誘致できなければ「致命傷」!?
関西財界のカジノ構想が描かれる「提言」
関西経済同友会がこのほど、大阪万博前にIR(カジノを含む統合型リゾート)の開業を求める提言を発表しました。提言の内容と問題点について、日本共産党大阪府委員会政策委員会の宅田葉月さんから寄せられた論文を紹介します。
日本共産党大阪府委員会政策委員会 宅田葉月
2月6日、関西経済同友会が「大阪・関西IRの万博前開業に全力を~大阪府・市の募集要項に向けた6つの提言~」(以下「提言」)を出しました。「提言」では大阪・関西万博前の2024年にIR(統合型リゾート)=カジノを開業できるように大阪府・市と国に要望しています。また、府市は、2月12日に「大阪IR基本構想案」を発表しました。
安全性や環境より工期を優先
大阪府・市・関西財界にとって、万博とIR=カジノは一体であり、夢洲への誘致が前提です。
年間来場者数2480万人、年間売り上げ4800億円(うちカジノが約80%の3800億円)を想定する「世界に比類のない」IR=カジノ施設が計画されています。カジノ収入規模で比較すると、マリーナ・ベイ・サンズ(シンガポール)は2849億円、ザ・ベネチアン・マカオ(マカオ)は2912億円で、まさに世界最大級です。
「提言」は、万博前にIR=カジノを開業することは、大阪・関西にとって「千載一遇」のチャンスであり、もし実現できなければ「致命傷」になると強調します。
床面積が総延べ100万平方メートルという超巨大建造物の建設のためには、区域の設定から、周辺環境に与える影響調査、設計の安全性の確認、開発許可など、必要なプロセスは無数にあります。また万博施設との同時進行の工事にもなります。常識的には残り5年余りでの開業は厳しい状況です。
そこで「提言」では、工期を優先するあまりに、低い建物やシンプルなデザインになることは「品質低下」であるとし、国と府市に対し遅れが発生しないような工程管理、行政の全面的なバックアップによる可能な限りの短縮化を要求しています。安全性や周りへの影響よりも工期を優先し、「規制を緩めろ」、「手抜き工事も認めろ」という主張です。
府民・市民の税金を大企業のための大型開発に
「提言」では、万博やIR=カジノを訪れた利用者の経済効果を関西一円に広げるためだとし、新幹線や空港、大型クルーズ船のための港湾など交通インフラの整備を府・市に要望しています。すでに大阪市は、夢洲地区の土地造成基盤整備に6年間で約954億円の巨額の税金を投入しようとしています。
さらに、「提言」は、万博とIR=カジノとの相乗効果を唱え、先端医療技術などを活用した「Well―Being」と彼らが名付ける産業を中心にした都市計画まで持ち出しています。「健康・長寿」がテーマである大阪・関西万博に関連付けて、依存症や治安悪化につながるIR=カジノを「心身の健康に大いに寄与する」とまで述べます。
関西財界は、自分たちのもうけのために府民・市民の税金を使おうとしています。そして、維新府・市政は、関西財界と利害を一致させ、IR=カジノ誘致を押し進めようとしています。
カジノではなく、府民の所得を増やして大阪経済の発展を
「提言」は、IR=カジノ誘致を万博後も経済発展を続けるためだとします。しかし、カジノでは大阪経済の発展はありません。
経済発展のために関西財界がやるべきことは、労働者の賃金を上げることです。おおさか労連が春闘に向けて出した「大阪ビクトリーマップ」(2019年)によれば、春闘で求めている正規職員の月額2万5000円の賃上げは内部留保の1・83%を使えば可能であり、経済と雇用を大きく押し上げます。また、大阪府・市が、福祉や防災強化、中小企業支援に税金を使えば、地域の雇用を広げ商店にもお金が回り、大阪経済を発展させることにつながります。
目前に迫った選挙で「カジノより暮らしの安心・希望を」を掲げる日本共産党が議席を増やすことが、カジノストップの道です。(たくだ・はづき)
(大阪民主新報、2019年3月10日号より)