性暴力のない社会へ 手つないで声上げて
共産党がトークイベント
刑法の抜本改正を
性暴力をめぐる無罪の判決が続く司法判断に抗議の声が高まって、刑法の抜本的改正を求める動きが加速しています。大阪市中央区で5月25日、トークイベント「性暴力、性差別のない社会へ」が開かれて、「性暴力のない社会に」「刑法改正で被害実態に基づく条文規定を」と意見を交流しました。特設サイト「個人の尊厳とジェンダー平等のためのJCP With You」を3月に開設した日本共産党と同党大阪府委員会が共催したものです。
男尊女卑なくす努力が必要
トークイベントでは日本共産党のたつみコータロー参院議員、女性への暴力事件を中心に担当してきた雪田樹理弁護士、大阪大学助教でジェンダー、フェミニズムが専門の元橋利恵さんが発言しました。
元橋さんは、「日常的に事件化していない性被害は多い」と指摘。体験を話し合う「怒りたい女子会」の活動を取り上げ、「否定もアドバイスもしない、自分を主語にして話すことがルール。ふりしぼる思いでつらい体験を話せるようになる人も多い」と語りました。
駅のホームでバッグに下着を入れられた自身の体験を紹介した元橋さんは、「性を粗末に扱う状況を変えるため、日常の男尊女卑をなくす努力が不可欠だ。人間の尊厳が傷つけられる実態を変え、性暴力のない社会へ、多くの人と一緒に声を上げていきたい」と語りました。
旧憲法と家父長制度の名残
雪田さんは強制性交等罪の暴行・脅迫要件について、旧憲法と家父長制度の下、「『家』を守るため暴力に屈した女性は保護に値しない」との考えで、女性の人権が踏みにじられた時代の名残だと指摘。110年ぶりの刑法改正(17年)でも維持された同要件をめぐる議論に触れ、「男女平等を定めた日本国憲法が成立したのに、なぜ戦前の規定が残されたのか。ジェンダーの視点で議論し法改正しなければ、問題解決につながらない」と語りました。
「同意のない性交は、人間の自己決定権と性的自由、人格権を侵害するものだ」と強調し、刑法改正と被害者の支援制度創設が必要と述べました。
参院選政策で刑法改正掲げ
「そもそも性交の同意がないから暴力を振るうわけで、なぜ同意そのものが問われないのか、理不尽で納得できない思いがあった」
たつみさんは、3月26日の参院予算委員会で暴行・脅迫要件撤廃と、性暴力被害者支援センターへの国予算を抜本的に増額すべきと政府に迫った質問とその準備過程や、東京駅前(4月)と大阪中之島(5月)のスタンディング・デモに参加した思いを発言。日本共産党の参院選政策で、刑法条文にある暴行・脅迫要件の撤廃を明記したと紹介し、「個人の尊厳が守られ、ジェンダー平等が実現するよう取り組んでいきたい」と述べました。
男性としてどう向き合うか
トーク会場には軽食と飲み物も用意され、党府委員会の太田いつみ副委員長が、「個人の尊厳が尊重される社会へ、共に声を上げ、手を取り合ってたたかっていきましょう」と乾杯のあいさつをしました。
元橋、雪田、たつみの各氏は、フロア参加者と一緒に交流。公立学校の養護教諭は、性被害を受ける子どもたちの現状と性教育など教育現場が果たす課題について述べました。涙声で自らの被害体験を語る参加者もいました。「男性として性暴力の課題にどう向き合うのか」などの意見もあり、それぞれの思いや意見を交流し合いました。
続く無罪判決 広がる抗議行動
問題とされた司法判断の1つが、3月26日の名古屋地裁(岡崎支部)判決です。19歳だった娘に対する準強制性交罪に問われた父親への判決は、「同意は存在せず、極めて受け入れがたい性的虐待に当たる」としつつ、「抗拒不能だったとはいえない」と無罪を言い渡しました。
日本の刑法では、「同意のない性交」だけでは処罰されません。「暴行または脅迫」を加えて性交した場合に強制性交罪が成立し、「心神喪失または抗拒不能」状態で性交した場合に、準強制性交罪が適用されます。
裁判では「暴行・脅迫」や「抗拒不能」で被害者の抵抗が著しく「困難」でなければ罪に問えません。困難かどうかは裁判官の裁量に左右され、無罪判決が続いてきました。
“なぜ女性の意思に反した性犯罪が無罪になるのか〟と、4月11日には東京と大阪で、「#MeToo」などのプラカードを手に、性暴力と今回の無罪判決に抗議するスタンディング・デモが行われました。性暴力の被害当事者らの団体「Spring」(東京)は5月13日、刑法改正などを求めて、法務省と最高裁に要望しています。
(大阪民主新報、2019年6月2日号より)