おおさかナウ

2019年09月22日

大阪市廃止の「都」構想
スケジュールありきで住民投票の実施へ暴走
第26回法定協 各党が意見表明

 大阪市を廃止・分割する、いわゆる「大阪都」構想の制度設計を議論する大都市制度(特別区設置)協議会(法定協)の第26回目の会合が12日、府庁内で開かれ、制度案に対して各党が意見を表明しました。維新が公明党とともに、来年秋冬の住民投票実施に向けて、協定書の取りまとめへ議論を強引に進めようとしている中、日本共産党の山中智子大阪市議は、大阪市廃止にも住民投票の実施にも反対だと述べました。

批判封じ込み

「特別区」素案に対し各会派が意見を表明した第26回法定協=12日、府庁内

「特別区」素案に対し各会派が意見を表明した第26回法定協=12日、府庁内

 山中氏は、大阪市を廃止してつくられる「特別区」は、権限・財源共に一般市にも及ばない「半人前の自治体」であり、庁舎建設やシステム改修費用など膨大な初期コストが必要で、住民サービスの削減は必至だと指摘。「市民にとって良いことは一つもない」と断じました(別項に大要)。
 維新の藤田暁大阪市議は、現在の制度案には基本的に大きな修正点はないとし、今後の議論では、協定書の取りまとめという法定協の目的に反する批判や、審議の引き延ばしは控えるべきだと言い放ちました。
 公明党の肥後洋一郎府議は、敬老パスや塾代助成など大阪市の独自施策が「特別区」でも続けられるよう、制度案では「住民サービスを維持するよう努める」となっているが、「維持する」と明記することなどを求めました。
 自民党の川嶋広稔大阪市議は、「『特別区』を設置すれば行政コストが肥大化するが、国の地方交付税は増額されないため、財源不足が生じる」と指摘し、府と「特別区」との財源配分を見直し、住民サービスの財源を確保することなどを求めました。

年内にも具体案

 4月の知事・大阪市長のダブル選で維新が勝利したことを受けて、公明党が「都構想賛成」に転じ、自民党府連執行部が「住民投票容認」を打ち出す中、6月に法定協は再開。「特別区」設置の「経済効果」についての嘉悦学園の報告書をめぐり、これまで維新以外の各党は、法定協で取り上げることに反対してきましたが、8月の第25回法定協の議題となりました。
 法定協の今井豊会長(維新府議)は12日の法定協後、「特別区」の区割りや区の名称、設置コスト、区議会定数を優先して議論すると説明。来年秋冬の住民投票に間に合わせるため、具体的な制度案を年内にもまとめる考えを示しました。

でたらめぶりも

 「スケジュールありき」で法定協の議論が加速する一方、維新や公明のでたらめぶりも浮き彫りになっています。
 公明党が、「特別区」で住民サービスを「維持する」と明記するよう求めたことに対し、松井一郎大阪市長は法定協後に「特別区長の権限を制約するものでないなら、『維持する』と書いてもいい」と発言。住民サービスが維持される保障はもともとありません。
 「特別区」の設置費用を抑えるため、公明党は現在の区役所など既存庁舎の活用も提案。吉村洋文知事は法定協後、現在の市庁舎を活用して「1階はこの区、2階はこの区というやり方はある」「すべての職員がそこ(各『特別区』の庁舎)にいる必要はない」とまで述べています。

日本共産党・山中智子大阪市議の意見表明(大要)
市民にとって百害あって一利なし

権限・財源失い
半人前自治体に

15大阪市会_城東区_山中智子 大阪市を廃止して、428もの事業を大阪府に移管しても、個々の事業の財源や権限も大きくなるわけではなく、それらの「広域的な行政」が進むものでも、良くなるものでもありません。
 4つの「特別区」は、市町村の基幹税目である固定資産税や法人市民税などを府に移管させられるとともに、街づくり・都市計画の権限すら喪失するなど、財源・権限ともに一般市にも及ばない、まさに半人前の自治体に成り下がるということです。
 そもそも東京「特別区」がつくられたのは1943年、戦時下の非常事態の中、当時の東条内閣によって「帝都防衛のため」と称して強行されたものです。
 そういう成り立ちゆえに、戦後74年間、長きにわたる自治権拡充にも取り組みつつ、「特別区を廃止して、せめて一般市に」という運動が続けられていることは、教訓的です。

政令市の返上は
文字通りの愚挙

 いまや政令市は20市にも及び、一定の人口を有する基礎自治体なら、われ先に政令市に名乗りを上げようとする中で、当の政令市を返上しようとするなどということは、とても常識では考えられない、文字通りの愚挙というほかありません。
 4つの「特別区」に分割することで、職員増やシステム運用経費の増などに加え、庁舎建設やシステム改修費用など、膨大なイニシャルコスト(初期費用)を要します。住民サービスはカットせざるをえなくなり、市民にとって百害あって一利なし。大阪市廃止・分割に私たちは反対であり、そのための住民投票にも賛成できません。

「特別区」分割で
歳出削減できぬ

 嘉悦学園の(「経済効果」についての)報告書は、人口50万人程度で1人当たり歳出額が最小となり、以後、人口が増えるにしたがい1人当たり歳出額も大きくなるという、「U字カーブ」を描くとする研究理論を、立証するものとなっていません。
 今回、中核市11市の歳出実績値(1人当たり)と、大阪市での中核市並みの歳出実績値(同)を比較してみました。人口270万人の大阪市は22万7千円。人口57万人の八王子市19万6千円、人口53万人の姫路市25万1千円、人口45万人の尼崎市23万3千円と、全体として、大阪市と中核市との間にほとんど差異はありません。
 4つの「特別区」に分割すれば、年1千億円もの歳出削減の可能性が生じるとする報告書が、いかに現実から乖離(かいり)しているかということです。

住民サービスの
カットは必至に

 大阪市を4つの「特別区」に分割すれば、庁舎の数も増え、首長も1人から4人に、議員も近隣中核市並みにすれば148人増えるというように、1人当たり歳出額は確実に増えます。結局、「特別区長」が、これまで市独自で実施してきた敬老パスや塾代助成などの施策をカットする以外に、歳出削減はできないということです。
 4つの「特別区」に分割しても歳出抑制につながらない上に、逆にコストが増え、住民サービスをカットせざるを得なくなる。市民にとって何一つ良いことはありません。

(大阪民主新報、2019年9月22日号より)

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