おおさかナウ

2018年07月29日

市民の手で北東アジアに平和を
市民団体共催の集会に300人

 朝鮮半島非核化や憲法9条に基づく平和外交など北東アジアにおける平和構築の課題と展望を考える講演会が22日、大阪市北区の中之島公会堂で開かれ300人が参加しました。早稲田大学アジア研究機構客員教授の康宗憲さんが、平和を願う市民の力で朴槿恵前大統領を退陣させたキャンドル革命や、「4・27板門店宣言」「米朝首脳共同声明」の意義などについて講演しました。

北東アジアの平和構築に向けた課題と展望を学びあった集会=22日、大阪市北区内

北東アジアの平和構築に向けた課題と展望を学びあった集会=22日、大阪市北区内

地殻変動と言っていい変化

 「いま朝鮮半島で地殻変動と言ってもいい大きな変化が起きている。朝鮮半島が自主独立の中立国となれば、北東アジアに平和と安定がもたらされる」

 康氏は「北東アジアの平和構築に向けて」と題した講演の冒頭そう語り、▽日本帝国主義による植民地支配と朝鮮「義兵」の抵抗闘争▽米露2国の分割占領と冷戦の中で起きた朝鮮戦争――など半島をめぐる歴史に触れながら、「戦争や南北分断を願った朝鮮民族は誰一人としていない。第2次世界大戦後、朝鮮半島に自主独立の単一国家を保障しなかったことが、北東アジアに紛争と緊張をもたらした」と語り、今回相次いで開かれた南北・米朝の首脳会談と共同声明の意義を述べました。

平和を求める人々の思いが

 康氏は、4月27日の南北首脳会談が非武装地帯に位置する板門店で開かれた意味を紹介。南北トップが手をつないで38度の軍事境界線を行き来したエピソードを示し、「70年にわたり民族を分断した高さ10㌢のコンクリートの壁を、無力化させた瞬間だった」と述べました。

 北朝鮮当局が1月に発した対話促進のメッセージや平昌オリンピックの南北合同入場行進など、対話路線に舵を切った変化の実例を示し、「いつ戦争が起きてもおかしくない緊迫した状態を変えたのは、平和を求める人々の熱い思いだった」と強調。鉄道と道路の連結、南北共同連絡事務所の設置(開城市)や段階的軍縮の実現、終戦宣言と平和協定締結に向けた会談開催など13項目を盛り込んだ南北トップの「板門店宣言」は、「未完成に終わった朝鮮半島の『冷戦』構造を解体し、南北分断の解体にもつながる意義を持つ」と述べ、さらに戦後日本の進路を決定付けたサンフランシスコ体制にも、大きな変動を余儀なくさせる可能性を持つと指摘しました。

9条が力を発揮する時代に

 6月12日の米朝首脳会談後に発表された共同声明の前文に「朝鮮半島の非核化」が盛り込まれた意義を強調。北朝鮮の核放棄だけでなく、「南北トータルで一切の核兵器が存在しないこと」だと指摘し、米国など制裁と圧力一辺倒の対朝鮮政策の破綻、北朝鮮の完全非核化の展望などを述べました。

 軍事同盟に依拠した虚構の「脅威」論にしがみつく日本政府の現状について、康氏は、平和憲法の国に米軍基地が存在し、非核三原則を定めながら『核抑止力論』を唱えて核兵器禁止条約に反対する深刻な矛盾があると批判。「南北統一への流れが加速すれば、北朝鮮の『脅威』をあおって強権政治を続ける手法は通用しない時代になる。日本でも憲法9条が損なわれることなく、本来の力を発揮する新しい平和の時代を切り開くことができる」と強調しました。

市民の力で政治変えられる

 最後に康氏は、韓国で朴槿恵前大統領を罷免・訴追に追い込み、文在寅大統領を実現した「平和ろうそくデモ」の活動を紹介。「われわれは平和を望む。でも平和は自ら訪れない。平和に至る道はない。なぜなら平和が道だから」と書かれたデモ宣言文を読み上げて、「一人一人が平和の道になるとひたむきに願った市民の力で、韓国の政治は変わった。前途は多難だが、日本の市民運動が平和の動きに連動し、東アジア・北東アジアの平和に向けたうねりを一緒につくっていこう」と呼び掛けました。

 集会では、生野朝鮮初級学校の生徒が民族音楽に合わせ朝鮮舞踊を披露。「朝鮮学校の高校無償化免除に反対する連絡会」の長崎由美子事務局長が活動を紹介しました。

 アジアと世界の平和のために運動を続ける共催7団体(大阪アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会、大阪革新懇、大阪平和委員会、安保破棄・諸要求貫徹大阪実行委員会、日本コリア協会・大阪、日本ベトナム友好協会大阪府連合会、日本ユーラシア協会大阪府連、大阪原水協、日中友好協会大阪府連合会)の活動が映像で紹介されました。


(大阪民主新報、2018年7月29日号より)

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