おおさかナウ

2018年12月23日

万博に賛成の人も反対の人も、
『カジノはノー』『都構想ストップ』を

 「カジノに反対する大阪連絡会」が11日開いた第1回活動者会議で、事務局長の中山直和さん(大阪市をよくする会事務局次長)が、万博開催やカジノ誘致をめぐる情勢の特徴や問題点について分かりやすく報告しました。大要を紹介します。

万博に賛成の人も反対の人も、
『カジノはノー』『都構想ストップ』を

カジノに反対する大阪連絡会代表者会議
中山直和事務局長の報告から

歓迎ムードだけでなく問題点も

カジノに反対する大阪連絡会の第1回活動者会議で報告する中山事務局長=11日、大阪市北区内

カジノに反対する大阪連絡会の第1回活動者会議で報告する中山事務局長=11日、大阪市北区内

 2025年の国際博覧会(万博)の大阪開催が決まったとき、テレビで松井一郎知事らが喜んでいる場面が繰り返し映すなど、メディアでは「歓迎ムード」を出しました。一方、新聞各社の社説では歓迎のコメントもありますが、シビアな内容も書かれています。「カジノにはギャンブル依存症の患者を増やす恐れがつきまとう。『命』や『健康』をテーマに掲げる万博と矛盾しないのか」(「朝日」)など、問題点を指摘しています。

 「読売」の世論調査(11月13日)で、万博に「賛成」は66%、「反対」が22%で、「関心がない」は37%です。1970年の大阪万博の当時は、反対する人はほとんどなかったのではないでしょうか。それと比べると、疑問点が多いということに着目する必要があると思います。

万博より先にカジノ開業を狙う

 1970年に大阪万博が開かれて以降、沖縄海洋博覧会(1975年)などが開かれ、1996年に都市博覧会(東京)が計画されていましたが、前年の知事選で「都市博反対」を掲げて当選した青島幸雄知事(当時)が中止しました。2005年の愛知万博では、環境破壊問題で博覧会国際事務局(BIE)も批判し、会場が変更になりました。

 2025年大阪万博のスケジュール(表)をみると、今回の開催決定はいわば「仮」で、BIEに開催を正式申請するのは2020年5月。それ以後に法令手続きを経て会場建設に入るのです。愛知の場合は正式申請前に会場が変更になりました。

 大阪では万博と一体にカジノを核とする統合型リゾート(IR)を誘致し、万博の1年前の2024年の開業が狙われています。来年7月にカジノ実施法に基づく「カジノ管理委員会」が設立され、具体的な手続き方法などが正式に決まり、カジノ事業者の公募・選定などの手続きが本格的に動き出すのは2020年。松井知事は「来年夏には事業者を決める」と公言していますが、大きな矛盾があります。

「カジノ万博」の本性があらわに

 万博開催決定を受けて、「カジノ万博」の本性があらわになっています。

 米カジノ資本のラスベガス・サンズは、大阪万博開催決定を受けて「祝福メッセージ」を発表しました。「大阪・関西万博は、統合型リゾートを世界に紹介するプラットフォームになる」(「観光経済新聞」11月24日付)と、あからさまに語っています。

 大阪市の吉村洋文市長は、夢洲のカジノについて「モナコのように昼夜を問わず世界中の人が集まるエンターテイメントが楽しめる場所にしたい」(「毎日」4日付)と発言しています。

 まさに“カジノ万博の正体見たり”というところですが、同時に、万博開催決定を前提に、「カジノ開業はもう決まっている」という雰囲気を押し出す、既成事実化の動きは、本当に許せません。

どこであろうともカジノは駄目

 一方、政府のIR推進会議は4日にまとめた基準案で、カジノの面積は「IR施設全体の面積の3%を超えない」と明記しました。「IR施設全体の面積」は「建築物の床面積の合計」と定義しています。例えば、夢洲のIR用地(70㌶)の3%は2・1㌶です。仮に建ぺい率50%で20階建ての建築物ができれば、カジノの面積は21㌶。用地面積の10倍になります。カジノの面積が大きいほど、カジノ事業者のもうけは増えますから、高層になる可能性が十分あります。

