学テ結果反映の人事評価制度
行政の公平性に反する
大阪市議会教育こども委 井上議員が批判
大阪市議会教育こども委員会が20日開かれ、吉村洋文市長が全国学力・学習状況調査(全国学テ)や府市の独自テストの結果を教員の人事評価や給与に反映させるとする方針を打ち出した問題について、日本共産党の井上ひろし議員が質問しました。
全国学テの平均正答率で、大阪市が2年連続で政令市20市中、最下位だったのを受け、吉村市長は8月、全国学テに数値目標を設定し、その結果の達成状況に応じて校長、教員のボーナス(勤勉手当)や学校に配分する予算額に反映させる新制度の導入を表明。これを受けて大阪市総合教育会議で、今年度内の制度設計に向けて議論が始まっています。
井上氏は、大阪市で教員が不足し、教員の長時間労働が解消していない中で、全国学テや市の小学校学力経年調査はじめテスト回数の増加が教員の多忙化に拍車を掛けていると指摘。「テスト本来の趣旨は課題を見つけること。回数が多すぎて課題が精査できず、対策が十分とれていないから、学力が上がらないのではないか」と述べました。
その上で吉村市長に、「個々の教員を評価する最も大切な基準は何か。学力向上のためにどんな手立てが必要か」と質問。吉村市長は「公正な評価が大事。最下位を脱出する共通目標を立て、結果を出した教員をきちんと評価する人事評価制度が大事だ」などと答えました。
これに対し井上氏は、国家権力の教育への関与のあり方が問われた「学力テスト旭川事件」の最高裁判決(1976年)に言及しました。
同判決は学力調査を適法としたものの、成績競争の風潮を生み、教員の自由で創造的な教育活動を萎縮させる恐れがあるなどの場合は、違法となる可能性があることを示唆していることを紹介。吉村市長の方針はこれらの点に抵触するのではないかと迫りました。
さらに学力調査結果と家庭の経済状況が密接に結び付いている中で、子どもの貧困率などが高い教育困難校に勤務する教員が、新しい人事評価制度によって給与などで不利益を受けるのは行政の公正性に反すると強調。「締め付けではなく、教育現場に寄り添う姿勢を示すべき」と語りました。
(大阪民主新報、2018年9月30日号より)