おおさかナウ

2018年09月23日

大阪市総合教育会議
学テ反映評価制度 検討始める
出席者から慎重論も

 吉村洋文大阪市長が8月に全国学力・学習状況調査(全国学テ)の調査の結果を、教員の評価や給与、学校予算などに反映させる方針を表明したことを受け、吉村市長と教育委員でつくる大阪市総合教育会議が14日、大阪市役所内で開かれ、制度設計の検討を始めました。

吉村市長〝年度内に制度設計〟

学校予算と教員の一時金に反映

大阪市教委の総合教育会議=14日、大阪市役所内

大阪市教委の総合教育会議=14日、大阪市役所内

 大阪市は全国学テの平均正答率が、2年連続で政令市20市中、最下位に。吉村市長は8月2日、全国学テに具体的な数値目標を設定し、その結果の達成状況に応じて校長、教員のボーナス(勤勉手当)や学校に配分する予算額に反映させる制度の導入を目指す考えを示しました。

 吉村市長は「学力を上げればいいという立場には立たないが、学力を上げることを放棄しない。結果として最下位を脱出できるようにする」と述べて制度設計を要求。大阪市特別顧問の大森不二雄・東北大学教授(元市教育委員長)が、制度案を提案しました。

 それによると、市の独自テストや府の「チャレンジテスト」の結果も使い、評価基準となる「教員別学力向上指標」(仮称)、「学校別学力向上指標」(同)を開発し、教職員や校長の人事評価に反映するとしています。

志望者が大阪市から逃げる

 出席した教育委員からは、「大阪市の教員を希望する学生が逃げる危惧もある。給与の減額ではなく、どう支援するかが必要」(巽樹理・追手門学院大学講師)、「テストの対象と対象外(音楽や体育など)の教員とで公平な基準をつくれるのか」(森末尚孝弁護士)など、慎重論も相次ぎました。

 吉村市長は、今年度内に制度設計を行って2019年度に試行実施した上、20年度に実施して21年度のボーナスに反映させるという「スケジュールありき」で検討を進めるよう、市教委に指示しました。

教育条件整備こそ必要

大阪市教など400団体が要請書

大阪市教委に緊急要望を提出する大阪市教の宮城登委員長ら=13日、大阪市役所内

大阪市教委に緊急要望を提出する大阪市教の宮城登委員長ら=13日、大阪市役所内

 大阪市学校園教職員組合(大阪市教)、大阪教職員組合(大教組)、子どもと教育・文化を守る大阪府民会議の代表が13日、吉村洋文市長と山本晋次教育長に、全国学力・学習状況調査(学テ)の結果を、教員の勤務手当や学校予算に反映することをやめ、少人数学級の拡充など教育条件の整備を進めるよう求めて、計400団体分の緊急要請書(第1次分)を提出しました。

 要請書は、「全国学テの結果を用いた教育行政による違法な学校教育への介入」と批判しています。制度を導入すれば、子どもと教職員・学校は全国学テによる競争を強いられ、管理と統制がいっそう進み、学力の向上どころか不登校や校内暴力行為の増加など、学校の「荒れ」の深刻化につながると強調しています。

 文科省の結果分析からも、市民の経済・生活を底上げし、保護者が子育てにもっと力を注げるようにすることが大切で、少人数指導など教育条件の整備こそ市長の権限でやるべきだと力説。全国学テは、学力や学習状況を把握するための「行政調査」であり、学力の一側面しか測れないものであり、これまで「行政調査」を教職員の給与や学校予算などに利用した国・自治体では、いずれも破綻していると警告しています。

 

 日本共産党府委員会の小林裕和・文教委員会責任者は14日、「全国学力調査結果などを学校と教員評価に反映させる方針の撤回を求めます」との談話を発表しました。全文は次の通りです。

全国学力調査結果などを学校と教員評価に反映させる方針の撤回を求めます

2018年9月14日 日本共産党大阪府委員会文教委員会責任者 小林裕和

一、大阪市長と教育委員会で構成される市総合教育会議は本日、吉村洋文市長が示した全国学力・学習状況調査(全国学力調査)や大阪市の独自テストの結果を学校予算と教員評価・給与に反映させる方針について協議しました。
 全国学力調査は、文部科学省が実施する行政調査であり、調査結果を教員評価などに反映させることはできません。学力調査の目的から逸脱するためです。

 私たちは、全国学力調査や大阪市の独自テストの結果を学校と教員評価に反映させる方針の撤回を強く求めます。

一、維新大阪市政はすでに、全国学力調査結果を学校別に公表し、さらに市独自テストを小学3年生から6年生と中学3年生に上乗せしてテスト漬けに陥らせています。調査結果を教員評価などに反映すれば、いっそう“学力テスト対策”が学校と子どもに強制され、教育がゆがめられます。これで一番被害を受けるのは大阪の子どもたちです。

 憲法が保障する教育の自由・自主性を踏まえ、政治権力による教育への介入は許されません。

一、いま大阪市の教育行政がやるべきは、子どもの命を守るブロック塀対策や小・中学校全学年に35人学級を広げるなど教育条件の整備です。

 加えて、問題の根本にある全国いっせい学力テストを廃止することが必要です。学力調査は抽出で行い、その結果は教育条件の改善などに生かされるべきです。

 日本共産党は、市民の切実な教育要求にこたえる取り組みを進めるとともに、大阪の教育を壊す維新政治を終わらせる市民共同の発展へ力を尽くします。

(大阪民主新報、2018年9月23日号より)

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