ドル・商品券・金貨・スーツ仕立券も
関電 社内調査結果を発表
関西電力の「原発マネー還流疑惑」をめぐって、関電の八木誠会長と岩根茂樹社長は2日、大阪市北区内で会見を開きましたが、真相解明にほど遠く、さらに疑惑を深める内容となりました。
一連の疑惑は昨年1月、金沢国税局による高浜町の建設会社「吉田開発」への査察で発覚。顧問とされる高浜町元助役の森山栄治氏に、手数料名目で3億円が提供されていたといいます。
この日の会見で初めて公表されたのが、関電社内の調査委員会が昨年9月にまとめた「報告書」。2011年~18年に森山氏と接点があったとされる対象者の幹部26人のうち20人が、総額3億1845万円相当の金品を受け取っていました。このうち役員2人の受領額は1億円を超え、現金だけでなく商品券や金貨、金杯、スーツ仕立券などが授受されていました。(表参照)
公表された「報告書」には、「(森山氏に)工事物量や工事概算額などを記した資料を手渡す」「総務部長等が森山氏に渡す情報がないか関係部署に確認した」などと記載。岩根社長は会見で「組織間の連携があった行為は認める」と答える一方、情報漏洩に疑問はなかったかと問われ、「立地地域を重視する考え方だ」「概算額の制度は低く、問題ないとの認識だった」と正当化しました。
吉田開発への直接発注額が、2013年~18年の6年間で6倍に急増。元請けを通した間接発注を含めると、吉田開発は約66億円の工事を受けています。しかし「報告書」の資料“吉田開発への発注案件リスト”は、すべて黒塗りでした。
報告書には、関電側と森山氏との会食の場に、同社関係者が同席して金品の授受があった記載もあり、「水増し発注がなかったのか、これでは何も分からない」と記者の追及が続くと、関電側は、「社内ルールに基づき算定した価格で決まった」「情報提供は金品の見返りではない」とし、発注プロセスは適正だったと強弁しました。
関電側に渡った多額の金品の原資については、八木会長は「金銭の出どころは承知していない。従って(還流について)分からない」と言葉を濁し、岩根社長も「考え及ばない」と苦しい回答を繰り返しました。
氏名・役職 | 受領総額 | 金品の主な内容 | 受領当時の職位 | 処分 | ||
日本円・米ドル | 商品券 | 金貨・金・スーツ | ||||
八木誠・会長 | 859万円 | 30万円分 | 金貨63枚、金杯7セット、スーツ2着 | 原子力事業本部本部長 | 報酬月額2割2カ月返上 | |
岩根茂樹・社長 | 150万円 | 金貨10枚 | 社長 | 報酬月額2割1カ月返上 | ||
豊松秀巳元・副社長 | 1億1057万円 | 4100万円 7万㌦ | 2300万円分 | 金貨189枚、小判型金貨1枚、金杯1セット、スーツ20着 | 原子力事業本部本部長 | 報酬月額2割2カ月返上 |
森中郁雄・副社長 | 4060万円 | 2060万円 4万㌦ | 700万円分 | 金貨4枚、スーツ16着 | 原子力事業本部本部長代理 | 厳重注意 |
鈴木聡・常務執行役員 | 1億2367万円 | 7831万円 3.5万㌦ | 1950万円分 | 金貨83枚、小判型金貨2枚、金500㌘、スーツ14着 | 原子力事業本部副本部長 | |
大塚茂樹・常務執行役員 | 720万円 | 200万円 1万㌦ | 210万円分 | スーツ4着 | 原子力事業本部副本部長 | |
白井良平・関電エネルギーソリューション社長 | 790万円 | 200万円 | 150万円分 | 金貨16枚、スーツ4着 | 原子力事業本部本部長代理 | 未処分 |
勝山佳明・関電プラント常務取締役 | 2万円 | 2万円分 | 原子力事業本部副本部長 | |||
右城望・常務執行役員 | 690万円 | 100万円 | 340万円 | スーツ5着 | 原子力事業本部副本部長 | |
善家保雄・原子力事業本部副本部長 | 30万円 | 30万円分 | 金貨63枚、金杯7セット、スーツ2着 | 原子力事業本部副本部長 | ||
長谷泰行・日本原燃常務執行役員 | 230万円 | 80万円分 | スーツ3着 | 高浜発電所・所長 | ||
宮田賢司・高浜発電所長 | 40万円 | 40万円分 | 高浜発電所・所長 | |||
他8人(氏名非公表) | 850万円 | 10万円 | 490万円分 | スーツ計7着 | 原子力事業本部部長、高浜発電所副所長など | |
合 計 | 3億1845万円 |
(大阪民主新報、2019年10月13日号より)