 カジノの害悪は底なしです。「国際観光拠点」と言いながら、府市が想定する入場者は8割が日本人。24時間営業のカジノに1週間で3日、年間120日も入場が可能で、カジノ業者はギャンブル依存症を増やすほどもうかる。負けて所持金がなくなってもカジノ業者がお金を貸すこともできます。韓国では経済的損失は経済効果の4・7倍と算出しています。夢洲であろうとなかろうと、どこでやろうがカジノは絶対駄目です。

夢洲はいまでも活用されている

 維新はじめカジノ・万博推進派やマスコミは、夢洲は「負の遺産」と宣伝していますが、本当にそうでしょうか。「負の遺産」と言われるのは、大阪市がバブル期に計画した夢洲や湾岸地域でやろうとした巨大開発やオリンピック招致が破綻したからです。巨大開発の失敗を繰り返さないのなら、「負の遺産」と言う必要はありません。

 それどころか夢洲は、立派に市民に役立ち、活用されています。大阪市唯一のごみ最終処分場で、あと10~20年は使用可能です。これを失って、新人工島の「フェニックス」でごみを処分するなら無駄な費用がかかり、ごみ収集の有料化にもつながります。夢洲の東側はコンテナターミナル。西側にはソーラーパネルが設置され、標準家庭約3200世帯分の発電を行っています。

土壌汚染や津波被害の危険性も

 同時に、土壌汚染問題もあります。

 埋め立てられたしゅんせつ土砂にダイオキシンや重金属が含まれている可能性や、建設残土にはアスベストが付着した鉄骨がそのまま埋められている恐れもあります。危険物質がたくさん埋まっているような場所で、多くの人が集まる施設をつくっていいのかということです。

 南海トラフ巨大地震では液状化や津波被害の可能性があります。台風21号の高潮では護岸が倒壊するなどの被害が出ました。

 夢洲の埋め立て費用は、造成した土地を売って回収してきました。カジノ業者が用地を買わなければ、大阪市港湾局の埋め立て会計が破綻する可能性もあります。

莫大な開発費はさらに「上振れ」

 万博・カジノ誘致を前提にした夢洲開発にはばく大な費用がかかります。東京オリンピックの会場建設費は当初の7340億円から3兆円へと4倍に膨れ上がりました。大阪万博の会場建設費は1250億円とされていますが、「上振れ」するのは間違いないと思います。

 そして地下鉄中央線の延伸(540億円)のほか、JR桜島線の延伸(1700億円)、京阪中之島線の延伸(3500億円)、夢洲と舞洲を結ぶ夢舞大橋の拡張(40億円)と、巨大開発が計画されています。

 さらに万博開催に間に合わせるための急速埋め立て費用(136億円)が、大阪市の補正予算に計上されています。うち一般会計から50億円を支出。全体の費用は資材や人件費の高騰で当初の試算から36億円増えています。夢洲の上下水道や道路の整備費用は未定です。

カジノの害悪と夢洲の事実広げ

 万博に期待する人も、期待しない人にも積極的に対話し、カジノがもたらす害悪と、巨大開発や費用負担はじめ夢洲の危険な事実を広げることが重要です。

 2018年は大阪北部地震や台風21号など、自然災害が大阪を襲い、府民は怖い体験をしました。今後30年に発生する確率は、南海トラフ巨大地震・津波は70~80%。松井知事などはカジノの経済波及効果は2兆円だと言っていますが、南海トラフ巨大地震・津波での府の被害想定は最悪29兆円です。「カジノより防災を!」の声を大いに広げようではありませんか。

 さらに「カジノより教育・子育てを!」「カジノより中小企業支援を!」「カジノより暮らしを!」と、府民の要求や思いを聞きながら、それぞれのテーマで共感を広げることが大切です。大いに学習、署名、宣伝に取り組み、大阪の未来を破壊するカジノ誘致にノーを突き付けましょう。

 維新は万博開催をテコに「大阪都」構想を推進しようとしていますが、府民・市民の間では「大阪都」構想への反対が多数です。来年の統一地方選・参院選でカジノ推進議員に審判を下し、「大阪都」構想をストップさせましょう。スケジュール

(大阪民主新報、2018年12月23日号より)

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