第11回会合(5月28日)で自民党が提出した廃止動議をめぐって紛糾し、日本共産党と公明党の質問はできませんでした。
第12回会合(6月1日)では、自民党の動議を維新・公明の反対多数で否決しました。6月20日に開く第13回会合で両党の質問を行う予定でしたが、同月18日の大阪北部地震を受けて延期されていたもの。
初期費用は859億円
日本共産党の山中智子大阪市議団幹事長は、大阪市廃止と「特別区」設置による効果額は皆無であるにもかかわらず、膨大なイニシャルコスト(初期経費)とランニングコスト(運用経費)がかかると指摘。副首都推進局などが主張する「中核市並みの」の「特別区」にした場合、新庁舎の建設やシステム改修費などイニシャルコストは総額859億円となる試算結果を示し、「こんな無駄はない。とても市民の理解は得られない」と述べました。
絞り込まれた4区案(注)では「特別区」ごとにイニシャルコストは山中氏の試算で、第1区300億円、第2区(現在の本庁舎を活用)43億円、第3区171億円、第4区276億円。これらは国や府が出すものではなく「特別区」の負担となり、住民サービスへのしわ寄せは避けられないと強調。同時に、イニシャルコストで「特別区」間に生じるアンバランスも問題だと述べました。
自主財源と収入が矛盾
山中氏は、「特別区」の歳入面での格差に言及。第2区の自主財源(区民1人当たり)は10万2359円で4区中最高だが、財政調整後の歳入(同)は23万304円で4区中最低になると指摘(グラフ)。「自主財源の大きいところが財政調整をすると最も収入が低くなる。こんな矛盾したことはない」「独立した基礎自治体になるのに、自主性も独立性もなく、膨大なコストをかけて(『特別区』に)分割する意味がない」と断じました。
大阪市を解体して「特別区」に分割すると、財産にも格差が出る指摘。土地の賃料収入では第1区にはUSJ(ユニバーサルスタジオジャパン)の賃料など約27億円が帰属する一方、第2区は約1億3万円に過ぎないことなどを示しました。
制度いじりをいつまで
山中氏は、大阪市を廃止して、政令市としての財源・権限を府に取り上げる上、4つの「特別区」に分割することは地方自治の破壊であり、市民にとってデメリットだと強調。「(大阪北部地震の)震災を受けて、災害に強いまちづくりなど、住民の安全・安心のために力を注いでほしいとの願いも一層増している。こんな制度いじりをしている場合ではない」と力説し、再度の住民投票は断念すべきと述べました。
(大阪民主新報、2018年7月8日号より)