「カジノあかん」の共同を
日本共産党府委員会 府民シンポで討論
日本共産党府委員会が17日、大阪市中央区内で府民シンポジウム「『大阪万博』『カジノ(IR)』をどう考える?」を開き、市民ら200人が参加しました。維新府・市政が、2025年の大阪万博と一体に大阪湾の埋め立て地・夢洲(ゆめしま・大阪市此花区)に誘致を狙う、カジノを核とした統合型リゾート(IR)。刑法で禁じられてきた民間賭博を解禁するカジノや、ギャンブル依存症問題などを語り合い、「カジノあかん」の共同を広げようと開かれたものです。
IR売り上げの8割はカジノ
主催者あいさつした清水忠史府副委員長(前衆院議員)は、大阪万博の開催を歓迎する声もあると同時に、カジノとセットになっていることに不安や怒りも広がっていると指摘。夢洲は昨年9月の台風21号で被害が発生していることや、万博やIRのための土地造成や会場建設、鉄道や道路の整備で巨額の府民・市民負担の恐れがあると述べました。
清水氏はことし2月、維新などカジノ推進派が「成功例」としているシンガポールのIRを、たつみコータロー参院議員と共に視察しました。カジノの入り口には中国語で「賭場」と明示され、IRには水族館やホテルもあるが、全体の売り上げの8割をカジノが占めていると報告。ギャンブル依存症患者のグループミーティングも訪ね、「ヤミ金から金を借りて返せない」など、当事者の声を聞いたことを紹介しました。
清水氏は、大阪市を廃止・分割する「大阪都」構想の住民投票実施をめぐり、維新と公明との「密約暴露劇」にも触れ、「『ラストチャンス』と言った(2015年の)住民投票で否決され、大阪市存続が決まった法的意義は大きい。カジノはあかん、『都』構想おかしいという一点での共同を広げたい」と語りました。
パネル討論ではたつみ議員、阪南大学の桜田照雄教授(カジノ問題を考える大阪ネットワーク代表)、フリージャーナリストの幸田泉さん、元大阪市長で「公共政策ラボ」代表の平松邦夫さんが討論。参加者からの質問に答えながら意見交換しました。
カジノよりも府民の暮らしを
大阪府市のIR推進局が12日公表したIR基本構想案などについて、日本共産党の大西哲・府議団事務局長と小川陽太大阪市議が報告。大西氏は、国のIR監理委員会も設置されず、基本方針も示されていないにもかかわらず、府は「大阪でのカジノ開業」ありきで着々と準備を進めていると批判しました。
府のギャンブル依存症対策はまだ試行段階であるのに、「IRへの府民理解を広げる」として、学生対象のシンポジウムを開くなど、若者をカジノにのめり込まそうとしていると告発。「どの世論調査でもカジノ誘致反対が多数。統一地方選の争点に押し上げ、カジノよりも福祉を手厚くし、若者や中小企業に仕事を。府民の声を代弁して共産党府議団も強く大きくなりたい」と語りました。
小川氏も、大阪でのカジノ開業が決まっていないのに、市はカジノ万博を前提に総額954億円の開発を計画していると批判。関西経済同友会が万博開催前にIRが開業できるよう、全力を尽くせと要望していることも紹介しました。
「大阪都」構想の本質は、大阪市の権限・財源を府が奪い、「一人の指揮官」でカジノや巨大開発を進めることにあると強調。「市民生活を切り捨てて開発に突き進む政治体制として不可欠なのが『都』構想。カジノ誘致にストップをかけると同時に、『都』構想にも終止符を打ち、市民の声が届く政治実現に全力を尽くす」と決意を語りました。
共産党府委シンポジウム
ギャンブル依存症・広告載せるメディア・マカオ超える規模
カジノの問題浮き彫りに
各氏が報告〝統一地方選で止める〟
日本共産党大阪府委員会が17日に開いたシンポジウム「『大阪万博』『カジノ(IR)』をどう考える」では、日本共産党のたつみコータロー参院議員、阪南大学の桜田照雄教授、ジャーナリストの幸田泉さん、元大阪市長の平松邦夫さんが発言するとともに、参加者からも活発に意見が出されました。
たつみコータローさん
人の不幸を踏み台にする賭博
「シンガポールのIRは成功例とは決して言えない」「『ギャンブル依存症』の広がりによる犯罪や自殺が増えている」
日本共産党のたつみコータロー参院議員は、安倍政権とカジノ誘致を熱望する維新の会が「成功例」と持ち上げるシンガポールのカジノIRの実態について、視察調査に基づき報告しました。
ギャンブル依存症対策でIDカードで収入はじめ貯蓄と負債、医療や口座履歴など情報管理を徹底する一方、日本の緩い法整備を批判。著名人による事件も起きるなど、依存症患者の自殺や重大犯罪が社会問題となっているシンガポールの現状を紹介しました。
関西経済の起爆剤になるなどの理由でカジノ誘致を目指す維新政治を厳しく批判し、観光資源の豊かな日本の可能性を示唆。「人の不幸を踏み台にすることは許さない」とカジノの本質問題を問い掛けていくと語りました。
桜田照雄さん
自治体が手を出していいのか
