万博の理念に反するカジノ 大阪市議会
日本共産党・井上ひろし議員が追及
巨大開発で市民に負担拡大
2025年の大阪万博開催が決まったのを受け、大阪市の吉村洋文市長は会場となる大阪湾の埋め立て地・夢洲の整備費用や、夢洲への地下鉄中央線延伸のための調査費などを盛り込んだ補正予算案を同市議会に提案しました。11月30日の大阪市議会本会議で一般質問に立った日本共産党の井上ひろし議員は、地下鉄延伸は万博のためではなく、吉村市長らが万博開催前年の24年に同じ夢洲で開業を狙う、カジノを核とした統合型リゾート(IR)の整備費用そのものだと追及。「こんな無謀な開発計画は、決して市民に理解されない」としてカジノ誘致を断念するよう迫りました。
負担の拡大は全く不透明だ
井上氏は、夢洲の埋め立て費用が当初の試算より増え、万博の会場建設費(1250億円)や地下鉄中央線の延伸費(540億円)などがどこまで膨れ上がるのか、国や府、経済界との間での費用負担がどうなるのか、全く不透明だと指摘しました。
少なくない市民から「大きな負担が待ち受けているのではないか」との不安が広がっているとし、「市民と市財政の負担にならないような、簡素な万博にするため、あらゆる知恵と力を尽くすべき」と述べました。
吉村市長は「費用の上振れに留意し、財政リスクもチェックして進める」と答えたのに対し、井上氏は「万博とカジノをセットでやろうとしているからこそ無理が生じる」と反論。わずか半年間の期間限定のイベントである万博に、ばく大な費用を必要とする地下鉄の延伸は無謀であり、「全てはカジノのためのお膳立てだ」と主張しました。
カジノ企業が名前を連ねて
さらに、万博誘致に向けたオフィシャルパートナーにカジノ企業5社が名前を連ねており、「公衆の教育を主たる目的」とする万博の趣旨と、カジノとセットの大阪開催計画は相いれないと批判。「すぐ隣でカジノを営業し、万博来場者を呼び込むなどという計画自体、万博の理念に反する。結局、万博はカジノのための隠れみのだ」と断じました。
つくらぬことが最大の対策
吉村市長は、万博とカジノを「なぜ関連づけるのか、よく分からない」とうそぶき、「いずれも大阪経済の起爆剤になる。ギャンブル依存症対策は進める」などと強弁しました。
井上氏は「カジノをつくらないことが最大の依存症対策。韓国では政府機関が、経済効果よりも経済的損失の方が4・7倍になると明らかにしている。経済的損失の危険を冒してまで突き進むこと自体、ギャンブル的発想であり、カジノは断念すべきだ」と迫りました。
「万博頼み」から転換して
地に足着いた成長戦略を 井上議員
中小企業支援を弱めた維新
井上氏は、調査会社「帝国データバンク」の調査で12年から16年にかけて大阪市は468社の転出超過で20政令市中最下位だと指摘。維新政治の下で、市は中小企業支援予算(金融支援を除く)を、約52億円(14年度)から約41億円(18年度)に減らしていることなどを示しました。
井上氏は、「事業所の99%を占める中小企業を支援するどころか、逆に支援を弱めてきたことも、大阪経済の地盤沈下や、府民・市民所得の低迷を招いた要因の一つだ」と告発。巨大開発で大阪経済の再生を図るのでは、過去と同じ過ちを繰り返すだけだとし、「中小企業の実態把握や部局横断的な中小企業政策の取り組みを積み重ねていくことが、大阪市の地域性と特徴にかみ合った成長戦略だ」と力説しました。
被災者に寄り添う自治体に
大阪北部地震や台風21号の被災者支援で、高槻市や茨木市などが一部損壊住宅などを対象に独自の制度を創設しているのに対し、大阪市が何の支援策も打ち出していないことは「非情と言うしかない」と批判。「目の前の被災者に寄り添うことこそが自治体の使命。一部損壊住宅や被害を受けた中小企業の店舗、工場などへの修繕費の一部を補助する制度を創設すべき」と要求しました。
吉村市長は被害が府内全域で発生しているとして、支援策は「府で検討すべき」などの答弁に終始。井上氏はこれを厳しく批判するとともに、耐震診断・改修補助事業の要件と手続きの簡素化や、その他の住宅改修補助の対象とならない市民のためにも「住宅リフォーム助成制度」を創設するよう求めました。
高すぎる国保料引き下げを
井上氏は、国民健康保険(国保)料が17年度までの5年間で7%値上げされ、夫婦と子ども2人の4人世帯で年間所得300万円の場合、介護分を含めて年間56万円もの重い負担になっていると指摘。高すぎる国保料の引き下げへ、全国知事会も約1兆円の公費負担を求めていることを示し、市独自の繰り入れを増やし、国保料の負担軽減に努めることなどを求めました。
夢洲埋め立て・地下鉄延伸関連
万博関連で140億円計上
吉村市長が補正予算案提案
吉村市長は11月30日の大阪市議会に、一般会計補正予算案を提案しました。2025年の大阪万博の開催に向けたものは総額約140億円。会場の夢洲の埋め立て工事費136億円、地下鉄中央線を現在の終点のコスモスクエア駅から夢洲駅(仮称)まで延伸するための調査費1億3600万円などを盛り込んでいます。
市は2016年に埋め立て工事費を100億円と試算していましたが、開催地決定を受けて試算し直したところ、建築資材や人件費の高騰で36億円も増えることが明らかになりました。
補正予算案には他に、台風21号の被害対策で市営住宅・港湾施設などの復旧に24億2600万円、倒木(公園樹・街路樹)撤去に13億7500万円、農業用ハウス等の再建・撤去の助成金創設に3500万円を計上しています。
(大阪民主新報、2018年12月9日号より)