阪南大学の桜田照雄教授は、大阪府・市が12日発表した「基本構想案」を取り上げました。府市が誘致を目指すIR(カジノが中核の統合型リゾート)の民間投資規模は9300億円に上り、年間売上4800億円の約8割をカジノ(3800億円)が占めると指摘。マカオを超える賭博規模で、掛け金は競馬やパチンコとは桁違いに大きいとし、「5兆円を超える博打でもうけるえげつない荒稼ぎだ。自治体首長がこんな恐ろしい商売に手を出していいのか」と問い掛けました。
桜田氏は、米ラスベガス・サンズ傘下の大型IR「ヴェネチアン・マカオ」について、1670台のスロットマシンが並ぶフロアなど、ルネサンス期の装飾を施した豪華なカジノ施設や全室スイート仕立ての高級ホテル、モールなどの映像を紹介。入場者に現実を忘れさせ、賭博にのめりこませるカジノビジネスの実態を紹介しました。
幸田泉さん
賭博産業の広告収入は〝麻薬〟
「ギャンブルとマスコミはお金でつながっている」
テレビCMや新聞広告など、パチンコ産業のメディア戦略を取り上げたフリージャーナリストの幸田泉さんは、広告収入に経営を依存するメディア内部の実態を紹介しました。
各メディアが広告依存を深める一方、公営ギャンブル衰退に伴い、地方紙が打撃を受けていると指摘。さらにギャンブル関連記事が売り上げを左右する駅売店など販売側の内情を紹介し、「ギャンブル産業は、メディアの記事と放送内容を監視し圧力をかける。広告収入はマスコミにとって、断りたくても断れない麻薬のようなものだ」と述べました。
依存症患者による親族殺害事件や、大相撲力士らによる野球賭博事件などの取材経験を基に、ギャンブルがもたらす負の影響を告発。「アルコールを提供するカジノは、依存症という悪魔がダブルで襲ってくる」と語りました。
平松邦夫さん
庶民の日常を破壊するカジノ
元大阪市長の平松邦夫さんは、放送局入社当時に、競馬新聞を手に「実況」練習をしたエピソードも紹介。公営ギャンブルと民間賭博であるカジノとの本質的な違いを強調し、「どれだけ美しく装飾しても、カジノは庶民の『日常』を壊す。公共が関わる仕事ではない」と強調しました。
「ほんまにええ大阪を取り戻したいという思いが、心の支えだった」
2011年まで4年間の市政運営を振り返った平松さんは、市民の中に堂々と入って、コミュニケーションを大切にしてきたと述べました。歴史ある大阪市を廃止する「大阪都」構想や、市民の財産である公園などを金もうけの手段にする維新政治の詭弁と強引な手法を厳しく批判し、「『お金になればなんでもいい』といわんばかりの維新政治を、このまま許していいのか。4月の統一選で維新の議員を減らしてカジノを止めよう」と呼び掛けました。
暮らしや防災にこそ税金使え
カジノありきの巨大開発計画
シンポで発言・討論
シンポジウムでは、「カジノが誘致されれば大阪経済にどう影響するか」、「推進派はカジノではない統合型リゾートという聞こえのよい言葉で言うが…」「メディア、マスコミはどうカジノ問題と向き合うべきか」など活発に交流しました。
万博開催と夢洲開発の現状と課題について質問が相次ぎ、平松氏は夢洲をめぐるインフラ整備の課題を詳述し、たつみ議員も「万博は後付の理由に過ぎず、カジノありきの巨大開発計画だ」と強調しました。
大阪経済と府民生活への影響について桜田氏は、税金5千億円投入によって、民生分野など削られる予算があると指摘。「カジノは負けた人から胴元に金が移るだけで、経済的に富を生んでいない」と強調し、住民の暮らしと大阪経済にも影響が及ぶと述べました。
桜田氏は「カジノ業者は借金をつくらせるプロ。そこに取り立てのプロであるやくざが手を結ぶ」と語り、マネーロンダリングや反社会的勢力の関与などギャンブル業界をめぐる犯罪の構図を詳述。自己責任の名で無数の市民が犠牲になってきた過去の教訓に触れながら、「地域コミュニティーや人間の絆を壊し、社会の仕組みもズタズタにされる」と問題視しました。
ギャンブル依存症問題でも不安の声が出され、「カジノ誘致で依存症患者は間違いなく増える。今までにない深刻な事例が心配される」と幸田さんは強調し、桜田氏も、「社会的連帯を断ち切るのが賭博。経済合理性や地域政策の基盤を根こそぎ崩すのがカジノだ」と批判しました。
フロア参加者からも発言があり、民間タクシー会社の経営者は200人近い従業員はじめ大阪の庶民の厳しい暮らしの実態を紹介し、「博打にはまる人が増えれば経済は駄目になる」「国民の暮らしを駄目にしたのが安倍政権だ」と強調しました。医療系団体に勤務する男性は、カジノ誘致に伴う子どもへの深刻な影響を指摘。子ども医療費助成制度の充実など緊急課題を示し、「ギャンブル依存症を増やすような施設に税金を使うことは、絶対に許されない」と語りました。
大阪母親大会連絡会の松永律さんは、消費税や介護保険、医療保険などあらゆる世代に広がる負担の重さを指摘。大阪府・市各当局との交渉でのやりとりも示し、「ギャンブル依存で苦しむ子どもや家族を増やしたくない。暮らしや防災対策にこそ税金を振り分けてほしい。世論と運動を広げてカジノ誘致を止めよう」と呼び掛けました。
(大阪民主新報、2019年2月24日号より)